アメリカの謝罪
長崎、広島の原爆投下の是非に踏み込み謝罪することを78・3%が「求めない」と回答した。「求める」とした人は15・7%にとどまった。
日本人らしい態度だと思う。未来志向なのだと思う。アメリカを恨むよりは、むしろ日本政府が愚かな戦争に突き進み、降伏を決断できなかった事を、日本人として受け止めるしかない。戦争に至った原因は、日本も悪かった。また、日本を戦争に追い込んだ、欧米の帝国主義国家も悪かった。そして、原爆が投下され、戦争が終わった。その原爆投下に対してアメリカの大統領が謝罪を必要とするとは思わない。この考え方が、たぶん朝鮮人や中国人には理解しにくい、日本人的信条のように考える。日本人として被害者としての謝罪は要求しないからと言って、従軍慰安婦問題にこだわり続ける、隣国の人たちをおかしいとは考えない方が良い。有利になるのであれば、あらゆることを外交交渉に持ち出すというのが、一般的な国家の在り方なのだ。普通の国の普通の態度だと考えた方が良い。過去を忘れて、前向きに成れるところは日本文化の特色である。
アメリカが、鬼畜だった国が、最も信頼できる同盟国という事になった原因の過半は、日本人的なそうした信条にある。悪く言えば、お上ごもっともの性格である。アメリカは占領国である。世界中でアメリカ軍の進出は、善意と正義に基づいていても良く思われていない。結局はアメリカの進出を、アメリカの権益を守るためだ。と受け止められる。アメリカは日本で自治会組織から、生活改善クラブまで、国の隅々まで変えようとした。平和憲法まで受け入れ作ったわけだ。日本はアメリカの良い側面の理想主義を唯一受け入れ学んだ国ではなかろうか。たぶん、日本の文化の受容力の大きさを意味しているのだと思う。江戸時代の西洋絵画の受け入れ方にそうした日本人の、文化力の性格が表れている。日本人が、明治期にいち早く欧米化したのもその受容力にある。これが自分の大切なものをすぐ忘れてしまう弱点でもあるのだが。
直接の謝罪がなくとも、その思いは理解できる。謝罪によって生むものがない。これからの互いのことを考えた方が有益であると、受け入れられるのは、過去を振り捨てられる日本人の未来志向の可能性なのだと思う。だからこそ、沖縄の米軍基地の撤去を行うことが未来志向である。原爆の拡散を防ぎ、核軍縮を推進することが、未来志向である。オバマアメリカ大統領の広島訪問をその機会にすることに、日本政府も全力で傾注すべきだ。オバマ大統領の外交政策を弱腰であるというような観点から、批判する人がいるが、大きな間違いである。世界の格差が拡大し、貧困が深刻な状況になっている。テロが起こる背景は広がっている。世界の富裕層への富の偏在が、末期的な資本主義の様相を示し始めているのだ。守銭奴たちは国すらないがしろにしている。
暴力主義が世界に広がり始めているとみなければならない。その暴力主義に対して、武力をもって対抗するという方向は、人類の滅亡の道と考えなければならない。世界に対して平和主義の憲法を持つ日本の出番である。日本政府はオバマ氏の広島訪問の機会に、日本の将来の原爆の保有を明確に否定し、核軍縮を主導的に進めてゆくことを広島平和宣言として出す必要がある。武力による国際紛争の解決を日本は行わない。そうした憲法の国であるという事を、世界にアピールする機会にしなければならない。サミットでは国家という枠組みと、世界企業の関係を整理し直す必要がある。能力主義による競争から、共存の世界への転換の機会にしてもらいたい。