インサイダー取引

   

日本の証券会社がインサイダー取引を普通におこなっていた。その代表たる野村証券では、会社の代表責任者の退任があった。金融庁による行政指導も行われている。情報のない人は騙されていたということになる。以前の手口は、株式公開や公募増資の際に、事前に顧客に株を流す方法が行われていた。必ず株が上がっていたのでこういう不正が出来た。顧客はその証券会社のセールスマンと深い関係になる。これは普通のこととして行われていたが、今は禁止されたらしい。私も知り合いから誘われたことがあった。私を誘うなど見当違いだが、証券会社のセールスがいつも友人の喫茶店にたむろしていたのだ。そこには、銀行の人も良く来ていたが、不思議と銀行員と、証券会社の人は見て区別がついた。山一証券の人たちだったが、面白い良い人がたくさんいた。大手企業が倒産するなど思ってもいない様子だったが、今はどうしているのだろうか。

事前に情報を流すのが、何故犯罪でないのかが分からなかった。友人は、それで大儲けして、結局はその後大きく損をした。最近言われているインサイダー取引はもう少し複雑で、空売りという手法を使うという。増資が行なわれる前のタイミングで空売りを行い、その銘柄の価格を引き下げてしまう。持っていない株を借りて売るのだから、いくらでも下がるまで大量に売ることが出来るらしい。そして、増資後に分配される、戦略で安くなった新株を購入する。すぐ値を戻す株を売って、返却に宛てて利ざやを儲ける。こうしたことが犯罪ではなく、普通のことだったというから驚く。資本主義の基本となる株式がこういういかがわしい中で、運用されている。日本的というか、内部情報を有利に貸し借りするのは、役得のようなもので、当たり前とされてきた。こういうなれ合いのようなものが、日本の社会の特徴なのかもしれない。

ところが、日本の株式も国際化して、国際ルールに従わざる得ないようになった。そうなるとこのやりかたがインサイダー取引という事で、日本の証券会社すべてが不正を行っていたことが、明るみに出てきた。日本の社会の持つ暗黒部分が外圧によって明るみに出てきた感じだ。証券会社は増資などの情報の発信に協力しながら、営業職員が優先的に利用する。そのことが犯罪ではない不思議な社会。これでは日本の資本取引が世界から信頼される訳がない。日本の株式市場の開放とは程遠い。日本の株の購入をためらうようになるのが普通である。こうしたもたれ合いがすべての分野に共通であると、外国には見られている。公共事業などの入札など、外国企業が食い込めないように出来ている。内なる世界の了解というものが、がんじがらめに成立してしまう社会。大抵のことが、インサイダー取引されている社会と考えた方がいい。有利な情報を早く得られるという立場の価値の高い社会。官僚と業界の癒着。天下りの裏には、政府情報が欲しいという事がある。悪い奴ほどよく眠る世界だ。

原子力村もこうして出来たのだろう。官僚支配もこうして作り上げられてきたのだろう。政治の村ではこの暗黙の了解を理解しない人間は、排除されるのだろう。この癒着社会を崩壊させる意味では、国際化というか外圧は良いようだが、これですべての癒着が取り払われるとは到底思えない。官僚が政治家に結局は勝利しているのは、情報の出しかたにあるだろう。情報公開が遅れている社会。その点、インターネット情報は良い。情報の平準化。この中からどうやって本当の情報を選ぶかが問題である。情報が平等のものになる可能性を秘めている。うちうちで談合することも、徐々にだが変わらざる得ない社会になるのだろう。しかし、銀行員の人より証券会社の人の方が、友人になれたのは私の性格を反映していたのだろうか。

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