地場・旬・自給

笹村 出-自給農業の記録-

稲作政策の迷走が復活

   

 

農林水産省は、鈴木新農水大臣に代わり、稲作政策を元に戻す方針を表明。2026年産の主食用のコメについて、生産量の見通しを25年産より約5%少ない711万トン程度とする方向で調整することにした。高市政権は米については、生産量削減である。

鈴木憲和農水相は「需要に応じた生産が原理原則。無責任にずっと増産をしつづけるのは、海外も含めてコメのマーケットをしっかり拡大しないうちは難しい」とした。今度の鈴木農水大臣は米どころの山形県出身で、こめ農家に精通した、農水大臣と言われている。精通しているので、前に戻したいようだ。

鈴木憲和氏は1982年生まれの43歳。東大法学部から、農水省に勤務し、国会議員に転身した経歴を持つ。農水副大臣を経験している。米どころの山形県が地盤で、水田政策への思い入れが強いことは確かなようだ。そして、従来の農水の米政策に先祖返りするようだ。農家はそれで喜ぶのだろうか。

2027年度から始まる新たな水田政策の具体化を控える中、農政の実力を買っての起用と言われているが、むしろ農水族の巻き返しを意図する就任とみる必要がある。その人の第一声が、米の減産である。高市総理と調整済みのことだろう。自民党支持母体農協の要望を配慮した。最初の記者会見である。

総選挙を見据えた政策転換である。鈴木氏は「米マニア」を自称し、議員になって米の輸出や米粉の普及に取り組んできた。党では、「米の需要拡大・創出検討プロジェクトチーム」の座長を務めた。農水副大臣時代は、米粉の普及を目指す省内横断プロジェクトチーム「米粉営業第二課」(通称・コメニ)に携わった。しかし、実績はない。

環太平洋連携協定(TPP)の承認案などの採決で投票を棄権したエピソードもある。と書かれている。当時、TPP反対を訴えて12年に初当選したことへの「自分なりのけじめ」を理由に挙げている。 TPP反対は私も同意見であり、国会デモに参加したくらいだ。しかし、アメリカがTPPから離脱し、むしろ反アメリカ経済連合になる可能性を秘めている。

「米の生産にについてはマーケットありきで考えないといけない。生産側だけで増産するのは難しい」と記者会見で発言した。コメの輸出を促進することで「中長期で必ず需要が増える。こういう世界を作りたい」と述べているが、具体策はどこに名あるのだろうか。

前政権のコメ増産方針との整合性を問われると「見直すと捉えるのであれば見直しになる」と語った。今後の政府備蓄米の放出方針について、米価高騰を理由に実施する考えはないとの認識を示した。鈴木氏は石破前政権と異なり、政府が米価抑制のために市場介入した手法に否定的な見解を示した。

しかし令和の米騒動が起きた2024年において、米価が高騰したが、お米は不足していないと農水省は繰り返し表明していた。そのときの農水副大臣だったわけだ。その後、小泉大臣に代わり、長年作況指数はおかしいとされていた農水省は米の作柄の把握が出来ていないとして、やっと作柄の発表を廃止した。

この農水省の現場の把握が出来ない現状を、米マニアを自称する鈴木氏が気づかなかったとすれば、かなり愚鈍なマニアである。外から見るだけでは、米作りは分からないものだ。そのおかしな作況指数を発表していた責任者の1人なのだ。このブログでも作況指数の不自然さを繰り返し主張してきた。

米騒動の時に、お米は十分にあると主張し続けた責任者でもあった。つまり米オタクを自称する、農水省出身の専門家が、米騒動場面でお米の生産量の判断を誤っていたとしか思えない。あるいは、米が値上がりすることを米農家や農協にしてみれば、歓迎するべきことと考えて、あえて黙って居たのではないか。

お米はいくらでも家にある。売るほど家にある。という暴言で止めさせられた、江藤前農水大臣と同類の農水族議員なのだ。米価高騰は米不足が原因ではないというのが、当時も、また今も農水省の認識なのだ。米価を抑制できないで、批判を浴び続けた結果、農水族は小泉農水大臣の指示に従ったに過ぎない。

そして、また生粋の農水族議員が農水大臣になって、逆襲が始まる。JAの改革を避け、全農を温存する。小さな農家を悪い形で維持する政策に戻りそうな流れに見える。この姿こそ、自民党の利権政治である。過去の権力者がその権力維持のために、自民党にしがみついている姿だ。

日本の小さな米農家は世界一くらい生産性が低い農家と言わざる得ない。それを温存してきたのが、自民党農政族議員なのだ。米の田んぼではなく、票の田んぼなのだ。大企業が農業に進出し、生産性の高い農業を行うことを怖れているのだ。市民が自給的農業を行うことも怖れているのだ。

アベ時代に戻り、このままでは日本の停滞の混迷は深まるだろう。高市氏は財政出動し、アベノミクスをサナエノミクスをマタゾロやるらしい。日本経済は財政赤字をさらに増すことだけになりそうだ。食料安全保障の確立として、農業構造転換集中対策に集中投資を実施し、全ての田畑をフル活用できる環境作るとしている。

一体どうやって具体的に政策として、実現できると考えて居るのだろうか。「転作支援から作物そのものの生産支援への転換」、「精緻な需要予測に応じた米生産の支援・需要の拡大」、「農地の大区画化」、「共同施設の再編・集約化」、「中山間地域支援の拡充」、「省力化・収量増に資するスマート農業の推進」等を実現する。

としているが、農水が長年主張してきたが、実現できないでいることを羅列しているようにみる。何一つ新しい具体策があるわけではない。これでダメだったから、どうしようかというのが今の課題である。何故、おかしな方向にしか進まないのかを考えれば、小さな農家問題。農協の問題。すべてがこの問題に行き着くではないか。

日本経済は30年の停滞と言われている。30年1人あたりのGDPが低迷している国なのだ。そして、アベノミクスを再現しようとするサナエノミクスでは、停滞がこれからも続いていくと見なければならない。アベノミクスの下では金融緩和、財政出動、構造改革による新産業の創出、という3本の矢が掲げられたが、新産業の創出が出来なかった。

安倍政権下と同様に株価は上がり大企業は空前の好況を享受すると見られる。すでに株価は理由なく、バブルを膨らませ値上がりを続けている。一方で、格差はさらに広がり、貧困層が膨らみ続ける可能性が高い。企業がさらに内部留保を高め、労働者の貧困が進むと見なければならない。

サナエノミクスはアベノミクスの悪夢の再現である。「大胆な金融緩和」「機動的な財政出動」「危機管理投資・成長投資」を総動員してインフレ率2%を目指す苫田同じことを語っている。アベノミクスの第3の矢は「民間活力を引き出す成長戦略」で規制緩和など「改革」が主だったが、高市氏はここを「投資」に変えるというのだ。

そして、インフレ率2%を達成するまでは、戦略的な投資にかかわる財政出動を優先する。頻発する自然災害や感染症、高齢化に伴う社会保障費の増大など困難な課題を多く抱える現状にあって、政策が軌道に乗るまでは、追加的な赤字国債発行は避けられない。つまり、財政破綻がまた一歩進むことになる。

髙市政権下の農業政策は先祖返りのようだ。小泉氏の登場で、農協解体かと期待したのだが、現状維持政策である。利権政治の温存になる。農協の意義はないわけではない。しかし、現状の農協は第2種兼業農家(収入が農業外の方が大きい農家)の維持を目指している。その結果、日本農業の構造改革が少しも進まない。

余分かもしれないが、私の農業改革の考えを書いておく。

農地の区分けの変更を行う。大規模農業推進地区。地方社会維持のための農家温存地区。自給農業者の利用推進地区。農地への課税や、補助金を地域ごとで変えて、新規就農者や大企業農業が可能になるようにする。

また、公的農業研究機関には、気候変動に対応した新品種の作出を加速化させる。すぐにでもやらなければならないことがまだまだある。改めてまた書く。

 

Related Images:

おすすめ記事

 - 稲作