強い農業を作るための政策提言

   

「強い農業」を作るための政策研究会というものがある。座長が山下 一仁氏キヤノングローパル戦略研究所主幹。緒方大助氏らでぃっしゅぼーや代表取締役社長。唐笠 一氏パルシステム専務。他15名で、政策提言を出している。大雑把な言い方に成るが、「TPPに加盟すること。農地制度を自由化し企業参入。農協制度の廃止。大規模化して国際競争力のある強い農業を作ろう。」という政策提言である。日本の農業を滅びさせる考え方、考え方と言うより妄想が、繰り返し出てくる。農業は強い弱いと言う競争の原理で見てはならない。強い農業論は原子力政策と同じで、企業の利権を死守するためと考えた方が良い。強い農業の提言と言いながら、優先課題は小さい農業の淘汰が主目的である。巨大トラックタ―の進路に邪魔な小石があるイメージである。強い農業が日本で成立するかどうかは別にして、経営観念のない小さい弱い農家の存在が、大規模農家成立という企業参入の障壁に成っていると考えてのことだと思える。

農業が輸出産業の足を引っ張っていると言う間違った前提がある。農民の集団としての主張を分裂させることが、農協の否定という形で目的となっている。勤勉で能力の高い、輸出産業の足を引っ張るという、農業に対する汚名である。税金でも優遇され、アパート経営で農業を片手まで暮らしている連中と言う虚像の創出。このことは原子力のイメージ戦略を思い起こせば、同列である。国際競争力のある農業は日本に特殊解以外は存在しない。競争力のない原因を農家のあり方に向けている。これも作られた神話である。国際競争力とは何か。弱肉強食の強いものの論理である。弱者には、自らに敗者たる責任を持たせる。怠け者だから、頭が悪いから、努力が足りないから、様々な理屈を付けて、勝者に成る機会は平等にある、という工業社会の前提を受け入れさせられる。

南極や砂漠の農業と日本の農業が競争すれば、日本の農業は勝つだろう。農業は気候風土に従うべきものである。水資源の量にも限界と偏在がある。勝者は初めからプランテーション農業である。そこには農奴は居ても、農民はいない世界だ。巨大な企業農業が勝つ世界である。人間生存の基幹となる、食糧や水は、商品化してはならない。移動させずに、その土地の生産力に合わせて、土地に相応しい数の人間が暮らすことが、幸福な暮らしの大前提である。収奪的な農業を行い、土地を疲弊させながら、当面の利益に向かう農業が、国際競争の果てに農業の勝者に成る。永続性のない農業である。そんな農業と、日本の4000年の永続農業が競争することが、望ましい訳がない。日本の国土を荒らしてしまい終わりに成る。

日本が向かうべき農業は、自給農業である。個人の自給に始まり、地域の自給。そして日本と言う国の自給である。その為に、日本の輸出産業の競争力がそがれることがあるとしても、日本の未来を考えれば、望ましい結論となる。日本の農業が輸入農産物に敗北してきたのは、農家の責任ではない。アメリカを中心とした輸出農業奨励政策がもたらしたものだ。この提言ではTPPに加盟しても稲作でも影響を受けない。こう言い切っている。希薄な根拠で、その道の専門家たちが、(らでぃっしゅぼーやパルシステムが加わっていることは覚えておく。)こんな妄言をでっちあげる背景には、悪意があると考えた方が良い。新しい理念で日本農業を見直すべき時だ。食糧と言うものはどうあるべきものか。これから始まるだろう、食糧不足の時代を前にして、人間の存立基盤としての、自給思想を失ってはならない。食糧は自由貿易すべきものではない。農地を個人所有から外し、水と同じような思想で管理すべきだ。考えている具体的方策は明日書いてみたい。

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