完熟柿健康法

小田原で渡部さんから、大きな段ボール箱一杯の柿をいただいた。毎日食べている。すこぶる調子が良い。毎日3こは食べている。この柿は小田原に住み始めた頃植えたものだ。富裕柿もあるし、百め柿も植えた。柿の木があるのが昔からの農家だと言う思いを実現したかった。
柿は万能な果樹だ。農家には一本なければならない木だった。柿の木が藁屋根のそばに屋根より高く立っている。そして木には黄赤の実が溢れるごとく実っている。農家の南百年も続いた自給の暮らしを象徴している。私もそのまねがしたくて柿の木を植えた。
渋柿を焼酎で、今なら泡盛で熟し柿にして食べるのが好きだ。柔らかい柿をスプーンですくいながら食べる。渋が抜けて甘味が増した柿の味わいがたまらない。里まで下りてくる熊の気持ちが分かる。一度熟し柿を食べたら、危険を冒しても、何度も来ることになる。
取り残しは柿の実は誰が採っても良いと言うことにしたらいい。来年の秋には柿取りツアーを企画したらいい。もう覚え込んでしまった熊が危ないか。それなら、行政で柿を早めに収穫してしまい。ふるさと納税で販売すれば良いだろう。採らない柿がなんとももったいない。この妙なもったいないが日本のようだ。
完熟柿を食べて、健康維持。毎日1個の完熟柿を食べれば、一日寿命が延びる。風邪を引かない。黒バナナ健康法と同じである。バナナも皮が真っ黒になった完熟バナナの方が健康増進になる。柿も同じなのだ。干し柿でも良いのだが、熟し柿がさらに身体にはいい。
果実が熟すと言うことは発酵することになる。果実酒や、果実酢になる。熟して食べられないようになる果物はまずないだろう。発酵が起こり、酵素が生成され、身体を健康に保つ食べものになる。柿渋は布を染めることも出来るし、紙なら防水性を持つことになる。番傘である。
この柿が熟して行くと柔らかくなるという現象は、果物の中にある固い種が地に落ちて、発芽するための柿の木の知恵である。種を守り育てるものが果肉である。渋柿も熟せば、渋が抜けて甘くなる。柿の木にある子孫を残して行く仕組みが、熟すと柔らかくなるという現象を作り出している。
まだ堅い柿を収穫して、しばらくして食べ頃になるという柿の性質が、人間が食べ物として利用する為には、好都合だった。これがイチジクのように、食べ頃で収穫するしかないものでは、一番美味しい食べ頃に輸送することは難しい。柿は固い内に収穫しても、追熟して美味しくなる。
おおよそ固い種のある植物はそんな性質が多いらしい。だから樹木の種の発芽は実に難しい。ただ蒔いても発芽しない種が多い。コーヒーもそうだ。果肉が甘く、鳥が食べる。そしてお腹の中で周りをすり減らしてから糞になって地上に蒔かれる。この仕組みで発芽が良くなる。
鳥に、種が熟してもう何時巻いても良くなったので、食べて下さいと熟して甘くなるように出来ている。固い内は決して食べなかったものを、何で美味しいくなるの走っているのかと思うほど、一番美味しい時期を、鳥でも、イノシシでも、熊でもよく知っている。
柿の皮をむいて、寒風にさらして乾かしながら乾かし進めると干し柿になる。歴史は古く平安時代の法令集『延喜式』には、祭礼で干し柿が利用されていたことが記録されている。神さまさえ好きだったのだ。一般的に干し柿は渋柿から作られる。柿の糖度は甘柿よりも渋柿の方が高い。果物中で一番甘いものなのだ。
この砂糖のように甘い果肉を食べても、熟していればまず太るなどと言うことがないおやつだ。毎日、3個は1ヶ月以上食べているが、体重は変わらない。これがまんじゅうを毎日3個も食べれば、2キロぐらいは体重が増加しているはずだ。
古い時代は甘味料として使っていたほど甘くなる。しかも渋柿で収穫しても、保存しておくと渋が抜けて、甘みが増すという、人間の都合に合わせてくれたような柿である。渋い間には熊も寄ってこないだろう。種が十分実るまで、食べないように出来ている。
柿が柔らかくなる理由は、発酵作用である。エチレンが出て、細胞膜を作るペクチンの結合が緩んで行く。果物が柔らかくなるのはすべて発酵作用と考えていい。腐っているのだろうという人がよく居るが、腐ることも発酵なのだ。人間が食べやすく腐ることを発酵と名付けただけのことだ。
腐った果物が身体に悪いかどうかは、食べて美味しければ大丈夫だ。食べられないようなものになっていれば、人間の毒となるものを生成した可能性がある。柿の場合は、ビンや瓶に入れておけば、最後には柿酢になる。柿のヘタまで入れた、まるごと柿酢は心臓病にも良い。今も小田原の家の床下に保存してある。
もちろん熟し柿状態でも、固い内に食べる以上に健康増進になる。それは黒バナナ健康法と同じである。エチレンガスが生成され、デンプンを糖に分解してくれる。甘さが増すのだ。さらにペクチンの結合が崩れ、つまり細胞壁が分解されて水溶性になる。人間が吸収しやすくなる。
柿の主な成分は、ビタミンC、β-カロテン、タンニン、カリウム、食物繊維である。これらの成分が、免疫力の向上、美肌効果、抗酸化作用、便秘解消、二日酔い予防になるので、深酒の途中で熟し柿は効果的だ。といった多様な健康効果をもたらしている。
タンニンは渋みの原因である。タンニンは便秘にさせる作用があるが、これが熟し柿であると、タンニンがアセトアルデヒドによって不溶性タンニンに変わると渋くなくなる。舌が感じない形に変わる。カテキンのうちエピガロカテキンガレート(EGCG)といわれるカテキンが、中でも最も機能性が高く、ガンの抑制効果がある。EGCGを沢山持っているカキタンニンも制癌効果が高いことが知られている。
柿はビタミンCが食品随一である。大きめの柿一つで、一日の必要なビタミンCが取れるとされる。柿はバナナと並ぶ健康果物である。昔の農家には必ず柿の木が一本あった。どちらかと言えば渋柿が多かった。渋柿であれば、干し柿にして長い間利用できた。
また柿の木は葉っぱまで利用できた。柿の葉は奈良の名物の柿の葉寿司は有名である。葉っぱにもタンニンが多いので、食品の保存効果があった。柿の葉が美しく紅葉するのも、タンニンが作用している。お風呂に入れれば、入浴剤になる。湿疹を防ぐ効果が言われている。
柿の葉茶も広く飲まれてきた。生葉で利用する方法と、乾燥して保存して使う方法がある。柿の葉茶はビタミンCが豊富で、レモンの20倍と言われるほどである。天ぷらにして食べる地方もある。柿の葉の揚げ物は見た目の美しさが大きい。紅葉した柿の葉ほど、美しい変化を見せる葉はないのではないか。厚手の葉が緑から黄色、赤まで変化には素晴しいものがある。
さらに樹木は家具材としても珍重されている。黒柿材であれば、銘木として取引されている。正倉院御物にも使われている。一万本に1本と言われているそうだが、舟原溜め池の木を切ったときに、黒柿を見つけたことがある。150年以上の老木に出ると言うことであったが、それほど太い木ではなかった。
豆が木のような木は、日本古来の木である。食用になっている柿の木の原木はすべて中国から奈良時代に遣隋使が持ち帰り、渡来したものと考えられている。奈良時代は甘味料として干し柿が使われていたようだ。何しろ干し柿の甘さは、生の柿の4倍に高まる。
干し柿は今では小田原でも作れなくなっている。冬でも温度がそれほど下がらないし、乾燥も続かなくなっているのだろう。何度か挑戦はしたが、黒いカビが生えてしまう。子供のころの山梨では、毎冬の楽しみが干し柿だった。白くこの吹いた干し柿は最高のお菓子だ。
あの皮むきが懐かしい。むいた柿はヤギでも牛でも大好物だった。お乳が増えるからと行ってヤギに食べさせていた。ヤギも草よりも柿の皮は大好物だった。もちろん柿の葉はヤギの好物の一つだ。ヤギでも牛でも木の葉の方が好きなのだ。