土づくりの成功 1
自給農業で一番大事なことは、土づくりである。誰でも言葉としては知っている事だが、土づくりも多様なもので、自分の作りやすい土に、どうやって持ってゆくかが難しい。自分らしい土が出来上がるにつれて、野菜が出来るようになる。虫の害が減ってくる。肥料を入れなくても、作物が実るようになる。土の変化というものを体験してみない限り、理論では分かりにくい事だ。どういう順序で良い土になるのかの道筋である。道筋が一筋縄で行かないのは、土というものが、実に多様で、似て非なるものということが原因する。それに加え、畑の条件も一枚一枚異なる。そして耕作する人の個性に合わないといけない。だから、一般論が通用しにくい。土壌の世界をイメージして、考え方の方を十二分に理解し、自分なりに体得するように行う以外ない。少しづつになると思うが、わたしがやってきた土づくりを書いてみたい。これはあくまで、自給農業の話で、普通の農業の技術ではないという事は、お断りする。
畑の由来を充分に調べ、基づき考える。縄文、弥生、古代、中世、近代。そして、最近の10年ほどはどういう場所であったか。今、がれき置き場であっても、その前の自然状態を考えてみる。例え畑であったとしても、果樹であったか。稲作であったか。野菜畑であったか。自然農法であったのか。情報を出来る限りそろえる。加えて土壌分析を行う。揃った情報に基づき、今後の方針を立てる。おおよそ5年間の、土づくり期間の計画を立てる。すぐにでも良くなる土壌は、古い時代から耕作されていて、5年以上放棄されていた農地である。これは初年度から良くできる。灌木まで生えてきていても、整備の仕方で土を上下に荒らさないようにすれば、すぐに良い土壌として使える。それは自然状態は、土づくりをしているということである。草や灌木を刈り払い。しばらく枯らしてやる。それを敷き藁にして畑にする。この場合耕した方がいいか、耕さない方がいいかは、雑草の状態による。帰化植物が繁茂した状態なら、耕した方がいい。
慣行農法の畑であった場合。土壌が死んでしまい砂漠のような土に成っている。団粒がなく、物理的な土らしきもの。0から始まると考えた方がいい。まず、腐植を出来る限り入れる。わたしの場合入れてきたのは、ソバカスである。毎年、1反当たり、200キロを5回位入れてきた。加えて、養鶏場の床を同じく、200キロを5回は入れてきた。つまり、腐植2トンを5年間入れた。雑草を刈り倒しすき込んだ。こればかり繰り返して行う。3年目までは、作物を作ってもろくなものは出来ない。おかしな草が出て来るので、草を生やしては刈り倒し、たまに漉きこんでゆく。1年目は見慣れない草が、繁茂する。2年目になると、生えて来る草が変わってくる。まだ、害虫が多い。年に何度かトラックタ―で耕運する。作物が入れ替わる時には耕す。耕さずやりたいと言う人も多いと思うが、苦労の割に、収穫が少ない。
4年目あたりから、堆肥は、作付1か月前あたりに入れて、普通の耕作にする。堆肥投入は年間1トン以下にしても、作物が出来始める。土の感じも変化をしてくる。歩いて足が感じる地面の硬さが無くなってくる。雨が降っても水溜りが出来にくくなる。土の色が黒っぽくなってくる。鍬でしゃくる時に抵抗が減る。耕土が深くなる感じがする。畑全体の土の状態が似て来る。出来にくかった場所が小さくなる。始めて鍬を入れるのかというような、固まった土のところが減ってくる。以上の結果作業時間が半減する。5年くらいでは、棒を突きたてて、深く入り込むというようなことはない。出来なかった作物が出来るようになる。白菜が大きく巻くようになる。キャベツの虫が減る。ホウレンソウが少しでき始める。全般に野菜の味が良くなる。作物の生育が早くなる。(続く)