中韓首脳会談
中国を韓国の朴大統領が訪問し、首脳会談を行った。この訪問は期間が長い。27日の午前中に北京に到着し、30日まで様々な地域を国賓として訪問した。異例の歓待を受けている。陝西省西安に建設中のサムスンの半導体工場は投資額70億ドルで中国進出企業としては最大と言われる、工場視察を行った。この間初代韓国統監を務めた伊藤博文を暗殺し死刑になった安重根の石碑を、暗殺現場の中国黒竜江省のハルビン駅に建てたいとして協力を要請している。西安においても、抗日記念碑を立てることを要請している。朴大統領の中国語演説は「百年之計莫如樹人」という『管子』の言葉である。韓国語の部分でも、易地思之、管鮑之交、三顧草廬のような中国人になじんだ4字熟語を紹介した。「心が淡白でなければ考えを明らかにすることはできず、心が安定していなければ遠大な理想を実現することはできない」言葉の背景を考えると、政治家とは思えない奥深い言葉である。
日韓首脳会談が出来ない状況の中、世界の状況が高速に動いていることを感ずる。韓国の中国接近は外交的に言えば、北朝鮮の問題が深刻化が背景にある。どう核放棄させるかが課題である。先日には、米中首脳会談がアメリカで行われた。ここでは日本の歴史認識の問題が、中国習主席から問題だとして、話しが出たとされる。日本の報道ではアメリカが同盟国として遮ったように言われているが、真実は今後の展開次第である。アメリカの中国接近は世界戦略からいえば当然の方向である。先日のサミットでは安倍総理が日本の経済政策が認められたと、繰り返し実績を主張したが、サミットの会議での恒例の日米の首脳会談が、必要にもかかわらず行われなかった。日本の国際的立場が実に微妙なところに来ている事を感じざる得ない。自民党安倍政権はこのわずかずつ世界の反応が変わってきていることに気づいているのだろうか。私には相当の危機的状況に目えるのだが、報道も何かすっきりとした反応がない。
原因の主たるものは安倍政権の右傾化への危惧である。これは世界共通の危惧になり始めている。世界から出されているサインを見逃してはならない。もし、参議院選挙で安倍政権が圧倒的な勝利をすれば、一気に日本が危うい状況に進む可能性がある。アメリカもこの様子見をしている。これが近隣諸国及び同盟国の危惧である。ヨーロッパから見れば、日本の右傾化よりも中国の政治状況や、経済の展開の方が、気になってしょうがないのが実情だろう。言ってみれば尖閣などどっちのものでも関係ないのだ。日中が揉めることは漁夫の利を得るという意味で、ありがたいととらえる感覚もあるのだろう。日本が右傾化すると言っても、中国の軍事拡張の速度に対する不安の方がはるかに不安要素が高い。しかも、それには手段がない。その辺で素早く反応しているのが、ロシアの態度ではないか。北方4島解決を含め、ロシアは態度を変えてきている。中国に対する対抗意識が背景にある。安倍政権が、インドやロシアに外交戦略を展開しているのも、そういうつもりなのだろう。
韓国の中国ブームは本物である。朴大統領が中国語で中国首脳と対話していた。これはしゃべれるからと言っても異例である。一方日本の鳩山さんの中国での幼稚な発言にはまたまた驚いた。1959年、訪中した浅沼稲次郎氏は「アメリカ帝国主義は日中両国人民の共同 の敵」という発言をした。これが暗殺の原因とされる。鳩山さんが持論を展開するのは自由であるが、元総理大臣であった人が、これほど危機的な日中関係を認識できないというのも困る。尖閣諸島棚上げ論と、日本が盗んだと思われても仕方がないでは、意味が違う。私は資源があろうがあるまいが、人の住んでいない小島のことにこだわる必要がないと考えているが、中国でこういう発言をしてしまうことは、外交としてひどすぎる。中国での朴氏の態度は、何を意味しているのだろうか。韓国の深刻な国内事情からの焦りという人もいる。私にはまだ判断はつかないが、韓国の動向を注視し、日本の行く先を考えるべきである。