農業者数の激減
農林水産省が7日発表した2010年の「農林業センサス」(速報値)によると、農業就業人口は260万人で05年の前回調査に比べて75万人減少した。1農業経営体当たりの平均経営耕地面積は、05年の1.9ヘクタールから2.2ヘクタールに拡大した。耕作放棄地面積は40万ヘクタールと、05年比で1万ヘクタール拡大した。就業人口の平均年齢は65・8歳と2・6歳上昇し、初めて65歳を超えた。
次の5年後はどうなっていることやら。怖ろしいのは、こうした状況になることは、わかっていながら、今もまともな対策が無いことである。過去にも効果のある策が考えられたことが無い。一貫して場当たり的な補助金の垂れ流しだけが、行われてきた。農水省は深刻な状況に対し、 山田正彦農相は同日の閣議後の記者会見で、農家の収入を安定させるため「早く戸別所得補償制度を本格実施したい」と述べた。戸別補償で乗り切れるような状況であろうか。
繰り返し書いてきたことだが、もう一度書かないではいられない。就農者人口が総人口の2%で平均年齢が65歳を超えた。これは食糧の安定供給という、国家の安全保障から言っても、健全な産業の実態とは言えない。その一人ひとりが50人分の食糧の生産を行わなければならない。団塊の世代が抜けて行く10年後には、平均年齢が、70歳を超え、100万人を割り込んでいるだろう。これはちょうど教員の数くらいに当たる。耕地面積も減少して田園は荒れていることだろう。先日、金沢に行く車窓、豊作の田んぼが続いていた。相当の豊作のようだ。これが喜べない瑞穂の国。山田大臣は平年作と言っていたが、本当だろうか。農水省は補助金の増大を試算していることだろう。政府による米価の価格調整はしないらしい。戸別補償に申し込まない農家は困ればいい。そうすれば来年は、もっと登録が進むと発言している。
車窓から見る田んぼは、何分の一かは転作大豆である。一面の緑が広がっていたりして、驚くような不思議な実りの秋の景色である。戸別補償にこだわるのは、田んぼを止めてもらいたいからだ。減反をしてもらいたいからだ。それはそれで分からないではないが、平均年齢が65.8歳となり、5年前に比べ2.6歳上がった。この数字はいかに若い人の就農が起こらないかを表している。就職がいかに難しくなって、フリーターになろうとも、農業をやろうなどとは考える訳もない。先日、東京都市大学というところの3年生の方が、10人ほど見えた。農業とは縁もゆかりもない人たちだ。農業というものをどう感じたのか。最後に一人ひとり聞かせてもらった。なるほど、伝統産業を見ているような感覚で農業を眺めている。
若い人がやりたくないのは、身体を使う職業。肉体労働者。体力、持久力が無いから、泥が不潔に感じる。農業をやりたい訳がない。国家が裕福になれば、肉体労働は嫌われる。これからの日本人には出来ない職業になるのかもしれない。すでに義務教育の中に農業は無い。現実的には、いくつかの道が想像される。外国人労働者を雇用する農業。極端な工業的農業。企業の海外農場での日本向け生産。そして自給的農業。いずれにしても、日本の農業をどのような形にするか。明確にしたうえで、その過程で戸別補償がどう役立つのか。理想論や選挙用の議論でなく、具体的に、分かりやすく示してほしい。戸別補償がどのように日本の農業を変えて行けると、農水省が考えているのか、その行程の説明が無い。戸別補償が新規就農者つぶしになっている側面など気付いているのだろうか。