自然栽培の田んぼの葉色による判断
10番の1本植えの田んぼに来て餌を探すカルガモ夫妻。まだ隙間が多いいからだろうか。
6月28日あしがら農の会田んぼ勉強会を行った。18名の参加だった。指導は農業技術センターの岡野さん。そして有機農業学会の井上駿さん。欠ノ上田んぼからは、4名。舟原田んぼ、子の神田んぼ。坊所田んぼ、山ちゃん田んぼ、新永塚田んぼ。志村田んぼの初参加。有機の里づくり協議会の緑肥作物実証圃場の活動でもある。緑肥作物による、雑草の抑制効果の研究である。有機農業では田んぼの雑草が大きな課題である。あしがら農の会の田んぼではそれぞれの方法によって、それなりの抑草効果を上げてきた。その一番の要因が冬の緑肥作物ではないかと考え、研究を続けている。土壌に腐植を増やすことで、土壌微生物が増加し発酵型土壌に成る為と想定している。今回は田植え1か月前後の田んぼにおける抑草効果の検証である。何処の田んぼでもそれなりの結果が出ていた。特に久野の3つの田んぼの比較で、どのような経過で抑草が起こるのか、また失敗して草が出てしまうのか。少しづつ見えてきている気がした。
慣行農法では葉色は田植え後1か月で5程度の葉色になる。それが徐々に浅くなってゆき、出穂時には3程度に落ちるとされる。ところが有機農業ではこういうことは起こらない。田植え一ヵ月の現在が4程度になり、徐々に色はさらに上がってゆき5~6ぐらいまで葉色が濃くなる。追肥をしなでいても、これが出穂の時期まで続く。地中の窒素の発現が地温の上昇共に高まってくるのだろう。根の量も増え、活動も盛んになり、地中から窒素の吸収を高めてゆく。株姿はさらに開帳型になり、厚みのある、葉幅の広い、9葉期以降の葉が出始める。この葉が光合成を盛んに行う事で、分げつを増やし、葉色もさらに濃くしてゆく。例年7月初め10枚目の葉が出始める。出穂40日前になると、葉色が一番濃い時期になる。幼穂形成期となる。この時期から稲は穂の形成に肥料の吸収の体質の変化をさせる。この変わり目が重要。葉色は出穂の時期までこのままで続いてゆく。これが健全な自然栽培の稲の姿だと考えている。慣行農法と同じような葉色診断をすることは危険だ。
勉強会の具体的な課題としては、緑肥作物の草の抑制に関しては一定成果があった。この後の田んぼの管理である。穂肥を与えられる状態の観察。出穂40日前の穂が準備され始めるときに葉色が、4より浅いという事はあったことがない。という事は慣行農法で言えば、穂肥は無用と考えた方が良いのだろう。しかし、有機農業で葉は色は必ず濃くなる。特別に肥料を入れない田んぼであっても、葉の色は5から6まで濃くなる。その理由を単純に肥料分の窒素の量が多いという事に限定して考えるのは危険だ。良い生育をしていれば、根の活力が高く、自分で肥料を吸収しようとする能力が高いと想像している。また土壌も微生物の活動が高いことや、腐植量が多い田んぼでは窒素が失われることが少ないのではないだろうか。無肥料で管理して来ても、葉色は慣行農法の田んぼより間違いなく濃くなる。後半になればなるほど濃くなってくる。窒素が土中に発現してくるというより、窒素を吸収しやすい根になっていると考えられる。土壌が良くなっている有機農業では穂肥は与えないのが普通と考えて良いようだ。倒れないのであれば穂肥を与えるという事は考えられない訳ではない。
では干し田は行うべきかどうか。干し田は行わざる得ないかもしれない。緑肥作物の分解が続き、後半に倒れる傾向が出てくるのかもしれない。さらに観察をしたいと考えている。穂肥を与え強い干し田を行うという組み合わせは可能かもし得ない。例年サトジマンで背丈は毎年1メートルを超えている。そして倒れる。かなりがっちりした株になっていても、背丈がのび過ぎて倒れる。10俵とるためには倒れるまで栽培しなければ無理と感じてきた。最後まで根の活力を高めるためには、干し田をした方が良いのかどうか。干し田をして地面を固めるという事は、稲の生理上どういう意味になるか。自然農法では良い結果にはならないと感じてきた。今まで恐る恐る干し田は最小限にしてきた。今年は試みてみたいと考え始めている。もう少し観察をして結論を出さなければならないが、迷うところである。7番田んぼより下の田んぼを干してみるという事もあるかもしれない。成育も進んでいるし、例年倒れやすい場所である。