年3回収穫の稲作
年3回収穫する稲作というと、2回なら一期作2期作で分かるけど、どういうことなのか。という反応になる。実は3回収穫は昔から八重山ではあったイネ作りの一つらしい。いつの季節でも植えて、いつでも収穫するという人が居た。と言うことは確かなようだ。実際に私が見た人でもそれに近い農法の人がカーラ原に居た。
その3回取り農法は、稲刈りと言っても穂刈りのような感じで、次に出てきた穂を2度目を刈り取ると言うことだったらしい。このやり方で年三回の収穫が出来ると言うことが分かり、3回は刈れるよと話されていたと言うことらしい。穂だけを収穫する「穂刈り農法」に近い農法で、ひこばえ農法という意識では無かったようだ。
そうしたいつでも田植をするイネ作りをしていると、年に3回ぐらいは採れたよという話である。ひこばえ農法もあったのだろうが、それで3回ということかどうかは分からなかった。イネが枯れてしまう13度以下の気温には下がらないと言う亜熱帯であれば、イネは何度でも再生してきて、穂を付けると言うことは自然なことだろう。イネの茎の根元には何百もの穂になる細胞がある。
イネはそもそも多年草である。もしかしたら、イネの原生地の中国南部の珠江中流域では、野生イネはいつでも枯れない状態で居たのかもしれない。ほぼ石垣と同じ緯度である。しかし、九州以北の日本はどこでも、冬の寒さでイネは枯れてしまい、再生はしない。たまたま再生しても農業というレベルにはほど遠い永続性は無い。
この本来のイネが栽培される課程で、次第に北の方向へ栽培地が移動して行く。中国文明の起こった長江流域は、かなり北に位置する。以前は長江中流域が栽培イネの起源とされていたが、その地域は小田原と同じくらいの気候で、冬にイネが生き残ることは無い。つまりイネの栽培方法は寒さに対応するために、工夫が重ねられたと考えて良いのでは無いだろうか。
インドネシア・スマトラ島の高地で行われていた、「サリブ農法」を山岡先生の報告で5年前に知った。2年間の間に連続7回収穫する方法である。石垣島でこれを再現してみようと、4年間挑戦してきた。失敗を続けながら、何とか昨年は一応3回収穫出来るところまでは来た。
失敗の理由は日本には亜熱帯で栽培できるイネの品種がない、と言うことに尽きる。初めてひこばえ農法が成功したのは、台湾から持ってきたという「台光」という品種だった。やはり十分にイネが栽培できなければ、当然ひこばえも上手くは行かない。台光はジャポニカ種とインディカ種との交雑種だと思われる。
今年は「にじのきらめき」を早く植えてみた。田植を12月初めに行った。苗作りが11月であることは、5週育苗で5,5葉期2分ゲツの良い苗が出来た。2月に苗作りを行うと、どうしても気温が高すぎて、徒長気味の苗になってしまう。寒波の来る2月3月には13度くらいになる。ここが課題として残った。
早上で一期作はそこそこで良いという考えである。良いひこばえが出て、夏がメインのイネ作りになる。出来れば7回収穫するのだから、一期作をそれほど重視しない方が良い。7回の収穫が平均してあるためには、土壌がイネ作りをしながら良くなる農法でなければならない。
現在ひこばえイネが穂揃い期になった。立派な出来になっている。ひこばえ農法と名乗れるところまで、栽培法として安定してきたと思う。田植をした1期目はほどほどに生育すれば良いと言うことである。そして、ひこばえは暑い時期にに入り本格的な稲作に入り、本格栽培を目指した方が良いと言うことだ。
ここまで来てみると、いくつか想定外のことが見えてきた。今は予想程度で考えて居ることは、「ひこばえ農法」は有機栽培で無ければ難しいのではないか。と言う気がしてきたことである。有機栽培の土壌は作り込むほどに良くなる。土壌をよくしながら、ひこばえ農法は行わなければならない。
慣行農法であれば、田植前の田んぼの準備でイネに良い状態を作り出す。そして1期目が終わる頃には、田んぼの土壌は様々な不十分な点が生まれている。特に肥料は使い切っている。そこに、化学肥料は大量に表面から施肥する。土壌は乾燥と湿潤を繰り返し、あまり良い状態とも思われない。
ひこばえ農法では連続的に一年間利用する土壌をどのように作り上げるかである。ひこばえを連続的に田んぼをで栽培すると言うことは、淡水状態から、湿潤土壌状態の繰り返しで、代掻きをしない田んぼが、一年間継続されると言うことになる。間違うと土壌が嫌気的になり悪くなってしまう。
しかし、微生物が大量に存在し、充分の腐植が存在すれば、田んぼ土壌はイネとともに育まれ、より豊かなものになって行く可能性がある。またそうしなければ、ひこばえ農法を完成することは出来ないはずだ。その検証はひこばえ農法の収穫が田植えの稲作より多収穫になると言うことで判る。
化学肥料を使う慣行農法では、この点が問題が起きるように見える。有機農法であれば、当然大量の藁も、その栽培期間中に田んぼに戻され肥料になる。落ち葉や畦の草、浮き草などが腐植として、田んぼに戻されて行く。土壌の状態が継続栽培によって作り込まれ、良くなって行くと言うことになる。田んぼ土壌が肥料の生産地になって行くようだ。
それはのぼたん農園ではアカウキクサが広がることで、窒素分や腐植が増えることになる。田んぼの中が微生物の活動場になることも、土壌が豊かになる一因になる。畦の雑草を刈り取って入れることや、落ち葉を入れることなども、長い栽培期間土壌が良い保つことになっているようだ。
良い微生物の活動によって田んぼ土壌を、腐敗しないように保って貰わなければならない。メタン発酵して腐敗気味になるところがあれば、クン炭を入れて攪拌してやる。土壌が悪臭になるようでは、良いひこばえ農法は出来ない。肥料分のある土壌の匂いと悪い土壌の匂いとの違いを覚えておく必要がある。
2回目以降の栽培では、代掻きが行われないのだから、雑草の種が浮かび上がり、発芽することが無い。1回目に旨く抑草が出来れば、2回目以降の抑草は比較的簡単になる。当初土壌が出来ていない間は、追肥がかなり必要であった。収穫するお米を取り出した分を肥料で戻さなければと考えて居たからだ。
ところが、今年のひこばえ田んぼでは肥料が田んぼで生産されている。一反300キロのお米を収穫して持ち出していても、2回目のひこばえの為に投入する肥料は60キロの鶏糞堆肥だけである。どう考えても田んぼで肥料が生産されていないとすれば、肥料不足のはずだが、それが一期作目の田植をした稲作よりも、2回目の収穫のひこばえイネの法が、収穫量が増えるのだ。
その理由は田んぼが継続されて栽培されて居ることで、土壌で肥料分が生産されていると言うことしか考えられない。有機肥料で栽培し、無農薬で耕作すれば、田んぼには微生物で満ちあふれる。微生物が稲わらや周辺の雑草を分解し肥料化して行く。とくに、石垣島では分解が早く、稲刈り後一ヶ月すると、投入した藁は微生物によって見えなくなる。
一年間、あるいは2年間田んぼを耕さないままで、酸素を旨く供給する方法を考える必要がある。水があるのであれば流し水栽培にしたい。イネは大量の酸素を消費もしている。酸素を含んだ水を根の周辺の土壌に送り込む必要がある。ひこばえ農法の倍、転がしを入れて、酸素やアカウキクサの窒素分を土壌に練り込んでやる必要がある。
9月に1回目のひこばえの稲刈りをして、11月末に2回目のひこばえの稲刈りをする予定である。そのときの状態にもよるが、3回目のひこばえ栽培には入れるところがあれば、試作してみたいと考えて居る。3回目が上手く行けば、年7回のサリブ農法が再現できたことになる。