国家資本主義の中国
中国が世界の経済の牽引に成っている。ということが言われる。中国14億の人口の動向が世界に大きな影響を与える。インド、パキスタン、バングラデッシュは中国を凌駕する人口で、これから世界経済に強い影響を与え始めるだろう。それはどちらかと言えば、負の影響だと考えられる。今膨れ上がる人口を背景に消費が増加する。その需要と、より安い労働力を期待して、進出するグローバル企業。資本主義経済が崩壊する過程で、自国を空洞化しながら、発展途上国に進出する企業形態。遠からず、その構造も崩壊すると考えておいた方がいいだろう。エネルギー使用の増大。食糧生産の限界。近い将来全体の経済構造が大きく変わると見ておかなければならない。経済が下り坂になれば競争はさらに深刻に激しくなる。韓国のように、グローバル企業を絞り込み、国家として一体化して競争を勝ち抜く方法を取る国は増えるだろう。韓国は様々な国内の問題を、切り捨ててこの先鋭化に突き進むことを選んだようだ。そして、一定の成功と、国内には深刻な問題を内包しているはずだ。
日本社会の焦りはこの新興国の国家資本主義との競争に負けるだろうという不安から来る。日本の戦後の高度成長は、今の中国に似ていると言えば言える、のだが。日本という独特の鎖国を300年も続けるような、国民性から生まれた、あうんの呼吸の資本主義の形態だったと思う。それが緩んで、失われるまでは、公害問題などの弊害を生みながらも、一定の結果を残したのだと思う。中国は家族の集合のような国である。競争に勝つために中国型の国家資本主義に、中国の実験は進んでいる。中国では、国営企業の形態が、50年の歴史的な基盤として存在する。例えば食糧問題でも、農地所有の形態が、日本より法律的には、国家の自由がきく。地方政府が大型化した農場を作りたいとすれば、可能である。もちろん違った要因があるようでそう簡単ではないのだが。少なくとも、国家資本と言えるような独特の経営形態を作り上げようとしている。利に聡い中国人らしい選択である。地方政府と連携した、巨大な民間養鶏場。巨大なキノコ生産工場。しかし、そのほころびはすでに見え始めていると思う。
国家資本主義の先端を進んでいる国は韓国やシンガポール。良く研究する必要がある。国家資本主義の一番の欠点は、国内の自由競争が疎外され、人心の腐敗を招くことになる。日本の電力会社の姿である。確かに電力会社が作り上げた、権力構造には怖ろしいものがある。批判を封じ込め、世論をお金で操作する。しかし、内部では慢心から自己検証機能を失い、大きな崩壊を予測できなかった。いまだに賠償問題において、その体質を変えることが出来ない姿を見ると再生は難しい。原子力村が、これだけの被害を生みだしながら、その責任を回避している現実。そしてゾンビのように再生させようとする権力。独占は腐敗する。中国は国内の腐敗から、崩壊するだろう。腐敗を内部告発するキャンペーンをやっているようだが、焼け石に水。日本株式会社と言われたように、国家が統制を取りながらグローバル企業として、世界と競争するのは、成長の過程のものだ。出来る限り早く抜け出した方がいい。
国家資本主義と言うものは韓国の今の方針である。アメリカのような資源もあり、国土も広く、人口も大きい国に対し、対抗するためには小回りのきく、一企業を徹底的に育てる戦略。問題は能力主義を徹底した際。落ちこぼれる大多数の国民がどうなるかである。いわば、キムヨナ選手はすごい選手であるが、何故、それ以外の選手が現れないかである。スポーツを競技スポーツだけと考えれば、このやり方は効率的である。しかし、本来のスポーツの役割は、国民全体が楽しく行う運動である。少なくとも、金メダルを取ることより、底辺の拡大の方が大切なこと。国家資本主義の弱点はここにあると思う。幸せな社会においては、能力主義は差別主義の一つだ。能力には種類がある。決して有能だけが意味がある訳では無い。「ダメでもいいじゃん」精神。その人にとっての精一杯が可能な状況を作り出すこと。この観点からして、不幸な社会が競争に勝ち続ける訳がない。巨大な国中国がこの実験に取り組む危険がどう日本に影響するか。