ひこばえ農法の困難

8番田んぼの切り戻したイネ株。雨が降り現在8㎝ぐらいの深水であるが、水没しない高さまで延びている。一度田んぼを乾かして、切り戻したので、7番田んぼとは違う展開になるのではないだろうか。ひこばえをしっかりした苗にするには、まだまだ色々試してみなければ分からないことばかりだ。
ひこばえ農法の実現に向けて、もう必死である。山岡先生説では1週早い稲刈りさえすれば、ひこばえはしっかりした新しい苗を作ると言われていたのだが、そう簡単に上手くは行くものではなかった。7番も、8番も5月20日、水分量で28%ぐらいの時に稲刈りをした。それが1週間早い稲刈りということになる。
ところが早く稲刈りをしたところで、出てきたひこばえには4週間後に弱いひこばえがほとんどの株から出た。理由は不明だが、早刈りではヒコバエの幼穂形成を止めることは出来ないと言う事が明確になった。ではどうした手を打てば良いかと言うことになる。
分からないまま、出てきた稲穂を抜くことにした。次から次に穂が出てきてしまう。もう抜いてヌイ手を繰り返している。こんなことではまともな農法とは到底言えないだろう。何か次なる方法を考えなければ成らない。と言っても現状模索中で分からないでぬいている。

穂を抜いている7番田んぼ。
通常の稲刈りを24%としているのだが、私の感覚では20%以下になるまで稲刈りはしなかった。15%まで下がってから稲刈りをしたこともある。倒れなければそれでいいと考えていた。味が落ちると言われるのだが、その方が収量が増える。味より量を重視してきた。
稲刈りを28%で出来るのは、コンバインが登場してからのことだろう。コンバインは青い稲を刈り取り脱穀まで同時に行う。だから、手刈りや、バインダーでの稲刈りとは水分量が大きく違う。やはり一番は手刈りではザがけというのが自給農業らしくて良い。
「5月15日」と1週間早い稲刈り「5月23日」 それから4週間が経過した。すでに多くの株が弱い穂を付け始めた。そう簡単でないことが確認できた。がっかりではあるが、想定内のことだ。弱い穂は7番田んぼではすべて抜いて行くことにした。
昨日ほとんど出ていた、穂を抜いた。早い稲穂が出ていない株はなかった。7番田んぼは切り戻しをしないで、早い稲刈りだけで様子を見ているので、この結果は、想定していたとおりだ。早い稲刈りで幼穂の形成がなくなるはずがない。
弱いひこばえの穂を抜ききれば、その後から出てくる稲の苗はある程度しっかりした稲になる。はずではあるが、その後もバラバラ穂が出る可能性もある。きちっとした再生稲になるかどうかの判断は、あと1ヶ月後のことになる。いずれにしても1週間早い稲刈りだけではひこばえ農法が完成すると言うことでは無い。

切り戻した8番田んぼ。
8番田んぼは稲刈り後2週間経過して、再度出てきたひこばえを刈り戻しをした。またすぐ芽が出はじめて、一気に成長をしているところである。遅れて6月12日に追肥をした。13日にはアカウキクサが再生を始めたので、7番田んぼはコロガシをした方がよいので、昨日転がした。雨が続くが午後から天瀬を見て転がした。
コロガシを入れる方法はひこばえ農法では言われていないが、田んぼの漏れを防ぐためにはコロガシを入れなければならないはずだ。それは雑草対策にも成る。土の還元化も防ぐ。肥料のすき込みにも成る。土壌が硬くなりすぎることもコロガシで防げるだろう。
少なくとも6月一杯に出てきた穂はすべて抜き去る必要がある。この弱い穂が早く出る現象。ひこばえにすでに幼保が形成されてしまっている現象をどう取り除くことが出来るかが、ひこばえ農法の重要な観点になる。このことが頭の中にこびりついている。稲刈りを普通にした後のひこばえは4週間ほどすると必ず小さな穂を出し、アオ米を実らせて終わる。
ひこばえというものは、そもそも稲の収穫期にイネ株の周辺に表れる、無効分ゲツである。その無効分ゲツはすでに幼穂を形成していて、1ヶ月以内に小さい穂を付けるのが稲の生理の普通である。これをなんとか、2ヶ月は穂を付けないで、しっかりした株を成育させることが目標である。本当に可能なのだろうか。
早刈りだけでそれが実現できることがないことは確認できた。もう一つの要素が、稲刈り前後の水管理にあるのではないかと、現在想定している。田んぼの干しが無効分ゲツを止める技術とされている側面がある。水が切れると言うことで、稲が栄養生長を終わるという合図になる可能性がある。
どの程度どの時期に乾かすのが良いかは、まだ判断が出来ない。少なくとも稲刈り2週間前くらいから乾かし始めて稲刈りして水を戻すと言うことでは無いだろうか。乾かすと言ってもひび割れが入らないくらいの状態にして、稲に乾期がきたことを知らせる。
また、土壌に肥料が足りないと稲は早く穂を付けてしまう傾向がある。稲が危機を感じて穂を付けようとする。その意味では稲刈り1,2週前に肥料を追肥することで、ひこばえに穂を付けにくくなる可能性はある。これも試してみている。あらゆる事をやってみて、ひこばえ農法を探らなければならない。
もう一つ考えているのは普通に稲刈りをした稲株を、1週間から2週間稲が生長してきたら、刈り戻すことも意味がありそうだ。この時に稲を深く刈り戻す。茎を残さない。根だけの状態にする。稲は根だけの状態でも再生してくる。この時に水がなければ、イネ株が腐ることはない。
茎があると切られた茎の中からひこばえは出てくる。このひこばえはどうも前の茎である稲の性質を残している可能性が高いような気がしている。根から直接新たに出てくる芽があればその芽はすぐに穂を付けるようなことはない再生されたひこばえになる可能性が高い。
野生の稲が長江の河岸に自生していったときには、川の水位の変化に合せた成長をしていた植物なのだと思う。春になり、川の水位がすこしづつ上がってくる。これに併せて稲は芽を出す。秋になり水位が下がってきて穂を付ける。水位に対して何かを感じる力が稲にはある。
土壌の水分量、土壌の栄養分、稲刈りの時期、刈り戻しの高さ。色々試行錯誤してみなければならない。それらの組み合わせのどこかにひこばえが早く穂を付けない技術が隠れているはずだ。次に2番田んぼの稲刈りが終わったならば、一度でたイネ株を根だけ残して買ってみようかと考えている。