中国と英国のTPP加盟
2025/04/24

中国経済の予測は様々である。特にトランプの中国への経済戦争がどう、仕掛けられて行くのかが、これからの世界経済に大きく影響することは、確かなことだ。大まかに言えば、最初アメリカが押し勝つだろうが、その後中国が押し戻し、アメリカは大恐慌の引き金に成るという予測をしている。
中国のことは中学生の時から学び続けてきた。父が中国に7年いたことで、中国の話をよく聞かせてもらい、中国に興味を持った。父は柳田国男の弟子で民俗学をやっていたので、その視点から中国を見たと話していた。中国も話せたので、中国人の間に入るようにしたといっていた。
中国人をいつも高く評価していた。中国の家族主義についてよく話していた。国家と一族の独特の関係を教えてくれた。私も中国には何回か行った。そして、自分なりに自然養鶏家の視点で、中国の30年前20年前の高度成長に入り変化してゆく姿を見てきた。
中国は新興国家ではないと言うこと。文化の深い大国と言うこと。その中国が、日本以上の急激な経済成長を続け、世界第2位の経済大国になった。中国の経済成長は中国に30年前に行った時に予測した。ブログにも書いてきたことだ。優秀な中国人があらゆる分野で精一杯努力している姿を見た。
30年前には中国の高度成長を予測をしている人は少なかった。その後日本は予測も出来ない長期停滞に入った。コンピュター革命に遅れた国になり、先進国ではなくなってしまった。一方中国は国家資本主義を進め、新規産業を立ち上げて、アメリカに迫り追い越してしまう勢いである。
日本が経済成長を続けている頃、日本に対する風当たりが、なんとなく白人社会の中に広がっていった。それは今起きている中国の急速な経済拡大に対しても同じで、白人社会はアジア人種が世界経済を支配して行くことに、不安を抱いている気がしている。
日本人は自分たちが白人から距離を置かれていることを忘れているが、白人の根には、アジア人種の経済成長への恐怖感が共通に存在するように思う。それはフランスに居た頃感じていたことだ。このままでは、白人が世界をリードしてきた時代が終わるという、心理的な不安があるような気がする。
それがトランプの登場であり、ヨーロッパの極右勢力の台頭のような気がする。これから米中経済戦争の激化が始まるだろう。アメリカは関税を外国に対して一律10%かける方針だ。中国にはさらに高い率の関税をかけると思われる。気に入らない国は関税で脅かして行く馬鹿げた政策。
確かに一時的にはアメリカ経済が優位に展開することだろう。当然のことだが反アメリカの動きは世界に出現し広がるだろう。アメリカは孤立するはずだ。さすがのアメリカに隷属した国日本も、アメリカと距離を置かざるえないことが様々出てくる。
そして、最も苦しくなる中国と連携する動きが出てくる可能性が高い。もし日本が中国と連携できないとすれば、日本は中堅国どころか、貧困国になって行かざる得ないことになる。さすがのアメリカ依存国日本も、経済的苦境から、アメリカと距離を取ることなる。
それは意外に早く、今年中には起こる可能性がある。アメリカと距離を取り中国との関係を模索することになる。政府はアメリカの配下のような人間が多いから、動きは鈍いだろうが、経済は中国との関係を模索するはずだ。中国も反日を改めざる得なくなる。
一方でTPP(環太平洋経済連携協定)に昨年末、英国が加わった。2018年の発足以来、初めての拡大である。12カ国体制となった。今年には協定見直しに向けた取りまとめを控えている。TPPは世界で保護主義的な動きが強まるなか、先端技術に対応した高い基準の通商ルールのけん引を目指すものに変って来ている。
TPPはアメリカの脱退によって、アメリカの経済支配の意味合いをなくした。中堅国間の自由貿易という目標に、絞られてきた。EUを抜けた英国が、加わることで、環太平洋の枠を越えたことになる。世界において一国主義が強まる中、日本の未来の構想に、重要な枠組みになって来ている。
英国の加入で12カ国体制となり、国内総生産の合計が世界全体の約15%を占める経済圏になる。ここに、中国、韓国、台湾の加入が起これば、世界の経済状況は変る。日本にとってTPPが重要な目標になるだろう。中堅国の経済の展望は自由貿易になる。大国の圧力に対校するための連携である。
米国は17年にTPPから離脱した。自由貿易に否定的なトランプ次期大統領の就任。中国はアメリカと対抗して行く上で、TPPの加盟を目指すことになる。中国が世界の貿易ルールに従う国になる良い機会だ。世界の保護主義傾斜を警戒する中堅国が開放路線を進める枠組みを維持する意味は、これから極めて重要になる。
TPPは貿易自由化を図るため、関税撤廃や削減のほか、投資ルールの透明化を進める仕組みだ。英国と経済連携協定を締結済みの日本にとっては、新たに関税が撤廃される。こうした弱者にも平等な自由貿易をアメリカは嫌い抜けたのだ。中国はその独善的経済体制を変えて、TPPへの加盟を目指すことが、重要な選択になる。
英国の加盟により、TPP加盟国の貿易総額は、8兆7千億ドル、人口は5億8千万人規模に膨らむ。ここに中国、韓国、台湾が加われば、アメリカと十分に対抗できる、あるいは凌駕する経済圏になるはずだ。それがアメリカの一国主義に対抗し、中国の覇権主義を正して行く可能性になる。
この30年間の間に、世界の生産力は飛躍的に拡大し、先進国と新興国の経済格差は縮小した。先進国経済の低迷の後、経済の重心移動はより明らかに新興国に移る。特に製造業企業の生産拠点の海外移転によって、アメリカの労働者の不満が高まったことが、一国主義を生み出している。
世界の格差拡大は、経済のための移民の増加により、人種、文化等による分断を生み出している。経済グローバル化等による経済社会の急激な変化から取り残された人々、 こうした社会構造の変化に弱い階層の人々が、国家の保護を求め、経済だけの一国主義を生んだ。
トランプ政権の自国第一主義は先進国のリーダーシップが弱まることを意味している。こ うした状況下で、中国、台湾、韓国の加わるTPPの推進によって、多国間主義を如何に維持し、国際協調を進めていくは重要な、日本の役割で有り、課題に成るのではないだろうか。
世界第一位と第二位の経済大国同士、また日本も巻き込んだ米中貿易戦争はこれから深刻化するだろう。米国は、中国の不公正な貿易慣行を主張し、自らが不公正な関税障壁を作ろうとしている。関税の引上げによる圧力を高めて、中国との貿易交渉に臨んでいるが、成功する見込みは少ない。
米中貿易戦争による経済への悪影響はすでに現実化しており、波及的に様々な領域で、日本の輸出にも影響を及ぼしている。これから世界経済の減速につながって行くに違いない、米中貿易戦争への対処は、日本外交にとっても喫緊の課題である。アメリカから日本が抜け出す良い機会にしなければ成らない。
中国がこの局面を打開するには、つまるところ中国自身の国内構造改革を進めること以外にない。 覇権主義をあらゆる側面で捨てることだ。国家資本主義から市場経済への移行の推進、外国 企業が中国で事業を拡大するのに望ましい環境、安心して中国に投資できる環境を作ることである。
中国の対外経済政策に関しては、OECDで規定されているような、貿易のルールに則った運用が重 要となる。「一帯一路」構想については、建設的に見れば、「一帯一路」沿線の新興経済のイ ンフラ整備と連結性強化を支援し、貿易投資の活性化を通じて、域内経済の成長を高める自由貿易の方向で進めるべきだ。