アミミドロ
サヤミドロ、アオミドロとも違う。舟原田んぼに繁茂するのは、アミミドロである。アミ状になっているから、それとすぐわかる。アミ状になった上に筒状になっているものもある。実に面白い形態の藻である。どういった藻が繁茂するにしても、功罪がある。一番困るのは田植え直後に一気に藻が広がり、まだ小さい苗が風に押し流された藻で押し倒されることである。これで弱って枯れてしまう株も出る。一方良い点の一番は水の浄化であろう。藻は酸素を出す。酸素が生きた水を作る。稲は水で育つのだから、水が良くなるというのは他に代え難い良さである。一般的には、田んぼ雑草の一つとして藻を排除している。初期のの分げつが温度低下で、取れないという想像が働くのだろう。舟原では、上の田んぼがまず藻が繁茂する。水が冷たいからだと思うが、この辺の関連が実に分かりにくく、熱いようなところにも案外に藻は出てくるので、それだけの要素ではない。
分げつと水温の関係は確かにあるのだろうが、これも複雑に絡み合っているから、水温や地温だけのこととは言えない。土の状態や稲の性格もあるだろう。分げつが下の方の田んぼは充分とれるというのも現実で、土壌の性格のようなものが、作用しているようだ。また、分げつがとれないから、収量が即少ないとも言えない。少ない分げつでとても大きな穂を付けて、粒張りも良く、収量が上がるという傾向の場所もある。田んぼの出来上がり方は土壌と水の関係である。日本人のもっとも深いところで、かかわりのある主題につながってくる。この土と水の関係を表現しているのが、藻だと言ってもいい。藻は手品のように突然現れる。この現れ方がこの土地の性格と、水の性格を表している。先日伺った、千田さんの田んぼでは、どこで耕作しても藻が厚く発生する田んぼになる。実に面白い。
アミミドロ、サヤミドロ、アオミドロ、どれが出るかでも田んぼが違うようだ。こういう細かな比較観察ということはまだできない。舟原はアミミドロである。水温が低いからかと思うが、遅れての発生は、下の温かい田んぼにも表れる。どうも腐植質との関係がある。今年は下の田んぼは無肥料である。昨年の感じで、下の田んぼはそれほど肥料を入れる必要が無いと感じたからだ。上の2枚は肥料を入れた。これでどう変わるかを見ている。下の田んぼの土は、去年より良い。このまま行けば良さそうではあるが、まだ結果はわからない。不思議なことに下の田んぼはコナギが多い。無肥料の方がコナギが多いというのも面白い。この複雑な組み合わせから、読み解くと、下の田んぼでは酸素不足が起きる。上の2枚を通った後の水だからだ。これがコナギの発芽を誘発した。違うか。もしそうなら、アミミドロが出る事は、コナギの抑制になるのか。
アミミドロが水温を下げるということが書いてあるが、そんなことはないというのが、私の観察である。むしろ、余分な窒素を一時的に蓄積する。盛んに光合成を行い、酸素を発生し、水の浄化を行う。小さな苗をなぎ倒す以外は、素晴らしい効用がある。思い通りの時期に出現させることが出来るなら、耕作の手法に取り入れたい。抑草効果も高い。田んぼを秋から冬にかけて、良く耕転して土壌を好気的な状態に持ってゆくと、藻が生える。冬の間緑肥作物を作ると、藻が出る。アミミドロが出ると、様々な生き物が現れる。水面が藻で覆われる事で、その下が生き物の住処として、好条件になる。それが、トロトロ層の形成につながる。この蓄積こそ、良い田んぼ土壌を作り出す。条件のような気がする。