労働組合の保守化

   



 連合に女性委員長が生まれて話題になっていたが、その後連合は保守化を露わにしてきている。連合の意見が変わったというより、女性委員長で目立ったと言うことだろう。高市氏でも、桜井氏でも、稲田氏でも、水田氏でも、極右発言は右翼のアイドルになるための戦略である。忖度してあえて目立つように発言をしてしまうのだろう。

 労働組合の連合が、自民党にいよいよ接近をしている。しかも明確に選挙における共産党排除である。ある意味大企業労働者の本音が出てきたと言うことになる。選ばれた人間は上層の階層の人間であり、下層の貧困層と一緒にされたくないという意思表明だろう。それが労働組合間の闘争でもある。労働組合の差別主義の登場である。

 労働組合内部には良質な社会運動意識の人もいる。理念が高い人だ。その理念について行けない労働者が増加して、どんどん組織される労働者が減少している。それは社会党以来労働組合の敗北の歴史が関係している。その社会党はもう消えかかっている。

 大企業の労働者は、選ばれた人の意識がある。非正規労働者と連帯しているという意識を失っているだろう。だから組合員が減少することにもなる。連合は反原発の姿勢をとれないでいる。労働者意識の無い労働者の登場。これが問題である。問題ではあるが、現実社会の状況から来る必然であるかもしれない。人のことどころではない、弱いものを切り捨てる労働組合連合になりかねない。

 これはかなり前からの傾向として出てきていた。女性委員長になり反共産党の本音が出てきたと言うことなのだろう。昔から労働組合内部や対立労働組合との路線争いはすさましものがあった。労働組合なのか企業経営者なのか分からないような発言が労働組合から出てくる傾向が生まれていた。その一線を突破してしまったのが女性委員長である。

 これは経営者側にすれば、望むべき傾向と言うことになるのだろう。女性で受けを狙う人はつい相手の気に入りそうなことから発言する。考えていても目立つ場面では口には出さない人の方が男には多い傾向がある。配慮があると言えるが、優柔不断で度胸が無いとも言える。

 政府が企業に対して賃上げを要求している状況。労働組合と政府が同じ目的を持って企業に対抗しているのが現状。当然、連合も野党支持とは言い切れなくなっている。特に共産党との選挙協力は出来ないと言う考えも出てくる来ることは避けられない。こうなれば非正規労働者や外国人労働者どころではなくなる。

 もう、野党は腹をくくるべきだ。労働者の中に、階級が生まれたと言うことだろう。資本主義の当然の成り行きである。今後さらに深刻になる。非正規雇用の労働者と大企業の正規の社員が同じ考えの訳がない。

 さらに言えば、肉体労働をしている外国人労働者と知能労働の労働者とも、社会的意識の世界が距離が決定的と言えるくらい大きくなっているのだろう。違うという前提で、どのように労働者として自覚が持てるかでは無いか。建前的に同党労働同一賃金では難しくなっている。

 格差社会の問題であると共に、人間というものの問題でもある。競争主義を克服できない者は、敗者を見て勝利したことを実感している。本来人間に勝者も敗者も無い。それぞれが充分に生きれば良いだけのことだ。そう考えてしまうと、競争主義者は努力が出来ないのだろう。そんな努力の仕方が人芸西を滅ぼしてゆく。

 大学生の頃、大学学部長だった教授が一労働者としてデモに参加しているのを見てそういう人も居るのだと思った。2022年の今の時代に学術会議の会員のかたで労働者としてデモに参加する人は何人くらい居るものだろうか。一労働者であると言う意識を持つ学術会議会員の人が一人も居なければ日本は終わるのだろう。

 その辺を突いたのが、スガ氏学術会議任命拒否なのだろう。スガ氏は任命を拒否して押し通したが、そういう悪辣な人間操作で己の身を滅ぼした。人事で人を操れると考える人間のいやらしさが、二階氏の幹事長すげ替えで自分の首もとんだ。

 大企業で働く人のなかには、自民党支持者も多いに違いない。組合員でいるという意味を感じてない人も増えている。せいぜい組合はより高い給与を貰うために過ぎない。労働者のひとりとして、労働者全体の権利を守るために組合員でいるという意識は薄いだろう。自分と肉体労働者とは住む世界が違うくらいに考えている人も居るにちがいない。

 こういう意識の企業労働者の労働組合に活動基盤を置く政党というものを考え直す必要があるのだろう。野党各党は共産党と共闘する立憲民主党を連合は支持できないという意味をもう一度、新しい枠組みを考えてみる必要がある。資本主義経済の終末的現状を考えてみれば、共産主義経済は対立し否定すれば良いだけではない。

 政治は理想主義でない世界。特に労働組合は賃上げ労組で、理想社会の実現のための組織では無くなっている。本来労働組合は労働者の権利を守るだけでは無く、社会が労働者主導のものになるための、労働者の連合なのだろう。

 連合のホームページを見ると、以下の言葉が掲げられている。
連合がめざす社会は、働くことに最も重要な価値を置き、誰もが公正な労働条件のもと、多様な働き方を通じて社会に参加でき、社会的・経済的に自立することを軸とし、それを相互に支え合い、自己実現に挑戦できるセーフティネットが組み込まれている活力あふれる参加型社会であり、加えて、「持続可能性」と「包摂」を基底に置き、年齢や性、国籍の違い、障がいの有無などにかかわらず多様性を受け入れ、互いに認め支え合い、誰一人取り残されることのない社会です。

 この文章を読んで連合の内情が見える。建前論であるために抽象的、観念的な主張である。分りやすく次の社会の姿を書くと弊害があるのだ。連合の求める社会の具体的な形が読み取れない。羅列的で、網羅的な文章だ。そこ結果何を重要としているかが読み取れない。

 憲法論議を連合では行っているのだろうか。連合は自民党の細田氏を呼んで、憲法論議を野党をふくめ行うように要請している。憲法論議の前提として連合は日本の平和憲法をどのように論議しているのかを聞きたいものだ。

 憲法論議の前提として、憲法裁判所の必要性について連合はどう考えているのだろうか。これだけ拡大解釈されている現状をどう見ているのか。見解はあるのだろうか。目指す社会のための憲法である。労働組合こそ、まず日本国憲法をどう読んでいるかが重要だと思う。

 

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