小田原農の会の畑 土壌の改善

   

 

 上の写真の畑は舟原ため池上の大豆の会の畑である。今年で3年目になるのではないだろうか。大豆がだいぶ良くなってきた。あと2年すれば、土壌もさらに良くなるはずだ。有機農業の畑は耕作していることが、土壌を改善してゆく農法でなければならない。

 大豆と麦の輪作はその点優れている。大豆を同じ畑で連作しても問題なく収量が上がってゆく。この大豆から麦の輪作を指導してくれたのは、松本の石綿薫さんだ。大豆を連作しても、間に麦を入れることで、よりよくなってゆくという考え方だ。

 ため池上の畑は、山の斜面を削って、段々畑を造成した場所だ。造成は3回に分けて行った。造成の年度によって、良く出来る場所とできない場所がはっきりしていた。造成初年度の場所は全く出来なかった。それが耕作を継続している間に、写真のように改善される。徐々に削った場所と、盛り土した場所の差がなくなっている。

 腐植を増やす努力をする。耕作ごとに堆肥を入れること。これを繰り返している。渡部さんがそのほとんどの作業をしてくれている。有難いことだ。渡部さんは農の会の土壌改善の専門家と言える。農の会の畑の管理を担ってくれている内に、土壌をよく道筋を見つけたようだ。

 渡部さんの耕作法は高畝法だ。大抵の作物を高畝で作る。この高畝が1mにもなることもあるほどだ。多くの場合、そば殻と土壌を混ぜて高くしている。この土壌の状態が良いらしく。大抵の場合一番収量が多くなる。だからみんなが真似をして、最近高畝が目立つ。

 農の会の総生寺裏の畑で、炭素循環農法の試験を行った。4年が経過した。その畑では大豆と麦の輪作を行ってきた。最初に大豆を作った時に、余りの出来の悪さに驚いた。これほど状態の悪い畑は初めてのことだった。そこで、この畑の土壌を炭素循環農法で作り直すことになった。

 二宮で炭素循環農法を長年試みてきた中村さんが農の会のメンバーにいる。その中村さんにお願いして、どのように実験をしてみることにするか決めた。中村さんがトレンチャーを貸してくれて、1反の畑の半分に1m置きに、1メートル半の深さの溝を掘った。

 溝には樹木チップを一杯に詰めた。そしてすぐに麦を作った。そして前作通り何もしない半分とどう違うかを見た。明らかに溝を掘った方が良く出来た。窒素飢餓など起きないことが分かった。そこでもう半分は5m置きに手作業で縦穴を空けた。その結果、翌年には1反全体がだいぶ良くなった。

 そして4年目の今年の大豆は3か所あるどこの大豆畑よりも良いできになった。炭素循環農法の優秀性が実証実験で証明されたと言っていいだろう。樹木チップを大量に入れても、それを分解するために窒素が消費されてしまうという事は起きない。

 このまま順調に行けば、反収200キロの大豆は確実に採れそうである。一般に大豆の収量は慣行農法では150キロ程度である。ここでも有機農法の方が収量が多いいことが証明されたことになる。有機農法は植物の生理にあわせた栽培だから、収量が多くて当然のことだ。収量が少ない有機農法はまだ有機の土壌が出来ていないという事になる。

 品種は小糸在来種である。収量は100キロ程度とされている希少な在来品種だ。とてもおいしい品種なので農の会では長年作り続けている。この品種で200キロ採れれば、最高の出来ではないかと思う。こういうことは有機農業以外ではあり得ないないことである。ぜひ有機農業は手間がかかるかもしれないが、収量は多いという事を常識にしてもらいたい。

 炭素循環農法とは木材のチップを大量に地中に投入する農法である。良く聞く否定論が、入れた木質チップを分解するために窒素を消耗し、畑の土壌が窒素飢餓に陥るのではないかという意見だ。しかし、農の会の実証実験では初年度からそうしたことは起きなかった。

 大豆、小麦を輪作している畑はこのほかにも2か所ある。そこも輪作を継続することで徐々に畑は良くなってきた。ただまだ開墾して3年目の所と、2年目の所なのでまだまだ土が充分とは言えないが、それでも少しづつ良くなってきていて反収150キロぐらいは行くかもしれない。

 大豆の会はとても熱心に栽培しているから、年々畑が良くなってきている。小麦と大豆の残滓を畑に漉き込んで腐食が増える。麦を作ることでだんだん耕土が深くなってきている。土壌が深くなり大豆も良くなるという結果だと思われる。土の柔らかさが年々際立っている。
 
 有機農業は土壌を良くしてゆく農業である。土壌が良くなれば、病害虫も減り、農薬を使用しないでも作りやすくなってゆく。当然畑の周辺の環境も重要で、自然の豊かさが畑の作りやすさに繋がってゆく。その優秀な農法は収量においても慣行農法よりも多い。しかも永続性がある。

 農の会の農地はすべてお借りしたものだ。慣行農法で長年やっていた畑を借りることになる。畑の土壌は大抵の場合あまり良くない。お借りして耕作を続けている間に、段々に改善されてゆく。大豆畑のように大々的な改善を行わなくとも、普通に耕作を繰り返している間に、土が良くなってくる。

 それは他の畑でも同じことで、継続していることで土壌が良くなってきて、だんだん周辺の農家よりも収量が上がるようになる。有機農業塾の畑も随分土壌が良くなってきた。緑肥を上手くバンカープランツとして栽培して漉き込んでいる。

 有機農業は最初の5年かなり手間がかかる。しかし、毎年の循環の形が出来上がり、継続している間に徐々にやりやすくなる。腐植を加えることを心掛けている。今はそば殻が安くもらえるので、これを大量に入れているところが多いい。

 畑に1.5mほどの穴を掘りその断面を観察して、その畑の土壌の成り立ちをまず知ることから始まる。土壌の堅くなるところがどのあたりにあるかが重要になる。石綿薫さんのように、掘らなくても、畑の作物の状態で、土壌の成り立ちが見える人はめったにいない。

 大抵の場合は土壌成分に問題があるというより、土壌の物理性に問題があることが多いい。土壌分析をする必要もあるが、特別に何か資材を入れることをしないでも、落ち葉堆肥を入れて耕作を継続していれば、だんだん土壌のバランスは良くなってくる。

 5年耕作していったん土壌が出来上がれば、有機農業でもそれほどの労力は必要なくなる。大きな土壌の改善方法には炭素循環農法は良いようだ。縦の溝を掘り、チップを大量に入れることで、畑の土壌の浸透性が一気に解決する。

 

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