水草緑肥の経過観察

   


 写真では分かりにくいのだが、ひこばえが育っている水のある1番田んぼの水面は、アカウキクサで覆われている。この状態であれば、肥料としてもかなり期待できる。草を抑える効果はかなりのものではないかと期待できる。水草緑肥構想が上手くゆきそうな方向が出てきた。

 アカウキクサを継続的に大量に発生させることが出来れば、肥料と腐食についてはかなり解決しそうである。アカウキクサは石垣でも急速に消えつつある絶滅危惧種である。この状況でもアカウキクサを雑草と考えて、除草剤で除草している。

 アカウキクサで本当に困ったことなど無いはずである。ともかく余り観察もせずに、除草剤である。これほど魅力的な草を何故そんなことをするのか私に理解できない。抑草効果の高いアカウキクサを除去して、改めてコナギやヒエを除草するために又除草剤をまく。それがJAの指導と言うことはなんとなく分かる。2重に利益が出る。

 アカウキクサは石垣島の自給農業の確立の第一歩である。のぼたん農園ではできる限り持ち込まず、最小限を持ち出す循環農法の確立をしなくてはならない。
1,当初から考えてきた、「水草緑肥農法」
2,スマトラ島のサリブ農法、山岡先生の「ひこばえ農法」
3,光合成細菌の増殖

 この3つの方法を確立させることが出来れば、継続可能な自給農業が確立できる。まだ始めて、8ヶ月というところで、「水草緑肥法」は展望が見えてきたことになる。提供してくれた下地さんの御陰である。農法が完成すれば、日本産の純粋種のアカウキクサを全国に提供できるようになるかも知れない。

 水草が水面を覆うことで、物理的に草を抑える効果があると言うことは誰の目にも明らかなことだ。光が田んぼの地面まで届かなければ、雑草の発芽はかなり抑えられることになる。石垣島であれば、年間を通してアカウキクサは存在する。水面を覆い草が生えない状態を常に作り続けることが可能となる。

 昔から日本のイネ作りでは、ウキクサを雑草として考える人と、ウキクサを草押さえに使おうという人の二通りあった。ウキクサがあると稲が分ゲツをしない。水が冷たくなると言う当たりを問題にしたのだろう。ウキクサが風にふき寄せられ、稲苗が倒されると言うことを嫌った。

 今までの体験ではそのようなことはない。5葉期の大苗で行うからだと思う。稲はウキクサに水面を覆われていたとしても分ゲツは変わらない。稲は根元に日が当たるから分ゲツをするというような性質ではない。分ゲツへの影響は田植えした土壌の含有肥料分が大きい。

 水温が下がると言うことはあるだろうが、石垣島では問題になるとは思えない。のぼたん農園では直播き栽培をするつもりだ。11月に播種することになる。発芽して、苗が完成するまでの1ヶ月ぐらいは水草の問題はないとみている。まだアカウキクサも広がらない時期である。

 年を明けた辺りから、アカウキクサも出現してくるのではないだろうか。2月3月と水面を覆うだろうと想像される。12月1月がコロガシを行う時期になる。コロガシながら、土壌にウキクサを漉き込んで行くことが良い。5月頃が稲刈りになるだろう。稲刈りの時期も田んぼは完全には水を引かないでやろうと考えている。手刈りだから可能だ。

 水草緑肥農法に関しては、通年通水で可能となる。アカウキクサを利用した緑肥による窒素固定である。これは合鴨農法で展開されたアゾラ農法から考えたものである。栄養価の高いアゾラを合鴨に食べさせ、それを肥料にするという考えである。アゾラは窒素を強力に固定する植物である。

 アゾラ自体が窒素を固定するのではなく、アゾラに共生する藻の類が窒素を固定するらしい。その仕組みは私にはよく分からない。しかし、合鴨農法の方から、アゾラがある田んぼでは肥料がいらなくなったという話は聞いた。鴨の糞の肥料分が大きいのだろう。

 アゾラは禁止された特定外来植物なので使うことが出来ない。石垣島には存在する、アカウキクサを使うことにした。石垣島にはアゾラが存在しないので、アゾらではなくアカウキクサである事は間違いがない。アゾラより窒素固定能力句は低いとされているが、それなりには窒素固定するはずだ。

 アカウキクサの増殖ができる方法はすこしではあるが見えてきた。アカウキクサは浮遊しているというよりはどこかにいくらかとりついて増殖をする。ある程度窒素分のある水の方が良いようだ。化学肥料を入れれば、アカウキクサはすぐに増えるそうだ。それでは意味がない。

 アカウキクサは水漏れからでも他の場所に広がるところを見るとかなり細かな胞子のような物で増殖をしているようだ。増殖させてコロガシで土に戻してゆく。こうしてゆけば、収穫による持ち出し分をアカウキクサが補充してくれるのではないかと思える。

 アカウキクサは水がない田んぼでも完全には枯れてしまうことはない。田んぼに湿り気があれば、むしろ増殖をするようだ。田んぼ干したからと言ってすぐに枯れてしまうような物ではない。田んぼの水が減り、地面と接触した状態はアカウキクサにとっては良い状態なのかも知れない。

 アカウキクサだけでは肥料分が足りないと思われる。溜め池にミズオオバコを繁茂させる。ミズオオバコが世代を繰返しながら肥料となり、田んぼには肥料分を含んだ水が入る。ミズワラビもあるので、二つの植物で溜め池は水が見えない状態である。かなり富栄養化した水ではないだろうか。

 この溜め池に水牛の糞を入れ込むというのも試みてみたい。水牛の糞が徐々に入水と共に、田んぼに入って行く。これが肥料になることは間違いがない。いずれにしても、稲の様子を見ながら、来年は堆肥を購入しないで、やりたいと考えている。

 藁や籾殻はそのまま田んぼに戻して行く。石垣島の気候では水面に戻した藁は稲に悪い影響がないまま、一月ほどで姿を消して行く。分解が早い。籾殻も同様である。クン炭を作り戻すようにすればさらに良いと思っている。さらに良いのは落ち葉を集めて入れることだろう。

 これも山にかなり積もっている。今は落ち葉を集めるような人も少ないようだ。ダンプが来たら、落ち葉集めもかなり楽になる。11月に代掻きをする前に落ち葉集めもしたいものだ。落ち葉をとることで山も良くなるはずだ。

 光合成細菌に増殖をしたい。水が淀みがちなので、光合成細菌を入れて、水を活性化することが出来れば、田んぼの水環境が良くなるはずだ。光合成細菌は今年もやってみたのだが、今のところ効果があると言うほどでもなかった。2畝の田んぼに月に1回1リットルぐらい入れる必要がある。

 出来れば溜め池当たりで、のぼたん農園に生存している光合成細菌を探してみたいと考えているが、これは出来るかどうか分からない。やってみる価値はある。石垣の気候に適合した光合成細菌があるはずだ。光合成細菌もEM菌騒動で偏見もあると思うので、要注意である。

 そしてサリブ農法と水草緑肥である。これはサリブ農法が通年通水と言うことだから、互いに特徴を生かせる物になるだろう。現在のひこばえ農法は水不足になり、ちょっと良くない状況だ。それでも、普通の2期作よりは収量が多いように見える。これで水があれば、普通に1期作並に取れたかもしれない。

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