石垣島暮らしの可能性
石垣暮らしも2年が経つ。石垣島で暮らすことを決めたことは良い判断だった。日々その充実感を増している。今は稲刈りで小田原で生活をしている。コロナとともに暮らしてゆかなかなければならない現状である。
自粛しなければならない老人の訳だが、コロナを最大限防ぎながらの小田原生活である。石垣島に戻ったら、2週間人には合わないのでご心配なく。コロナの湯にも行かない小田原暮らしである。好きなサウナにも行けない小田原暮らしである。
久しぶりに小田原で農作業をした。石垣島を離れて改めて俯瞰的に、綜合的に、石垣島暮らしを考えている。私の石垣島暮らしはただ絵を描くだけの暮らしだ。絵を描く場所を求めて石垣島に越した。その判断は実に正しかったという事になる。
丹沢山中に引越して、油彩画を止めて水彩画を描くようになった。人間は場所を変えることで変わることが出来る。石垣に越すことは最後の選択だと考えていた。自分の絵を実現するために必要な選択であった。絵に専念する只管打画という事。絵以外にやることのない状況の選択であった。
自分というものにだけ向かい合うための石垣島であった。70歳になればそれも許されることではないかと考えた。若い頃から人から見ればいい加減な絵描き暮らしだったので、他人の目は案外に気にして来た。そうでもないか。自分なりに気にはしてきた。
40歳を前にして東京から山北での山の中に自給生活の探求の為に越した時とはかなり違う。そして小田原生活を経て今は石垣島暮らしであるが、老人が快適に暮らすためには石垣島は最善の場所ではないだろうか。観光で活性化している島だからだと思う。
石垣島暮らしを満喫できているのは小田原の農作業生活があるからだと思う。これがないのではたぶん我慢できない。小田原には同じ志の仲間がいる。本気の農作業を続けている。今回の稲刈りでも、専業農家の人でもやれないような厳しい農作業を成し遂げている。これほど大変な農作業ではあるが、実に充実していて楽しい。
自給農業ではあるが、それは本気の農業である。食べるものを自給するという農業を行うものとして、販売農家以上の本気が背景にはある。もしその真剣な生き方を捨てれば、趣味の楽しい農業で終わる。それでは石垣からくる甲斐がない。趣味の自給から入るのは良いが、その先には生きるという事の意味と直結する農作業まで行けると、生き方が変わる。
自分の絵を描くためには、小田原に来て農作業をさせてもらわなければならないと考えている。農作業は鈍った身体を覚醒させてくれる。小田原の農作業仲間は、確実に成長している。成長してるとは農業力が向上しているという意味。良い関係が構築されているからだろう。
私が離れた後のあしがら農の会は、一段階上のステージに上がったと見える。多様になったという事である。前以上に違うものを受け入れることが出来るようになっている。この受容能力が他の組織にはない可能性である。
以前からそういう事を考えてはいたのだが、どうしてもある種の人の組織になってゆく傾向があった。それは作った私が存在する限界かと考えていた。今のあしがら農の会は特殊な人の集まりではない。これからの時代を生きる人たちの組織になっている。これは画期的なことだし、希望である。もし、あしがら農の会のような組織が、日本全体に広がれば日本人も捨てたもんじゃないと思う。
コロナの時代になり、都会を離れるという人も多いなかで、石垣島暮らしの現時点の報告は参考にもなる人もいるのかと思う。私は70歳を前にして石垣島に引っ越した。石垣島ではそういう同類の人に時々会う。平塚から来たというご夫婦もいた。少なくないのだと思う。確かに行動範囲が似ているので出会う機会も多いのだと思うが。
石垣島暮らしには何の問題もない。良く田舎暮らしの問題点などと言われるが、石垣島は観光地であるために、全く田舎ではない。だから田舎らしららしいのどかなというようなものを求める人には不向きである。何しろ私自身のことを言えば、小田原より便利なところを探して石垣島になったという位だ。
歩いてすべて暮らしが成り立つという事が引っ越し先の条件だった。私は石垣島で田んぼの絵が描ければそれ以外はどうでも良かったのだから、他の人には参考にはならない話もあるのだと思う。都会のように多様なレストランがある。ライブハウスは沢山あってよいコンサートがある。
高級なリゾートもあれば、多種多様な自然を楽しむイベントが開催される。海の好きな人なら釣りやシュノーケリングで最高だろう。自然観察ツアーもなかなかのものがある。野鳥観察は施設があるほど充実している。
地域社会からは八重山の歴史ある祭りに加えてもらえる。地域の自治会もほど良い関係を意識して取ってくれる。ご近所づきあいが難しいという事は全くない。ごみは戸別収集。生協やスーパーの宅配もあり、家から出ないでも配送が充実している。美味しいレストランからの宅配も取れる。
物価については特別高いとは感じない。生活費は小田原と違わないだろう。これは以前テレビ番組で一年間石垣島で暮らす、ビンボーガールという番組があったが、暮らし方によっては結構自給的な生活も可能である。畑も田んぼも借りられない訳ではない。
引っ越しは家族の問題である。全員の了解が必要なことだ。我が家の場合は奥さんが沖縄に越したいという妄想を高めてしまい。最初に一人で越したことが始まりである。その意味でも我が家はあまり一般例とはならないだろう。実際の所家族の事情には、一般例などあり得ないと思う。それぞれの家族が特殊例なのだ。
あまりないのだが、問題点を考えてみると、熱さと湿気である。夜温が25度を下がらない熱帯夜が3ヵ月続く。冷房がなければ、年寄りにはきついと思う。路上寝が続出する意味が分かる。外で寝るのがちょうどよいような夜なのだ。
スーパー台風が怖いがまだこの2年台風を経験はしていない。ハブやら毒虫が怖いと言っても、特に見たことがない。何しろ蚊に刺されたことがない。あっ、そういう傍から蚊がきた。小田原は蚊が多い。いつも外で絵を描いているのだが、何故か蚊に刺されることも、ハブを見ることもない。病院は心配していたが、眼科医は小田原より設備が良い。
ガソリンが小田原より高い。リッター136円である。あった、問題点があった。行政が民主主義を理解していないことだ。これは辛い。自衛隊誘致のやり口はひどすぎる。何しろ住民の3分の一が署名して要求した住民投票が実現されない。