日本人は減少中、子供の減少ではない。

   

アフリカに誕生した、ホモサピエンスが徐々に移動して、日本列島に到達した。おおよそ、3万8000年前から4万年前とされている。その頃ヨーロッパには現生人類ではない人間も存在した時代だ。台湾から、石垣島に海を渡ってきたことは石垣島白保での3万8000年前の人骨の出現ではっきりしてきた。ただ、さらに古い時代に渡ってきていたのだが、骨が見つかっていないだけかもしれない。いずれにしても、時代は異なるとしても朝鮮半島から、樺太千島から、とたぶんいろいろの時代に3つの流れでの日本への人類の移動してきたと考えられるようだ。この日本列島に到達した人類は、もうここから移動するという事はなく、あるいはできなくて、日本列島で徐々に日本人という一塊の特徴を形成したのであろう。移動したいと考える人類の性格が現生人類をこれほどの数にした。未知の世界へ踏み込んでゆく勇気が人類を作り出したのだと思う。そうでなければ弱い生き物の人類は絶滅していたことだろう。ミトコンドリアを調べると、そうした人類の交雑の歴史がわかる。DNAの分析においても、日本人と言っても人類的に言えば、様々な交雑の結果日本に住み着いた人たちという事が明らかなっている。中国人が北京原人の子孫でないし、日本人が天照大神の子孫という訳ではないのだ。
日本人というものに興味があるのは、田んぼの絵を描くことが好きだという事がある。絵を描いていると自分というもののことを考える。何故田んぼを描きたくなるのかとか。そもそもなぜ田んぼをやりたくなるのか。自分という人間が分からないと自分には絵を描くことはできない。その自分の気持ちをたどると、どうも日本人が田んぼに深い思いを持っていたという事に至る。瑞穂の国日本人である。弥生時代初期に新たに大量に日本列島に移動してきた人々がいる。新しい稲作技術を持ち込んでくる。その結果、日本人は田んぼをやることで出来上がったような気がする。もちろん田んぼをやらないアイヌのような人もいる。マタギや海部族のような人もいる。しかし、大多数の日本列島に暮らした人たちは田んぼをやるようになり、徐々に日本文化というものを作り出した。その田んぼをやる人たちの数が圧倒的になった。貴族文化だとか、武士道だとかいうが、日本人は田んぼ百姓から形成された人たちだ。日本の絵画も田んぼを耕作するという感覚に大きな影響を受けて出来上がる。四季を深く感ずるという事も、田んぼの一年というサイクルのなかで生まれたものだと思う。雪解けの山の美しさや、桜が美しいという感覚は稲作が始まる喜びと結びついている。こうした自然の美しさを稲作を行う事で、風景を作り出してゆく。自然と人間が風景の中で織りなす美しさの形成。
日本列島で稲作を始めた人たちに興味がある。縄文人の最後辺りから、日本人というものが徐々に誕生するように見ている。この人たちは朝鮮半島経由して日本にやってくると考えることが一番自然だろう。縄文の土器や土偶の感覚は日本人的とは言えない。縄文人の文化は独特で凄いものだとは思うが、自分とはかなり違う感性の民俗のようだ。やはり農耕をするようになり、大きく日本人が変わりながら、形成されてゆく。稲作をするという事は蓄積が出来るようになるという事だ。人口の急激な増加につながる。人口というものは不思議なもので、増えているときは活性化している。減少を始め徐々に衰える。稲作をしない人たちと、稲作を始めた人では、暮らしの豊かさに大きな違いが生じて行っただろう。稲作というものほど主食として素晴らしい作物はない。他の作物を作り採種的に暮らしていた人たちも、つぎつぎに取り込まれてゆく。産業革命が世界を大きく変えたように、稲作が広がることで日本人の暮らし方が激変したはずだ。戦って負けて取り込まれるというよりも、食糧生産の技術革新に取り込まれていったと思う。そして、稲作が人の暮らしを大きく変化させる。稲作は個別の暮らしを集団の暮らしに変えてゆくのだろう。水というものを通して、協働というものが意識されてゆく。
日本人の誕生を稲作だと思っている。別段日本人という血族ではないと思う。稲作の一番の特徴は良い田んぼを作るという事になる。それは一代では不可能なほどの年限を必要とする。子孫に美田を残す。子孫や祖先のことを田んぼというものを通して考えるようになる。この石垣を摘んでくれたおじいさんのお陰で、田んぼが出来る。この水路を引いてくれた、4代前の先祖に感謝をする。そして、美田を守り、孫子に繋いでゆきたいと暮らすようになる。それは一つの家族がそうであるように、地域というものの中に、感謝と共同の必要性を考えるようになる。水は田んぼを通して繋がっている。一人だけの我田引水ではうまく行かない。掻き寄せても風呂の水は増えない。みんなで入れば風呂は深くなる。こうして日本人は長い年月を通して生まれた。
さて、伝統的な田んぼは消え始めた。日本人も消えてゆくのだろうか。

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