日本の食料生産について

   



 日本は食糧自給率が37%しかない、極めて低い国の一つだ。合せてエネルギー自給率も極めて低い国の代表である。江戸時代完全自給の鎖国していた国柄だったことを思うと、国のありようが様変わりである。どうすれば食糧自給率が上昇するかを考えてみたい。

 食糧自給率が低い要因は国民一人当たりの農地が少ないことにある。戦後の初等教育では、人口密度が高く、農地が少ない。資源も少ない国だ。だから日本は人間が資源だ。一人一人が精一杯努力しなければ生きて行けない国なのだ。このように教えられた。

 東アジアの三つの気候風土の似ている日中韓を比較してみる。総人口をこれら耕地・樹園 面積で割り、1 ヘクタールあたりの扶養人口を求めると、日本と韓国はほぼ同じで 1haあたり 28 人に対し、中国は 1haあたり 10 人と日韓の約三分の一である。

 日本と韓国の現状ではおおよそ100坪3アール。で一人の食料を生産する必要がある。中国も少ないとは言え、300坪で一人となる。実際の農地は中国では広大な牧草地が含まれるため、食料生産という意味では日本や韓国と変わらない状態である。

 中国の農地面積は 1 億 2,254 万ヘクタールで、国土面積の 12%となる。 日本の耕地・樹園面積は 463 万ヘクタールで、やはり国土面積の 12%、韓国は 175 万ヘクター ルで、国土面積の 18%である。

 農家 1 戸あたりの耕地・樹園面積では 0.48haと、日韓と比べて三分の一以下である。 一戸農家当たりの農地は逆に中国が一番狭い。しかし、この一戸あたりというのは少し土地の所有形態が違う。土地の個人所有と言うことはない。

 ヨーロッパ各国の一人当たりの農地面積も日本と競べれば、数倍はある。フランスが33アール、英国が9.6アール。ドイツが14.7アール。日本は森林面積は極めて広い。しかし、林業は産業としての経済規模が小さい。広い森林を産業として有効に使えているわけではない。

 では狭い面積を有効に使い食料生産ができるかと言えば、可能ではある。100坪での有機農業による一人の自給は可能だ。しかし、食糧自給率で見るように、一人の食料の3分の1しか生産が出来ていない。

 農地が狭くて問題が起きているのかというと、年々耕作放棄地が広がり、農地は縮小されている。理由は日本の中山間地と言われる農地は規模拡大が難しい場所ばかりである。人間が自分の手で開墾をして農地を作り上げてきたのだ。大きな機械は入れないという農地ばかりである。

 日本の食糧自給の問題点の第一は、明白に農業人口の老齢化と減少にある。何故農業者人口が減少するかと言えば、1,若者が肉体労働を嫌うという傾向がある。2,農業で生計を立てることは、農業後継者であっても困難になっている。3,農業分野が大規模企業の新規参入が困難な理由がいくつもである事。

 国が食糧自給率を上げることに本気であれば、以上の三つの点を解決することだ。不可能な問題ではない。要するに農業が儲かる物になれば、就農者は増える。看護師さんや介護士さんや保育士さんの不足が問題になるのは給与が低いからである。

 農業は個人経営が多い。大規模農業法人は規模拡大が可能な地域の農地では広がるが、多くの場所で個人の農家が、老齢化して止めて行くのが現状だ。農業機械や施設や優良農地を所有していても、自分の子供に継がせることは無理だと考える人の方が多い。

 農業は主に自営業であるから、どれほどブラックで働いたところで問題は無い。しかし、現状は労働力不足で海外からの技能研修制度でかろうじて労働力を確保している範囲である。日本人の若者が肉体労働を希望しなくなっていると言うこともある。

 日本の競争主義経済の厳しい中では、まったく儲からないのが農業分野なのだ。特に稲作は厳しい状況にある。稲作に関わる物仕事で利益が出るのは耕地整備ぐらいである。整備された農地の耕作者がいないという、困った農地が沢山ある。会計検査院はそういう所を調査して貰いたい。

 結局日本の食糧自給率が上がらない原因は、農業者が増加しないところにある。日本には職業選択の自由が憲法で保障されている。農業をやりたくない人間に、農業を強制してやらせることは出来ない。北朝鮮では軍隊で食料生産をしているらしいが。日本の自衛隊では出来ない。

 では、農業を儲かるようにすれば良いのだが、政府の主張は国際競争力のある農産物を作れと言うことだ。主食農産物を作るのを止めろと言うことになる。国の安全保障から考えたときの食糧の確保と言うところからみれば、極めて危ない政策に見える。

 日本人は昭和37年度には118kgの米を消費していた。平成30年度には、その半分以下の53.5kgにまで減少している。日本全体の米の需要量は毎年約10万トンずつの減少している。日本人がお米を余り食べなくなっている。私がお米を食べる量は40㎏ぐらいだろう。一ヶ月に3㎏少し。毎日120グラムぐらいの物だ。申し訳ないようだが、それぐらいしか食べない。

 お米を食べなくなっているのでお米が余る。イネ作りを奨励できないのが日本の実情である。お米は年々安くなっている。しかし水田を減らすべきではないと政府も考えている。いざというときにやはりお米を作る態勢だけは維持しなければと考えている。

 そこで飼料米や加工米に補助金を出して、水田の減少を食い止めようとしている。しかし、2011年の農地面積は456万1000ha。この10年間で21万2000ha減少した。減少率は約4.6%となる。田の耕地面積は毎年減少を続け236万6000haとなり前年に比べ1万3000ha(0.5%)減少している。

 背景には続けたくとも続けられない老齢化がある。そして企業的農業の参入は利益が出ないのだから、当然増えない。どう考えてみても、当分の間、産業としての稲作農業には展望がないと言うことになる。それならばどうしたら良いのかである。

 一つには石垣市のようにお米屋さんがイネ作りに参入することを奨励する。需要を把握している例えばパックのお米を販売するようなところが、直接生産を始めることを推奨する。つまり、販売戦略を持たない農協を通しての販売では今後ますます難しいと言うことになる。売れるお米を生産する体制を作る。

 もう一つの方向が、イネ作りに市民参加を促すことだ。今後日本は厳しい経済状況に陥るはずだ。その時に備えて、市民自身が食糧自給を確保する体制を作る。市民の自給農業の形態は専業農家とはまるで違う。市民がイネ作りが出来るような体制を公共が保障する。

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