オリンピック誘致と福島原発事故
オリンピック招致委員会が、福島事故に関して、質問が出ることに意識が向いていなかったことに、驚いた。日本が言いたいことだけに意識が集中してしまい。何を世界は知りたいと考えているかに、考えが及んでいないのだ。昨日の記者会見でも、安倍総理が責任を持つと言っているので、安心してほしいと答えたが、まったく意識がずれている。具体的な方策を答えなければ、答えたことにならないことを理解していない。IOC理事が考えている判断基準は、世界にとってより良いオリンピックが開かれるのは、どこの都市かである。気になる点があればダメなのだ。日本人が井の中の蛙であり、世界の孤児であることを、さらけ出したのではないだろうか。これは歴史問題にも繋がっている。もし、ウクライナがオリンピックに名乗りを上げたとしたら、どう考えるかである。世界の人たちは、そして日本人も、現在のチェルノブイリの状態、放射能の飛散状況を聞きたいだろう。オリンピックに名乗りを上げる以上、聞かれる前から具体的対策を説明をする必要がある。
世界から見れば、福島の原発事故はそういう深刻な事故であり、海への汚染水の流出は、許しがたいことなのだ。何故、敏感に反応が出来なかったと言えば、大したことではない。海に流れ出てしまえば解決だというぐらいの、鈍感さで東電は事故を扱ってきた。記者会見ではきれい事を述べる。しかし、東電の本音は海に行ってしまえば大したことにはならない。こう思っているのだ。政府も同様である。そうでなければ、事故の終息を宣言したり、原発の輸出に奔走したり、総理大臣自らが原発のセールスなど、恥ずかしくてできるわけがない。世界は日本人に対し、原発の事故で、苦しんでいるだろうと思うから、厳しい意見を抑えてくれていた。竹田誘致委員長は自ら、汚染水のこれからの処理に対して、説明をすべきだったのだ。そうは言っても、日本政府自身がその深刻さに対して、反応が鈍い。繰り返し失敗してきたのだから、竹田氏が汚染水処理に関して説明など出来る訳もない。
メルトダウンしてしまった核燃料は炉の底を抜けて、存在しているらしい。壊れかかった原子力施設の空中階にあるプールに、使用済み核燃料が、膨大に格納されている。大きな地震があり、この壊れかかった建物が崩壊したら、どうなるのか。十分補強して、崩れるようなことはないと、東電は説明はしている。たぶんそうなのだと思うが、世界の目から見れば、大丈夫だろうか。もし、オリンピック期間にまた巨大地震が起きたら、どういうことになるのか。こういう目で見ているのだ。分りやすく説明できなければ、何も東京を選ぶ必要はないということになる。復興のためのオリンピックなどと位置付けても、この肝心要な部分に意識がないということが世界からどう見えるかである。北京オリンピックでは、大気汚染が不安だから、出場しないというマラソン選手が居た。もし、競技者から、この時点で東京は放射能汚染水が心配だから出場できないというアピールがあれば、どうなるのか。
もし、東京が落選したとしたら、主たる原因は放射能処理のでたらめにある。放射能に対する鈍感さである。どこの国が選ばれてもいいことなのだ。経済が良くなるなど、主張するがそれはお互いさまのことだ。日本だけ良ければというような気持ちは、オリンピック精神から一番遠い。オリンピックは平和の祭典である。常日頃ぎすぎすし、角突き合わせている、世界各国がスポーツを通して友好を深めるために行われる。その背景に、無神経に海に汚染水を垂れ流している状態では、いかにも恥ずかしいことではないか。このことに自覚がないということはさらに恥ずかしい。今からでも遅くないので、安倍氏は緊急対策を練り直し、世界に対して海に汚染水を流したことを謝罪し、今後どのように対応するかを、分りやすく説明するべきだ。脱原発、脱核の傘を打ち出す位の意識がなければ、とても世界の理解は得られないのではないだろうか。