WBCの5度の日韓戦
素晴しい野球の試合だった。高いレベルの本気のスポーツは、類希な魅力を発することを教えられる。韓国は強かった。5回戦い、日本の3勝2敗だったが、優勝戦では、かろうじて韓国の強さを発揮させなかった。日本チームの勝負術で、日本に勝利が転げ込んだのだと思う。たかがスポーツ、されどスポーツ。4日経ってもまだ、あの勝負の余韻が残っている。野球は実に複雑なゲームだ。ルールの筆記試験をやると、プロ野球の選手でも、赤点がいるそうだ。我々団塊世代は野球で育ったから、この複雑なスポーツを何とか味わうことが出来る。オリンピックから外れたことも、このルールでは仕方がない。このゲームを急に理解して、強くなれと言っても無理。フランスのコーチに元阪神の監督吉田氏が5年ほど出かけた。しかし、根づいて強くなったという訳でもない。困るのはその複雑さに、野球独特のおもしろさがある。オランダがヨーロッパでは強いようだが、柔道でヘーシンクが東京五輪で優勝したことから、国際化した。オランダは古い付き合いがある国。
韓国の強さは、さすがオリンピック金メダル国。パーワー、体格で日本を圧倒していた。しかし、野球が体力勝負なら、キューバ、アメリカが圧倒する。なかなかの頭脳ゲームなのだ。日本には、高校野球という独特の、野球術が存在する。ワンアウトでもバントで送る。満塁なのに、敬遠する。こう言う独特の勝つ野球が出来上がった。非力で小柄でもノーヒットノーランをやった投手もいた。あえて野球と書いているのは、ベースボールではないという事なのだ。今のプロ野球は、ベースボールに近くなった。それでも、あえて野球がベースボールに勝利したと言いたい。野球のテレビ観戦では、見るもの全てが野球解説者と化す。「ここは、外郭低めのスライダー。」「いや、インハイのシュートだ。」「速球ではずす方がいい。」全てにそれなりの根拠がある。打者の今までのスタイル。性格。分析。その上でのその場面、状況判断。一筋縄ではいかない。野球嫌いには信じがたい所。
以前、サッカーではドーハの悲劇と言われた。最後の最後で、ワールドカップに日本チームが出場を逃したゲームだ。あの時「食べ物が違う」といった解説者がいた。サッカーはまだまだ日本人のゲームになるには、時間が必要だ。韓国との優勝戦、最後の最後でイチロー選手のヒットで勝負がついた。あそこで何故、敬遠しなかったか。色々の意見があるが、これが「食べ物が違う」と言う事だと思う。以前、日本でも敬遠は卑怯だと言われた。監督に指示されて、マウンドを降りたピッチャーもいた。プライドが傷付いたというのだ。今そんなことを言う選手は日本にはいない。侍ジャパンと言いながら、武士道に反するようなものだ。韓国にはまだそういう空気がある。試合中盤、青木選手に対し、2ボールになったら、キャッチャーが立ち上がり、敬遠をした。そのとき、ドジャーススタジアムを埋め尽くした。韓国人ファーンはすごいブーイングをした。映画の大島渚監督は野球をアメリカの与えた、戦後民主主義とオオバーラップさせていた。
10回2アウト、ランナー2塁3塁。イチローを迎え、敬遠が普通。それを先ず、勝負をして、カウントが悪くなったら、敬遠と考えた。日本ではむしろ敬遠は明確にやったほうが良いとされている。一応は勝負をするというのが、韓国の考えかた。2ストライク1ボールとなる。次々に、ストライクで勝負してくる。イチロー、ファールでカットして好球を待つ。魔がさしたように、真ん中に玉が流れる。イチローがセンターに向けて糸引くクリンヒット。9回の裏、韓国は主力二人に代走を送っている。とくにキャッチャーの代走は重大事。投手も8回から、抑えの投手を投入してしまった。戦力を使いきり長引けば、勝機は減ってゆく。もしイチローを敬遠すれば、中島もすごい打者である。日本選手は選球眼が良い。押し出しの四球の不安も生じる。そうした迷い。そこに加え韓国に残る、日本人と勝負を避けることは、潔くないと言う気持ち。あのブーイング。全てが集約して、勝負に行く。悪くないと思う。見事だと思う。勝って奢らず、負けて潔く。いい友達になろう。
昨日の自給作業:種籾浸種等1時間 累計時間:12時間