ダイヤモンドプリンセス号の悲劇
国立感染症研究所によると、感染者のうちの23人は感染を広げないよう、乗客の客室での待機が終日で始まった今月6日以降に、感染が確認された同室の乗客から感染したとしています。とくに今月13日以降について見ると、発症したうちの13人は乗員で、5人は同室の乗客から感染したとしています。---NHKニュース
ダイヤモンドプリンセス号で起きたことから学ばなければならない。3700人の乗客乗務員の内、621名が新型コロナウイルスに感染したのである。菅官房長官や加藤厚労大臣からは報告はあるのだが本当のことのような気がしない。感染症の専門家に状況を伝えて貰いたいものだ。
今のところ十分な情報が開示されていない。次に起こる感染症対策のためには何が起きたのかを検証する必要がある。政府は自己弁護的で責任逃れになっている。外面はそれで仕方がないかもしれないが、ダイヤモンドプリンセス号の教訓は極めて重要である。緊急に検証委員会を作り、調査の必要がある。
クルーズ船の中で感染が広がった背景には対応の失敗がある。失敗の証拠に対策のために入船した職員が複数感染している。その原因には不手際があるのは明確である。立ち上がりにウイルス検査を全員にできないという驚くべき事態があった。お金を惜しんだという話もあるが、理由が分からない。
ウイルス検査の態勢が、1ヶ月の間に準備できない国に日本はなったていたのだ。本来であれば、中国で起きた状況を察知し、1月中に検査態勢は整えられたはずだ。
2月1日に香港の下船した人がコロナウイルスに感染したことが判明した。そのときに誰が、クルーズ船の感染阻止をしなければならなかったのか。たぶん船長なのだろう。そのままにして置いたことで二次感染が起きたと思われる。
3日に横浜に到着した。5日に10名の感染者が確認されるまでは、政府はクルーズ船にたいして、感染症対策を指示していない。これも621人の感染、重症患者28名。亡くなられた方2名という事態に追い込んだのではないか。
初期段階に対応を考えれば、5日までの間に感染を広げることはなかった。横浜着岸時点で下船させて全員を収容する準備も可能でなければならない。それができなかったのは政府に決断力が欠けていたからだ。外国船籍と言うこともあったかもしれない。政府に,官僚に危機対策能力がない。
もちろんそうしたことはすべて仮定のことであり、できなかったことは誰の責任と言えない状況だったかもしれない。次に起こるだろうことのために、何故今回こんな事件になってしまったのか調査と反省はしなければならない。
ウイルス検査が手間取り、数にも制限があったようだ。政府は国立感染症センターのウイルス検査をいまから強化を計ろうとしている。ウイルス検査は民間検査機関が行うべきではないのか。一説によると民間機関ではすでにウイルス検査を一日二万件こなしているそうだ。そこを強化すれば、この程度の検査はたちどころにできるという。
一番気になるのは何故、船内隔離を選択したかの判断である。そして今になって何故下船させたのかである。どのような科学的な根拠で下船させなかったのか、又させることにしたのか。判断の根拠が良く理解できない。
科学的見地ではなく、世論に流されての政治判断のように見えるが。現時点の結果を見れば専門家の判断とは思えない。社会不安を増幅させてはならないとするような政治的判断が加わっていないか。政府はクルーズ船の感染者数を日本に入れないというような外交交渉をWHOとしている。
ウイルス検査を即座に行い、陰性の人から下船をしてゆく。あるいは地上の施設に隔離すべきではなかったのか。船内は窓もないような、ウイルスが蔓延しやすい環境だった。ウイルスを除去できるような空気清浄機はなかった。飛行機にはあるそうだ。
下船して3700人を受け入れる施設がなかったとすれば、次回のためにはどんな準備をしておけばいいのか。あるいはできないというのであれば、今後どうするのかも明確にすべきだろう。そもそも、クルーズ船の責任の所在が不明確などとコメントしている。いつも悲劇が起きてから、想定外と言われて済まされる。
もし、下船させないで船内で二週間待機して貰うのであれば、クルーズ船には感染症の専門家チームを送り込み、感染症病院のような態勢を作らなければならない。感染症には不慣れな看護師や医師や厚生省の職員が対応して自ら感染を起こしている結果では問題を深刻化したのではないか。船で指揮しているDMATは災害医療のプロではあるが、感染対策のプロではないという。
船内は感染危険区域(レッド・ゾーン)と安全区域(グリーン・ゾーン)が区分されていなかったというが、あったと言うことを厚生次官は主張したが、正確にはどうなのか。マスク・手袋などの感染防止対策がまちまちなこと、患者の隔離がなされておらず通路で何の気なしにすれ違うことなど、乗員・乗客のみならず医療従事者すら身を守る体制がなかった。と言うが本当だったのか。クルーズ船スタッフが感染を広げた疑いがある。
船内を指揮する指揮系統がでたらめのようだ。持病のある乗客に薬が届かないと言われていたが、話にもならない。食事の配膳などもサランラップもかけられず行われていたという。そもそも炊事場のウイルス対策はできていたのだろうか。乗務員にも感染者は複数出ている。
崎陽軒がシュウマイ弁当を4000個も差し入れをしたと言うが、これは乗客に届かなかったという。指揮系統がなく混乱した状況だったと思われる。洗濯物も自分で行うしかなく、代えのシーツもなかったと降りた方が言われていた。
下船が開始された。アメリカからは救援の飛行機が派遣され、それで帰るという。しかし、あと数日でウイルス検査の結果が出るというのに、その前に感染状態が分からない人達を混成で飛行機に乗ってしまうと、さらに二週間隔離されるのではないか。だから救援機には乗らないという人もいた。
数年おきに新種のウイルスによる感染症が世界各地で発症し、なおかつ日本は観光立国で世界から旅行客が訪れている。こんな曖昧な態勢では、対応できない状況ではないだろうか。日本が頼りなくなっているように思えてならない。
こうした新型感染症の頻発はやむ得ない人間の暮らし方になったと言うことなのかもしれない。人間が暮らし方を変えなければならないときにきていると言うことに気づくべきだ。その教訓にしなければならない。