アミノ酸新製法 微生物発酵で大量生産
協和発酵は26日、アミノ酸の一種のL-チロシンを、発酵法により工業生産する製法を世界で初めて確立したと発表した。今年中にサンプル出荷を開始し、2007年に製造を開始する計画だ。L-チロシンは、医療用のアミノ酸輸液、医療食の栄養成分、健康食品の成分などとして使用されており、医薬品の合成原料としての需要も期待されている。
今回の工業製法は、植物から抽出したブドウ糖を原料とし、L-チロシンの生産に優れた微生物を自然界から見つけ出して大量生産を可能にした。また、低コスト化が図れるものとして期待される。
協和発酵には以前、鶏の飼料の醗酵について教えていただいたことがある。醗酵については、学問的にも未解明のことが多いらしく、大学の醗酵学の先生に伺っても、良く理解できない事があった。その点協和発酵の研究者の方は、実用的な醗酵法については、理解が深く、起きている事を解明する場合や実用的な醗酵の利用法では、重要な示唆をいくつも頂いたことがある。
今回のアミノ酸の微生物生産も画期的なことだが、私はこうしたことは、実用の醗酵の世界では、珍しいことではないと思っている。何故、醗酵利用が自給飼料に於いて、必要不可欠であるか。醗酵飼料を、工夫しながら養鶏をやっていれば、自ずと気付く点である。醗酵で資料効率がよくなり、180グラム必要だったエサが、160グラムになったりするのだ。牡蠣ガラの消費量が、醗酵に加えるようになり、30%減っている。
醗酵食品は、人間の暮らしの中で、培われた技術である。科学的な分析は出来ないが、経験的には乏しい食材を多様に利用してゆく方法として、民族文化として、伝えられてきたものだ。分析するよりも、経験的にその効果の実証が繰り返され、残されてきたものだ。
現在食品残渣として、焼却処分されてしまうものの中に、貴重な飼料として利用すべきものは、いくらでもある。日本の畜産飼料の輸入量2.000万トンと、食品廃棄物の年間総排出量は2.000万トンは同量である。食品残渣は、食品リサイクル法が出来たとはいえ、焼却処分される量が一番多い。再利用は10%程度に過ぎない。しかも、堆肥化されるものが多く、飼料として利用されるものは、統計には出て来ない程度だ。
エサになるものはエサに、エサにならないものは堆肥に、堆肥にもならないものがあれば、焼却する。この順序でなければ成らない。
エサにする方法の、一番の可能性が醗酵だ。例えばオカラを飼料にする。これをそのまま食べさせても、飼料としての価値は低い。中々食べてもくれない。ところがオカラに乳酸菌を加えて、嫌気醗酵させると、オカラの糠床のような、すばらしい飼料ができる。いわば、鶏にヤクルトミルミルを毎日飲ます事になる。これで、鶏の健康管理が出来る。しかも、乾燥させて飼料化することに比べ、エネルギーの無駄も無い。
米ぬかだって、魚のアラだって好気醗酵させればすばらしい、飼料に成る。
今回の協和発酵の発見は、微生物によるアミノ酸の大量生産だ。これは飼料価値が上がる。と言っても、もっと小さなアミノ酸の生成は、家庭の糠床だっておこっている。食品残渣の、適切な醗酵が、日本の畜産の基本的な方法になれば、日本の飼料輸入は止まり、それだけで、食料自給率は10%は回復する。