水彩連盟展:搬入

   

10時に絵を取りに来てくれる。搬入搬出を代行してくれる業者があり、毎年お願いしている。水彩連盟は66回展ということになる。今年から、都知事選にも立候補した、黒川記章氏設計の新国立美術館開催と言う事になる。4月4日から16日まで10時から18時開かれている。水彩連盟は、会場開きの第一陣言う事で、どんな会場なのか、まだ見てい無い。大変楽しみにしている。搬入車の動線や絵の会場への運び込みなど、大変シンプルな形で、使いやすいそうだ。採光や壁面への光の当り方など、相当の工夫がされたそうだ。春日部洋先生は美術家連盟から、会場の基本構想の委員として出られていた。随分検討し、いよいよ作られたわけだが、どれだけ工夫された物なのか、興味深い。設計思想としては、鑑賞者の立場が、重視された。今まで東京都美術館では展示側の発想が重きをおかれ、絵を見るという環境になっていなかった。

都美術館も、35年ほど前に出来て、すでに使えなくなったと言う。そんな使い捨てのような、巨大な建物を建てていいのだろうか。普通美術館といえば、100年ぐらいは使ええると思うのだが、発想が良くなかったのだ。建物の耐震問題ではない。あまりに設計が悪いために、空調がダメなのだそうだ。中が妙に複雑で、使いにくさはできたときから、言われ続けたが、印象もあまりよいものでなく。結局旧都美術館のような思いでも残せないまま、水彩連盟は離れる事になった。これも石原都知事の方針が反映している。つまり、全国規模の公募展というものを、何故東京都一つが支えなければ成らないか。こういう意見を出したのだ。しかし、全国的な美術展を行ってもらえると言う事を、むしろ、喜ぶべき事ではないだろうか。オリンピックだって同じだ。文化的知事を名乗りながら、変な因縁をつけたものだ。

移転一回目の展覧会には、大胆な絵を出そうと考えてきた。まっさらな美術館に、初めて絵を描くような、新鮮な絵を出したいと考えてきた。この絵は長くかけた。1年近くかけた。150号のMサイズだ。横長の絵で、開墾地を描いた。竹薮を切り、土を動かし、畑を作り。こうした一連の事を描いた。「処女地」人が生きるための食べ物を作る畑。自然を切り崩しながら、畑を作り出す。前向きな明るい作業ではあるのだが、何か悲しみを伴う。生物が生きると言う、無残さを感じる。人の生きる、明るい悲しみ、のような物を描きたかった。昨日は回りに額をつけようかと思ったが、白い布テープにした。どんな額もうるさい感じで、やめた。

上野から公募展が離れると言うことで、日本の公募展という不可思議な姿が変貌してゆく、きっかけになればと思う。絵を楽しんでみるような、見ていただくような、そんな姿勢がなかった。そのために、公募展離れが加速され、老人中心の封建的な世界になってしまい、若い人達は近づかない。公募展的絵画という日本だけで通用するような、絵画とは言えない様な妙な物が横行している。多分新しい器では、そんな前近代的な作品は適合しないのではないだろうか。
22日23日が搬入日となる。全国から仲間の絵が集まってくる。緊張する対面になる。多分誰もが今までに無い思いを抱いて、制作してきたと思う。新しい器に、新しい酒が。水彩連盟の力が試される。いい展示が出来るよう。その仕事も頑張りたい。

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