軍艦島が世界産業遺産に

   

この所、様々なものが世界遺産に指定される。良い事だと思う。今度は明治期の産業革命遺産が対象になると言う事の様だ。それはそれで価値ある事だと思う。産業革命に遅れた日本が、懸命に追いつこうとした歴史的証拠である。それは世界のどこの国でも可能だった事に見えるが、それは案外に難しい事であったのだと思う。新しいものを受け入れる能力というものが、江戸時代の日本人に培われていたという事が嬉しい。進取の気性というか、そいうものが鎖国の国でありながら日本人は強く持っていた。黒船が来れば、弁当持ちで出掛けて行くような好奇心である。アジア諸国には、この柔軟性が不足して、植民地化されてしまった国もあると想像する。西欧の列強は金もうけのために、アジア進出をする。アフリカであれば、商売になるものが少ないから、人を商品にして、新興国アメリカに輸出しようなどと考える。アメリカはその黒人労働力を使って、綿花を栽培し輸出する。

列強は支配し、えばりたいからだけで、アジアに進出した訳ではない。金儲けが主目的である。植民地化しなければ儲けられない国は植民地にされた。日本は技術を伝えれば、大いに儲けられそうな国であったのだ。つまり、アジア開発銀行や、AIIBと同じ発想である。江戸時代の日本は遅れていたどころか、高い固有の文化を醸成した国であったのだ。技術を伝えれば、一気にものにして良い貿易相手になる事はすぐに分かった。商売敵にまでなるとはそのときには思わなかったのだろう。中国はアヘンを販売するしか商売の方法がなかった。一気に日本は産業革命を進める。その施設が今も残っていたのだ。この事も日本の特徴ではないだろうか。物を大切にする文化。日本文化の特徴のもったいない文化だ。当時教わって作った施設が、既に世界中に無くなっていて、日本だけに残っている。これは、中国や韓国から学んだ仏教遺産やその他の文化でも同じことが起きている。

今回の世界遺産の申請に、何故か、松下村塾が入っている。安倍氏へのサービスのつもりなのだろう。NHKでもその種の大河ドラマが放映されている。吉田松陰は立派な人だと思うが、私には明治の政治の方向を評価できない。その事はまた次の機会にして、産業遺産ならそれに限定して、むしろ昨年の富岡製糸場の方を合併して申請すべきだろう。この産業遺産に関して、韓国から異論が出ている。韓国人が強制労働させられた施設が、6つあると言う事だ。韓国も何でも見当違いに理屈を言う国だと思う。色々の事があるからこそ、産業遺産にするのだ。アウシュビィツ収容所も世界遺産なのだ。韓国人が強制労働されたという器が残るのである。何故抗議をするのかが理解しがたい。日本政府の説明も、申請内容と話しが違う等、見当違いの説明である。明治の近代化の中で、日本人だってひどい労働が強いられたのだ。炭坑労働者の過酷な歴史も、遺産と共に残ってゆくのだ。近代化の光と影、そのすべてが忘れてはならない事なのだ。

歴史を一面的に捉えては何も見えない。事実というものは複雑で多様なのだ。あらゆる可能性からみる必要がある。明治維新によって失われたものこそ、今見直すべき事なのだ。そうしなければ、日本は埋没して、消えて行く事になる。それが世界企業の時代の国家が考えなければならないことだ。国等捨ててしまえばいいという考えもあるのかもしれない。稲作文化によって培われた、永続する暮らしの文化こそ、人間の不二着地点だと考えている。世界はますます競争を激化し、危うい所に進み、墜落の危機まで行くだろう。しかし、日本人が江戸時代にやったように、とことん循環型の社会で生き延びようとすれば、それなりの平和な暮らしがあると考えている。日本はその可能性を強く秘めた国だ。少なくとも江戸時代末期の日本人にそうした力量があったからこそ、文明開化などという異文化を受け入れる事が出来たのだ。その証拠である産業革命遺産を残すことは、大切な事だ。

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