憲法改定の考え方

   

憲法改定を望む友人が、川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」を9条堅持を考える人はぜひ読んでほしいと言われたので、読んでみた。なるほどこういう風に考える人が、憲法の改定を望むのか、ということが分かった。軍事力の弱い国は、軍事力のある強い国から領土を奪われる。このように現実社会の弱肉強食を見ている。他所の国というものは強盗のようなもので、自分より弱い国から奪うものだとと考える。少なくとも、国家はそう考えて国民を守るための力を持っていなければならない。こう考えているのだろう。しかし、よく考えてみてほしい。日本という国もそういう強盗をやるような国であろうか。もし日本が圧倒的な軍事力を持ったとしたら、他所の国から領土を奪うだろうか。平均的な現代の日本人がそんな正義に反することを希望するとは思えない。竹島が日本だと主張して、武力を持って取り返そうとするだろうか。少なくとも現代の日本人の大多数はそこまで愚かだとは思えない。平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してやってゆこうと、しているのだ。

戦争に敗れて日本人も成長している。武力を持たない弱い日本に生きる日本人は、強者の論理が間違っていることに気付き始めている。平和憲法を維持して、平和を愛する国民としての日本の奇跡のような歴史の成果ではないだろうか。武力を持たない、弱い国家も対等に問題を解決できる道を模索して行くことが、人間の平和な世界へ進む方法である。何故このことを憲法を改定したい人は理解しないのだろう。自民党安倍政権は96条の改定を公約している。これは憲法が自分たちを縛る自由の利かないものなので、煩わしいから好きに軍事力を持てるものに変えたいという気持ちだと思う。やり方が違う。川口さんの居るドイツは3分の2の要件で憲法の変更を繰り返してきた。そういうことがドイツという国を原発を持たない、脱原発の国に導いたのだ。EUの経済的困難を一人で耐えているようにも見える。そこには、分裂国家を統一まで導いた、粘り強い努力もあった。そしてEUというものが国家主義を超えて、二度と第二次世界大戦の轍を踏まぬという、理想主義を持っている。

もし日本でも、9条の改定を3分の2の要件で提案するというのであれば、それは仕方がないと思う。私としてはつらけれど、国家というものは理想主義では無理なのだと考えるしかないと思う。そして0から、もう一度理想を目指し、3分の2の要件を満たす努力をする。今度の参議院選挙はその意味で極めて重要な選挙になる。自民党が40%を超える支持を受けている。日本の不思議な選挙制度では、これだけの支持率で3分の2を超える可能性もあるのだ。自民党が今支持を集めているのは、希望的観測である。所得倍増とか、150万円の所得増とか。ぼた餅をつるしているだけだ。現実は何かいいことが起きた訳ではない。むしろ、経済の行く先もだいぶ危うくなってきた。アベノミクスはすべては希望的観測に基づく、実体経済を伴わないものだ。確かに民主党のあの鳩山氏の頓珍漢な夢によって、失望を味わった後だ。もう経験不足の政党は嫌だという思いは強いかもしれない。しかし、憲法96条の改定の主張でもわかるように、自民党からもまともなプランなど何も出てこない。

参議院選挙の自民党の農業政策を熟読して見た。258番から、273番の政策である。これで日本の農業収入が2倍になることなど間違ってもない。これで行けると考える農業関係者が果たしてわずかでもいるだろうか。今度自民党から立候補する、ワタミの渡辺さんの農業法人でも無理だろう。荻窪の農業者さんだって、さすがにこれでは納得できないだろう。こんな看板だけの政策では、ただじり貧を待つばかりである。掛け声は書かれているが、あまりに具体性に欠ける。農地法の改正、農協の抜本的改革が無ければ、日本の農業は変われない。自民党はどのように農地法を変えるのか。どんな農協に変えてゆくのか。こういうことを具体性を持って公約しなければならない。96条の改定を出してきた発想も同じである。9条の議論を避けて通ろうということだ。平和を愛する諸国民の公正と信義を模索しようという理想を捨ててはならない。

 - Peace Cafe