心の体操

動禅体操をしている。動禅体操は心の体操だ。朝45分くらいである。これを継続することに頑張っている。毎朝やる気が出ないで、今日はやらないでも良いかと考える。そこを押し切り何とかやる。継続すると言うことが重要だと思っているからだ。
時々やると言うことでは私には継続できない。気が向いたときにやるというのでも続けられる人もいるらしいが、そんな根性はない。1日ぬければそれが2日になり、3日になり、ついにはやらなくなるのは目に見えている。そんな経験を繰り返してきた。そこで何が何でも無理矢理毎日必ずやると決めて、相当我慢して続けている。
70歳になったときから始めたはずなので、そろそろ三年と言うことになる。石の上にも三年と言うから、もう少し続くかもしれないと思い始めている。始めた動機は一番は惚け防止であった。何かと忘れての失敗が増えた。
太極拳は惚け防止に2番目に良いとテレビで言っていた。一番は卓球だった。卓球もやってみたのだが、目が悪いので球が消える。その後は絵を自分のものにするために動禅体操を続けているというのが、現実である。まだボケていないようなので、効果はあるのだろう。
心の体操を続ければボケない。もしかしたらあるときの自分の断面を絵に書き留められるのかも知れない。絵を描く心をどのように位置づけるか。心を静めて、無心で絵に集中して行く。この辺りを動禅体操で整えている。これもいくらか効果があるようだ。
絵を描いていて、たまに腕時計が目に入ることがある。すると心拍数はだいたい53くらいになっている。ほぼ眠っているときの心拍数に近い状態である。だから絵を描いていてそもまま寝てしまうこともある。情けないが、そんな程度だから動禅体操で訓練を積む訳だ。
動禅体操はまずスワイショウから始める。往復100回である。ゆっくり両腕を身体のまわりに大きく振る。身体をねじるように振る。これも紀元前から行われたインドで生まれたヨガの一つだと想像している。それが中国に伝わり、中国では準備体操のように行われるようだ。
今日はやりたくない。と気の重い日でも、スワイショウを無理矢理始めると、いつの間にか何とかやるかと言う気持ちが前向きに変わって行く。身体を振り続けるから、一種の酩酊というか、興奮状態に入るような気がする。目が回ってきてそのきになるという状態。
スワイショウが終われば、わたくし流の変形八段錦を行う。呼吸法と割り切って取り入れて、呼吸の強化を目的に変形したものである。これはコロナが心配で、呼吸を鍛えなければと始めた。何でも追い込まれての泥縄である。それでも思い立ったら始める。遅いかもしれないが、やらないよりはましだと重い腰を上げた。
まず第一段は深呼吸から始まる。呼吸は口を開いて行う。吸うときは途中まで閉じて吸って、最後には口を開いて限界まで吸う。途中から口を開いて空気を吸いきる。横隔膜を意識して、大きく胸腔を開いて行く。意識することが出来たら、逆腹式呼吸で行う。これは山本素峰先生に教えていただいた呼吸法である。
息を吐くときも口は閉じてまず吐いて行き、最後は口をとがらせて空気を吐ききる。この口を開く呼吸法は8段錦のすべての動きに取り入れて行う。一般には口を開かないで行うらしい。呼吸の強化に特化した8段錦だ。今回はその中の最後の8段目の爪先立ちについて特に書く。背伸び立禅である。
先日格闘家の動画を見ていたら、立禅を1時間半やることで、自由自在の無敵になったと語っていた。その意味は心が鍛えられたと言うことだと思う。禅という物は人間の心の力が強くなる体操である。体操というと道元禅師に怒られそうだが。
あえて禅というものを心を鍛える体操ぐらいに考えておきたい。重く考えたらとうてい私には続かないものだったからだ。続けることが第一だと考えている。座戦でなく立禅である。しかも立禅でも背伸び立禅である。乞食禅に相応しいのが背伸びの運動である。
これも自己流に相当変えてみた。そもそも朝の禅体操すべてを眼を閉じて行う。本来であれば、目は半眼である。薄く開いているが視覚の働かない状態。これはあまりに難しい。上手く出来ないぐらいなら、出来るようになるまでは開いているより閉じた方がましかと考えた。
身体を動かすときに視覚に依存しないと言うことである。目に頼れば、視覚によって身体の調整をすることになる。視覚に頼らず、身体感覚を呼び覚まして身体の調整をしたい。眼を閉じて片足立ちをすれば、誰だって揺れ動く。しかし続けて行く内に徐々に安定する。
この安定して行くときに一番重要なことが、心をどこに置くかである。安定すれば、どんなことをしてもよい。色々挑戦をしてきた。体幹を安定させなければ、揺れ動く。体幹を安定させるためには、体幹の体操も必要だが、先ずは体幹を意識して、固める。
背伸びの立禅を説明する。眼を閉じて、背伸びをする。ぐらぐらする。それをあらゆる方法を考えて、何とか背伸びを200数えるまで続ける。私は半年ぐらいで出来るようになった。一回目の200が終わったら、踵落としを20回。背伸びの姿勢から踵をストンと落とすと、ずーぅんと響く。
強く響かないぐらいで20回ストンストンと落とす。そして2回目。背伸びの立禅で200を数える。又踵落とし20回。三回目の背伸びの立禅200を数えて、踵落とし20回。最後は一気に身体を落としてしゃがみこむ。チイサクナ―レチイサクナ―レと身体を丸める。
背伸び立禅は心の体操である。心が強くなければ出来ない。3回できるようになり、半年継続できたならば、300を数えるのも良いかと思う。実は、最近は300回を3回やる日もある。しかし、8段だけで20分はかかってしまうから、ちょっと時間的に難しいかも知れない。もちろんあわてることはないのだが、1時間もかかるとやるのがさらにおっくうになる。
やり始めて変わったのが絵を描くときの心境である。静かな気持ちで絵を描くことが出来る。没入して何時間でも絵を描いていられる。毎日アトリエカーの中でただ絵を描いている。あきるどころでは無いし、今日も描けるのかと思うと嬉しくなる。
良い絵を描こうという気持ちから離れる事ができた。今充分に絵を描ければそれでいいと思えるようになった。こうして絵を続けて行けばどこかにたどり着けるかも知れないという思いはあるが、先のことより今のことに集中できるのは、背伸びの動禅の御陰かも知れない。
最後に太極拳をやる。現在三年目である。1年目は覚えた。二年目は忘れた。三年目は正しい形でやろうと、今は努力している。正しい形はまだ遠いが、重心の安定した移動を心掛けている。まだ四年目の目標は定まっていない。