稲作あかうきくさ農法

   


一番田んぼのアカウキクサ

  浮草アゾラによる水田雑草防除と緑肥利用
 [要約] 有機無農薬水稲栽培において、水稲苗移植後にアゾラを投入することにより、水面被覆による顕著な雑草抑制効果と緑肥効果が得られる。
愛媛県農業試験場・生産環境室 [連絡先]089-993-2020 
 [背景・ねらい]
 水稲の無農薬栽培においては、雑草対策が大きな課題として残っている。アカウキクサ科に属する水生シダ植物であるアゾラ(Azolla filiculoides )を利用した雑草防除方法を検討する。あわせて、アゾラと共生するシアノバクテリアの窒素固定能に基づく緑肥効果についても検討する。
 [成果の内容・特徴]
  1. 水稲移植後にアゾラを投入することによって、雑草の発生を抑制することができる。アゾラの投入量が多いほど大きな効果が得られる。
  2. アゾラを被覆度5%で投入した場合、約4.2日で倍増し、21日後には被覆度が100%になる。被覆度100%到達後も重量は増加し続ける。
  3. 無化学肥料栽培においてアゾラを投入した場合、雑草抑制効果・緑肥効果の複合作用により、初期のアゾラ投入量が多いほど水稲の窒素吸収量は増加し、収量は多くなる。
  4. 移植後に投入したアゾラを増殖させ、中千し時期に枯死させると緑肥(穂肥)効果がある。
  5. 雑草防除を目的とする場合、アゾラの被覆度が低いとアゾラの上に出た雑草の生育を逆に助長するので、移植後6日目頃には被覆度が100%となるように投入する。                                                                       
[成果の活用面・留意点]
  1. 水の滞留する水路・池等での増殖を避けるため、排水口にネット等を設置して、なるべくアゾラを水田外に出さないようにする。
  2. 本試験に使用したアゾラは福岡県農業総合試験場より入手した。
  3. アゾラの増殖法は、プラスチックの容器に土壌を厚さ4㎝程度に充填し、水を深さ6㎝程度に入れ、アゾラを入れておく。リン酸を施用すると増殖に効果がある。
 農業試験所でもアカウキクサが有機農業では有効であるとしている。アカウキクサ農法は14世紀ベトナムで存在した事が確認されている。今でも東南アジアや中国を中心に、アヒル飼育では利用がされている。石垣では気候的に可能であることと、絶滅危惧種に指定された希少植物であるから、むしろ保全しなくては成らな植物。

 石垣島には、アゾラクリスタータは存在しないため、純粋なアカウキクサが存在している。のぼたん農園ではむしろ保護のつもりで取り組んでいる。その他希少植物の、ミズオオバコ、ミズワラビも保護している。アカウキクサは西表島にもある。有機農業ではアカウキクサを利用すれば、何も持ち込まない無肥料栽培が可能になる。

 しかし、アゾラの取り組みは環境保護の観点から、禁止されたような状態にある。合鴨農法で、合鴨の餌として導入された「アメリカオオアカウキクサ」アゾラクリスタータが田んぼから外部に出て、特定外来生物に指定されたほど、広がってしまった。国内にあったアカウキクサと交雑が進み、純粋なアカウキクサはほとんど見つからない状態らしい。

 水鳥がアゾラを餌とするから、水鳥の脚にアゾラがくっついて、どんどん繁殖地域を広げて行く。相当に繁殖力の強い植物だ。愛媛県の農業試験場では排水路から出ないようにすれば、広がらないと考えているようだが、そんな気楽な状態では無いと環境省はしている。

 アゾラクリスタータは繁殖力が強く、しかも窒素固定能力も高い。農業利用には向いては居ると思われるが、特定外来生物に指定されてしまった。残念なことである。何かアゾラが広がると問題があるのだろうか。多分生物多様性を疎外すると言うことなのだろうが、それ程の問題ではないと思う。

 合鴨農法ではアゾラを利用するために、日本のアカウキクサと交雑しないように改良された農業用雑種アゾラを推奨しているらしい。しかし、現状では純粋なアカウキクサ自体が絶滅してしまった地域も多いのだ。アカウキクサの有用性を考えれば、むしろアゾラは稲と同じで有効な外来植物として考えた方が良い。

 この点、石垣島に於いては、アゾラクリスタータは侵入していない。そして、希少生物であるアカウキクサがある。石垣島でアカウキクサを使うことは希少生物の保護と言うことになる。確かにアゾラクリスタータほどの繁殖力無い。油断すると消えてしまう、少し弱いウキクサである。

 のぼたん農園での利用も、3年目に入り、すこしづつアカウキクサの栽培法は見えてきた。夏場の暑い時期に消えてしまうようだ。他の季節はある程度は自然に広がっている。牛糞堆肥「よみがえり」を入れるとアカウキクサが一気に増えることは確認している。

 牛糞堆肥はリンが70%と非常に多い。窒素の3倍もリンを含んでいるとある。牛糞堆肥を田んぼで上手く利用することは、石垣島の循環農業にとっても、環境保全を考えても、重要なことになる。田んぼでリンをアカウキクサに吸収させ、アカウキクサを土壌に漉き込み、腐植の増加と、窒素と共有を図ることが出来る。

 利用法としては、アカウキクサが広がったときに、水を浅くして田車によるコロガシを入れる。アカウキクサが例えば、枯れて水に溶けてしまったとしても、窒素となって稲の肥料になることは間違いない。特に補肥として利用するためには、中干しで水を落とすか、淺水にして漉き込むことが効果的になる。

 アカウキクサが田んぼに少ない場合は、牛糞堆肥を入れてアカウキクサの増殖をしてから、田んぼに漉き込むことが有効な方法になる。あかうきくさに共生するアナベラと言う藻が窒素を固定する能力があるため、窒素量が倍増する。またアゾラが大量に繁殖することで、土壌の腐食質も倍増することになる。

 アカウキクサが田んぼに有効なものであることは、様々なに研究されていることであるが、この増殖がなかなか安定しない所が在る。農業のことを考えれば、アゾラクリスタータが利用できれば、有機農業には福音になるはずだが、環境原理主義者の目がつり上がりそうだ。

 農業の現場で可能な、アゾラの安定した増殖法を見付ける必要がある。どのような季節に、どのように投入すれば、アゾラが増加するのか、農業技術として確立しなければならない。今のところ分かっていることは牛糞堆肥が増殖に有効と言うことぐらいだ。どのタイミングで、どの季節に増殖できるかを確立したい。
 
 夏の暑さで消えるようには思えるが、今年の夏はこの点もう少し、水温気温を確認する必要がある。一番肥料が必要な穂肥の時期に、上手く漉き込むことが出来るかも確認したい。堆肥投入田んぼと、浅水でコロガシをして、すき込みを続ける田んぼとを比較してみたい。

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