水牛飼育法
最初に子供を見つけた映像。圷さんが写した。良く捜したさすがである。
水牛飼育の方法はほとんど出ていない。日本に推計で300頭ぐらいしか居ないだから、そのための本など作られない。しかし、飼ってみると実に良い家畜である。牛よりもおとなしいし、頭が良い。しかも丈夫で病気などまずしない。ワクチンも不要。私のような未経験者でも飼うことが出来た、大型家畜である。
家畜で農業をすると言うことも無くなり、実用的な家畜でもなくなった。水牛農業は生産性で言えば国際競争力は、まるで無い。では何で飼っているのかと言えば、犬や猫を飼っているのに近いのだと思う。それくらいかわいい動物である。あの大きな奴との付き合いは悪くない。のぼたん農園では半分が草地なので、草地管理をして貰っていると言うのが現状である。除草にヤギを使うというのに近い。
水牛に興味を持つ人もわずかではあるが、いるようだ。その人のために、水牛を5年間飼ってきて、把握した水牛飼育法をまとめておこうと思う。すべて体験的な物なので、普遍性があるかは分からないが、情報としては生の物なので、いくらか役立つかもしれない。のぼたん農園に来てくれれば、どなたにも見てもらえるので、水牛に興味を持ってもらいたい。
放牧水牛の出産映像は珍しいと思うので、できるだけ載せようと思っている。ただこういう掲載技術には疎いので、誰にでも見れるように載せられているのかどうか危うい。半分も載せられなかった。5月30日の夜に生まれたと思われる。27日が新月でその前後に生まれると言うことで、25日くらいから兆候があった。落ち着かなくなった。おなかを膨らます呼吸が大きくなった。人を避ける感じもした。
そして私は小田原に出てしまった。31日になって、生まれたというラインが圷さんから入った。それが上の動画である。たぶん写されたときはしばらく経ったときに見える。夜の内に生んだのではないかと思う。前回ののぼたんの時も夜だった。朝行ってみて気づいた。ススキの茂みの中で生んだので、圷さんでなければ見つけられなかったと思う。
圷さんは身が軽くて、素早い。ススキの茂みの中もどんどん入れる。私はもしもを考えてしまい、茂みの中にはなかなか入れない。いつもは呼べば出てくるので、何度も呼んだのだが、出てこない。やはり子供を守りたいという気持ちがあるので、人が近づくと、かえって隠れてしまう。
立ち上がって、お乳を吸っているのでまず大丈夫だと言うことが分かった。のぼたんの生まれたときは立ち上がれず、お乳も飲めなかった。2日後にやっとお乳を飲んででくれた。そのときは親のわかばも人を威嚇はしなかった。今回は元気に生まれて、歩き回っている。気が立っていて親のサクラは頭を振るそうだ。
2日になって石垣に戻り、見に行ったのだが、私には見つけることが出来なかった。3日に3回見に行きやっと、ススキの藪の中にいるのを見つけた。静かにによって行くとサクラも気づいた。するとすぐに藪の外に出て行った。すぐ追いかけると、池に入った。子供も後を突いてすぐに池に入る。池の中には人が来ないので、安全と思っているようだ。生まれてすぐに池で泳げる赤ちゃんというのもすごい。
ヘソの緒が付いている打ちに行けに入れば化膿するかもしれないと福仲先生から注意があったが、生まれた翌日から、池に入っていて、昨日で4日目になる。心配で嶋田さんにも見て貰ったのだが、特に問題はない。ただサクラは少し疲れてしれない。しれない。ヌタバで熟睡していた。触ってやっと目を覚ました。
これから私が書き留めておくことも、少しでも飼う人の参考になればという範囲のことである。まず、私が飼っている水牛はアジア水牛で、河川の周囲や沼の周辺に生息していたものである。今でもそういう野生水牛はインドなどに残っている。インドでは普通の牛が神の使いで、水牛は悪魔だというのだから、不思議な考え方だ。牛肉を食べない代わりに、水牛肉を食べている。水牛にはアフリカ水牛も居るが、これとは別物である。アフリカ水牛は草食動物でありながら、ライオンも恐れるという。
水牛は牛や馬よりも、野生の生活に近い動物である。台湾の陽明山という所に、
戦前日本人の水牛牧場があったという。大嶺牧場と言われたらしい。それが敗戦によって経営者が日本に引き上げることになる。そして、水牛はそのまま放牧地に残され、野生化したらしい。この点はどこまで史実に沿っているかは疑問もある。一応そういう物語が台湾にはある。
家畜だった水牛も、草のある所に放されれば、野生化して子孫を残し、80年も群れをつくり生きているということだ。水牛のそばに大勢の人がピクニックをしている。特に事故があったということでもないようだ。しかし公園に整備される前には水牛に突かれて死んだ人もいたらしい。登山の人が、水牛の生息地に入り込む形だったようだ。
今は遊歩道のように、歩いて良い道には電柱のような棒が立てられている。水牛は自由に通過するのだが、もし水牛が向かってきたらその棒の影に隠れると言うことになる。人間がよほどのことをしない限り、水牛はおとなしい動物で、向かってくるようなことはない。だから、水牛事故は自己責任と言える。
・水牛を驚かしたり、触ったり、からかったりしない。
・写真撮影はフラッシュを使用しない。
・ペットは牛が驚かないようにリードでつなぎ、牛との距離を維持し柵を越えないようにする。
・柵のない歩道や広い場所を歩く場合、少なくとも20mの距離を維持する。
陽明山には以上のような注意書きがある。今度秋に行ってみることにしているので、もう少し様子が分かると思う。ドローン撮影で調べたところ65頭いるということがでている。ということは、草地の面積は32,5ヘクタールはあるということになる。そのくらいあれば、いくら草を食べても草は減らない。しかし現状では公園として15ヘクタールと言うことだ。30頭ぐらいは暮らせる面積。
現在は6頭しかいないということも出ている。どうもネット情報は様々で、目視できた6頭という意味かもしれない。そんなに急激に減少するはずがない。戦前の水牛ではなく、農家がいらなくなった水牛を国立公園になったので、ここに捨てに来たという説もある。本当のところはどこにあるかよくわからない。
何故陽明山の話から書いたかと言えば、それくらい水牛は丈夫な生き物だと言うことである。草だけで生きているし、どこか沢のような場所で水は飲んでいるのだろう。水浴びの出来るヌタバも自分たちで作っているかもしれない。人間が世話などしないでも、健康に生きていられる動物と言うことだ。のぼたん農園では放牧していて、特に世話をしているわけではない。
草はほとんどの種類のものを食べる。草がなくなれば、好きでない、例えば堅いススキでも食べ尽くしてしまう。牧草が生えてくるので、それを食べているが、どんな草でもかまわないと言うことのようだ。ヤギは毒草を食べて死ぬと言うこともあるが、水牛はまずそう言うことがない。だから変な草が牧草地にあっても心配はいらない。
アメリカハマグルマは外来植物で、石垣島では広がって困る植物だ。ヤギや牛は食べないが、水牛は他の草がなくなれば食べる。刈払機で刈り払えば、翌日には食べてしまう。放牧地の管理は必要ではあるが、要点が分かれば、何とかなる範囲だと思う。ススキの藪に関しては日陰になり、風よけにも成るので、少しはあった方が良い。
1頭の放牧地面積は3反歩ぐらいかと思う。牛は1ヘクタール必要とあるが、これは温帯地域のことで、冬に草がなくなる前提である。亜熱帯の石垣では、年5回草は再生する。3反あれば、本土の1ヘクタールに当たるのだろう。一切草を持ち込まなくても水牛は健康に育つ。水牛の糞尿は自然に吸収されて、窒素過多にはならない。
また放牧地には池が必要である。水が溜まりそうな場所に窪地を作ってやると、雨が降ったときにそこに入って怒田場ヌタバにする。泥を身体に擦り付けたいらしい。それで虫を防ぐという。ヌタバを一二年繰り返していると、だんだん水持ちが良くなり、いつも水がある池になる。
池には糞尿をわざわざする。そしてその水を飲む。人間から見れば実に汚いように見えるが、実は強健な胃腸を作る健康法なのだ。水牛は草だけを食べている。その草を反芻して消化する。それは反芻しながら、胃の中で微生物が消化を助けるように発酵をしている。その微生物を増殖するために、また沼の糞尿混じりの水を飲んでしまうのだ。
この不衛生に見える消化法が水牛の野性的な強さで、病気をしにくいのだと思う。また親のお乳を1、2年ぐらいは飲んでいる。子供はかなり大きくなってもお乳を飲む。これも親の免疫力を受け継ぐためと思われる。のぼたんは1年半ぐらいのときに、親のわかばから2ヶ月放した。しかし、わかばが戻ればまたお乳を飲んでいた。予防注射などしたことがないが、病気になったことがない。
飼うためには鼻紐が必要である。鼻の中に穴を通し、その穴に紐を通しておく。これがあれば、水牛を扱うことが出来る。この紐は何故か2,3ヶ月ダメになる。あまりに堅い物では痛くてかわいそうなので、適度な物にしているためもある。そのために時々交換をしなくてはならない。これが出来なければ水牛は飼えない。鼻紐交換は5年目で初めて一人で行えた。
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