石垣市「地域経済牽引事業計画の承認に伴う農用地利用計画の変 更」に関する意見書

   

意  見  書
                            2022年6月15日
石垣市長 中山義隆 殿
                    住 所 石垣市字石垣248-3
                 
氏 名  笹村出
2022年5月16日付けで公告された「地域経済牽引事業計画の承認に伴う農用地利用計画の変更」について、以下の通り、意見書を提出します。
ーーーーー以下意見です。

 石垣市の将来は農業の振興にかかっていると考えています。現在日本農業は厳しい状況に置かれ、耕作放棄地が増加し、農業者の人口も老齢化し減少しております。その結果日本の食糧自給率が37%から脱することが出来ない状況です。

 私は石垣市崎枝地区3.6ヘクタールの農業経営を始めた者です。水田と果樹園と水牛牧場を、体験型の伝統農業の農場を進めています。石垣島に世界から人が来て学べるような、体験農場を作りたいと計画しています。

 ウクライナとロシアの戦争によって、世界全体の食糧事情の悪化が顕著化しました。穀倉地帯での戦争が、世界中に影響を広げています。こうした思わぬ不測事態がさらに起これば、日本の食糧確保は忽ちに危険領域に達します。

 資本主義の行き詰まりから来ている、世界の経済戦争はいつまたさらに深刻化して、どこの国が経済制裁を始めるかも分からない不安定さです。日本はアメリカと軍事同盟を結び、中国を仮想敵国としている。中国と隣接する日本は安全保障上極めて深刻な状況にあると考えざる得ません。

 その一方で、世界の人口は増加の一途です。しかし農地はすでに限界まで達し、自然破壊によって農地が開発されている状況です。熱帯雨林を焼却して、農地を作らなければ、一層の飢餓が起こるという世界の食料生産の状況なのです。森を燃やして地球の温暖化を進めなければ、食糧が確保できないという深刻な状況が世界では起きている。

 これからの世界情勢を考えると、食料生産を守ることこそが国の安全保障の根幹になると考えています。日本政府の方針も食糧自給率を高めることと、農用地を少しでも減らさないための努力をすべきとしています。それは当然石垣市でも同じことでしょう。
 
 この前提からすれば農地を減らすことはあっては成らないことです。まして農振農用地は転用をしないと言うことが大前提の農地です。現在ある農地をどのように維持して行くかを考えなければならないのが、石垣市行政の役割です。又それを後押しして守ることが農業委員会の役割だと思います。

 まして、今回の対象地域はそもそも畜産振興のために、多額の国費を使い農地を造成した場所です。畜産振興と研究のために開発された農地が、その後石垣市の個人農家が払い下げを受けた場所です。あくまで石垣市の畜産と食料生産のために、農地を維持して行くために払い下げが行われたと考えなければ、矛盾が生じます。

 今回の農振農用地農地からの転用の申請は、ゴルフリゾートの建設と言うことです。これは通常ではありえないことです。あくまで特例として今回申請が出ている案件です。特例にして良いような案件であるかを農業委員会には慎重に審議して貰いたい。

 石垣市が観光産業の振興に力を入れる意図は理解できます。又それは必要なことでもあると私も考えるところです。石垣市の農業振興にも、観光産業の活発化は必要なことではあります。しかし、それを計画するには余りに適合しない場所です。優良な農地を潰して、リゾートを計画すべきような場所ではないです。

 前勢岳にゴルフリゾートができると言うことはその下にある水田地帯へも大きな影響を与えると考えるべきです。ゴルフ場やリゾートで使われる水の大半は地下水のくみ上げによるとされています。地下水の大量くみ揚げが、下流域の農地に影響があるかは十分な調査が行われていません。

 長年の農業の経験から上流で起きたことは、下流域に何らかの影響が起こるに違いないと考えています。もし影響が起きたときに、責任をとるのは農地の転用を認めた農業委員会と言うことになるのでしょうか。十分な調査がないままに農業の命と言える水を安易にリゾート開発に当てることは間違っていると言わざる得ません。

 それでも、石垣市の観光産業を考えたときに、どうしてもゴルフ場が必要だと考える人はいるでしょう。石垣市全体を考えたときに北部には開発すべき場所がまだまだあります。もしゴルフリゾートを作るのであれば、北部の方が島の将来計画に相応しい場所があります。

 ゴルフ場は石垣市に一つで充分でしょう。そのゴルフ場が北部に出来ることで北部開発の道筋が出来るかも知れません。これ以上南部に開発が偏ることは島の将来にとって、益がありません。

 バランスのとれた島の発展のためを考えれば、今回の農振農用地という場所のゴルフリゾート転用は、余りに不自然な気がします。牧草地として払い下げを受けた地権者に良くも悪くも個人的な利権が生じるでしょう。痛くもない腹を疑われても、仕方がないように思えます。

 今回の開発はゴルフ場が前面に出ていますが、実際の所はゴルフ場よりもホテルとリゾート開発だと思われます。ゴルフ場自体が日本各地で閉鎖が続いている状況です。ユニマット社は西表島でもリゾートホテ
ルを裁判をしてまで建設をして、それを忽ちに失敗して売り払った前例があります。

 むしろ、強引に行政と結託を測り、公用地の払い下げや農振農用地の払い下げを受け、その後に転売を計ると言うことがそもそもの目的のように見えて仕方ありません。そもそも転用予定地はゴルフ場には傾斜が強すぎて適地とは言えない場所です。

 そこを無理矢理開発する意図は、将来の転売を計画しているとしか思えません。農振農用地の転用が出来さえすれば、リゾート計画は失敗しても十分利益が見込めるとは誰しも思うところでしょう。

 石垣市の農業委員会が農振農用地の転用を行うのであれば、認める前提として、まず地下水の農業委員会と責任としての調査をお願いしたい。現在の不十分な地下水調査では、将来の不安を拭い去ることが出来ません。

 石垣市の魅力は食糧自給が可能な地域と言うことだと思います。石垣市の観光振興も、ここに焦点を当てるべきです。石垣の食の魅力を発信して行く。石垣に来た観光客が、石垣の農産物を食べて石垣の良さを味わう。農地を守ることが、石垣の観光産業の推進にもなるという点を重く考えて欲しい。

 島の水は、大切に守らなければならない命の水です。その水が様々な要因で危うくなっています。理由は分かりませんが、石垣島では湧水がどこでも減少しているという話を聞いています。イネ作りを行っている者として、痛切に不安を感じているところです。農業者を守る農業委員会であって下さい。

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