石垣島稲刈り

   


 この手前の田植えしたかのような田んぼが、ひこばえの延びたところである。2週間でここまで延びるのだから、このままおいておけばそれなりに収穫できるはずだ。


 今日の作業を説明しているところ。今日の作業を説明しているところ。この後続々と人が集まってきて、30名くらいになった。伝統農業でやるとこんな元気なイネになりますと、アピールした。


 足下は完全には乾いていない状態。このぐらいで又水を戻した方が、ひこばえ農法には良いと考えている。一度でも完全に乾かすのは株を弱めることになる。そのいみで、手刈りでやる伝統農業はひこばえ農法向きだ。

 石垣島のぼたん農園の2回目の稲刈りが終わった。日曜日の午前中の作業だった。30名近くの人が来てくれた。とても良い雰囲気の稲刈りになった。だんだんのぼたん農園も気持ちがそろってきたのだと思う。楽しくやっているのだが、とても真剣に集中して作業をした。やっとここまで来た。

 子供達も5,6人はいた。やはり子供が来てくれると雰囲気が変わる。どうすればやりたがらない子供にやって貰うかである。最初は大抵の子供が嫌がるものだ。田んぼがべちゃべちゃの泥なのが嫌なのだ。泥は汚い物という意識がある。石垣島の子供も小田原と少しも変わらない。

 汚れたくないというのだろう。まず田んぼに降りることが出来ない。大人が楽しそうにやっていることがまず大事だ。それを見ていてだんだん緊張から解放される。お母さんが子供にやらせて、写真を撮ろうなどと言うとこれはだめだ。まずお母さんが必死ににやらなければ子供がためらうのも当然である。

 それは田植えの時も同じだった。始めてしまえば、子供は結構楽しんでやる。少しだけでも良い。ともかく稲刈りをやったと言う身体の身体の記憶に止めて貰いたい。それがいつかよみがえる日があるかも知れない。こういう体験はもうなかなか出来ない時代なのだ。

 今回はすべて手刈りでやるつもりだ。コンバインもあるのだから、機械でかればすぐに終わる。何でこんな面倒なことをわざわざやるかである。のぼたん農園の自給農業はできるだけ機械を使わない。機械が無ければ難しい部分は機械を使うことは厭わないが、手作業で乗り切れることは手作業でやる。

 そうすれば、いつか機械など無いところで田んぼをやらなければならない日が来ても、一人で挑戦する気になるかも知れない。ついこの前まで機械など使わないイネ作りが普通に行われ、日本人はそのお米を食べて生活をしていたのだ。お米はそれほど優秀な主食作物なのだ。

 手刈りしたお米はねっしゅの袋に10㎏ぐらいづつ入れて、天日で干している。時々ひっくり返して、3,4日すると乾燥する。ハザがけよりもよほど楽だ。石垣島は風が強いから、ハザがけはとても無理だ。天日干しをするなら、地面に寝かして干すことになるが、突然スコールが来るから、これも無理だと思う。

 色々考えた末に、コンバインで脱穀までしてしまい、メッシュ袋で干す方式である。雨が降ってきたらすぐ、車の中に取り込んでいる。お米の番をしていなければならないが、安寿と厨子王の鳥追いをしていたおばあさんのような気分である。

 収穫は8俵近くいった感じだ。よく採れている。1年目でここまで取れるとは思わなかった。田んぼの中に大きなムラがあった。ほとんど分ゲツしない場所もあった。それは地面が岩盤が出たところである。土が浅いから当然イネも良くないのだろう。

 良く分ゲツしたのは土が深くて、水牛が腹まで沈むほどだった場所だ。あんなに深くて干しもしなければどうなるのか心配だった。ところが普通に歩ける状態まで堅くなっている。信じがたいような土だ。だから、通年通水しても沼田に成る心配がない。

 稲刈りの前1週間に150キロの堆肥を入れた。「ひこばえ農法」のためだ。ひこばえを2期作としてこのまま育ててみる。ひこばえ農法は最近あちこちで始まっているが、収量が少ないのが欠点である。どうすればひこばえを育てて、収量が普通に採れる農法に出来るかである。

 少なくとも6俵以下では農業とは言えない。それはお楽しみの範囲だ。やる以上農業としてやりたい。石垣島のどこの2期作よりも採れていると言うところまでやらなければ、意味がない。その技術的な可能性はあると考えている。又それが、石垣の稲作農業を活性化することになると思っている。

 石垣の稲作は環境保護と結びついて行く必要がある。経済だけでは必ず行き詰まる。経費ばかりかかって、お米の販売価格は下がるばかりである。経営の観点から見れば、継続できなくなるのは目に見えている。しかし、田んぼが無くなれば、石垣の自然の多様性は急速にしぼんで行くだろう。

 なんとしても水田を通年通水して維持してゆく必要がある。それが石垣島の環境維持と水の豊かさに繋がるものだ。小田原であれば、冬期湛水には2つの問題がある。まずさっきも書いたが、土壌が泥沼化してゆく。もう一つが冬水があると、何も作れない。

 ところが石垣島の土壌はしっかりしている。そして、「ひこばえ農法」で2期作が出来るのだ。改めて田植えをしないで済めば、経済的にやる意味が出てくる。田植えがないだけ随分と楽だ。前回稲刈りした2つの田んぼでは立派なひこばえが茂っている。

 問題は田んぼを作りながら、良い土壌をどうすれば作り出せるかである。化学肥料や農薬を使いすぎて、土壌を砂漠化させてゆくのでは意味がない。田んぼの耕作が、田んぼの土壌をよくしていく農法を見付けなければならない。

 水草緑肥農法である。アカウキクサ農法である。アカウキクサの窒素固定能力を生かして、田んぼに水を張り続けることで、田んぼの腐植を増加して、より素晴らしい水田土壌が出来るはずだ。水草緑肥と、ひこばえ農法を組み合わせた、のぼたん農法を作り出す。

 今は堆肥を投入しているが、堆肥を入れないでも、充分にお米が出来る土壌に五年間の間にする。今回、それなりの方向は見えてきた。課題がある。1,アカウククサの増殖法。2,2期作のお米をどうすればゆっくり育てられるかである。

 一期作のお米はどこの農家よりも時間をかけて収穫まで進めることが出来た。2期作はどうしても早くなる。まして、ひこばえである。どうすれば15枚葉を出せるかである。ますます観察が必要になる。いよいよ冒険の佳境である。

 - 楽観農園