スリットドラム4
天板が紫檀の小型タングラム8号。舌が4つだけのもの。板の厚みは12ミリ。箱はケヤキ。
タングドラムを作る面白さは結果がわかりやすいという事である。工夫をすると音が少しずつ良くなるという結果に表れる。音が良くするための方向の工夫をするという事がはっきりしている。工夫をして自分の好きな音に近づいてゆくという面白さであろう。柿渋染めをしていても、良くなっているのか、この色が魅力があるのかという判断は、自分の主観である。主観というのは怪しいものだ。絵を描いていればさらにわかりにくいことになる。良くなっているのか、何処に向っているのかが、やればやるほどおかしなところに入り込む。ところが音が良くなるというのは、科学的に分析できるところがある。音は数学のような論理によって分析できる。そこまでは私にはわからないが、工夫のし甲斐があるという事はわかる。素人が行ける範囲はあるのだろうが、素人なりにかなりのところまで切り込める気がしている。
これも紫檀の小型タングラム9号。舌6本のタイプ。携帯しやすいものである。箱はケヤキ。この音で納得できるかどうかが問題である。
天板の樹種を欅とパドックと変えると音が変わる。板の厚みが15ミリと20ミリでは音が変わる。天板が70センチのものと30センチのものでは音が変わる。当然のことであるが、こうした違いの中で自分の好きな音を見つけ出す作業が面白い。天板の厚さと大きさはバランスがある。大きければ厚い板になる。小さいものであれば、薄い板となる。樹種で言えば、ケヤキやカシのようなこの地域にある木で作るという事が、この地域の音になるという、発想が本当であるのかどうかも興味がある。今のところ硬い木は良い音がするという事はわかっているが、硬ければどんな木でもよいのか、一度ウッドデッキにする木が売られているので作ってみたい。あるいは木の繊維の構造で音の響きが違うのかも興味がある。ケヤキで作ったものは独特の良い音がする。楠で木魚は作る。柔らかい音の良さであろう。問題は柔らかい木は音の変化が少ない。日本の音と言えば、木版や木鉦はケヤキか花梨の方が近い感じがする。
箱の方の樹種の違いも同様に音に影響がある。特に箱の深さは音にかなりの影響がある。三線では竿よりチーガに張るニシキヘビの革によって音が変わると言われている。鳴らした音が箱全体に反響をして、音が増幅する。特に底板によって音が跳ね返るようで、底板の厚さ硬さも影響が強いようだ。三線では表面の革の方が強く張り、裏の革は少し弱く張るようだ。三味線では竿は硬い木で作り、箱は柔らかい樹木で作るようだ。アメリカで作られているものは、実物は見たことはないのだが、箱は針葉樹で作っているようだ。何か意味があるのだろうか。ベニヤ板で作ってみたが、特に底板をベニヤにしたら音が響かなくなった。底板と、横板では意味が違う。このあたりも研究の価値がある。
木が乾いているという事が音には大きな影響があるので、相当時間をかけなければ結論が出ない。作るときボンドで接着をする。その為に全体に湿気が戻ることになる。作って1週間しなければ音が良いのかどうか判断ができない。木が響きだすには時間がかかるという事もあるのかもしれない。木が他の木の響きを受けて、共鳴しやすくなってゆく感じがする。1加減つぐらい敲いていると、微妙な音の反応がするようになる。湯部先で触れるような弱い音も聞こえるようになる。そういうことが何を意味しているのかは分からないが、楽器は使っていないとダメなものなのではないだろうか。三線でも引き出した時より今の方が音が鳴るように感じている。