新しい形の田んぼをする人

   

田んぼの仲間の岡本さんが作った本を頂いた。「特例子会社の仕事の進め方」河出書房新社発行。という一見難しい名前の本だが、これが実にコミック入りという何処までもわかりやすく作られた本なのだ。この発想がすごいなぁー。ーーードコモが実践する発達障害者・知的障害者の理解と対応策。と表紙に書かれている。岡本さんはドコモに勤めているとは聞いていた。10年以上前になるのか、岡本さんは東京に勤務しながら、小田原で農業は出来ないかと訊ねて見えた方なのだ。その生き方には興味深いものがあった。農地の世話は必ずするからと、まずは家探しからしたらどうかなど相談した。その後小田原に転居して来て、畑をやったり田んぼをやったりしてきた。奥さんがまた面白い方で、創作モンペを作ってネット販売を一時していた。私も裁縫仕事は好きなもので、どこか話が合うところがある。子供が生まれて、小さい頃から田んぼをよく手伝う良い子だ。今年も田植えに来ていた。小さな子供たちがたくさん来ていたので、にぎやかな華やいだ空気に欠ノ上田んぼもなっていた。

岡本さんがドコモ・プラスハーティーという会社で働いているという事を初めて知った。障碍者と一緒に働いているという事は、少し聞いていたが、こんなすごい仕事をしているのかと改めて分かった。独特の人だとは思っていたが、良い仕事をしている。何かの会社でのアンケートに趣味は田んぼと書いたことから、こういう仕事に入った。というような話を聞いていた。何かすごいことがあるらしいとは思っていた。いつも企業と言うと悪いイメージで見てしまうが、企業でなければできないような良い仕事を作り出している。私も農業分野の作業所を作ろうと、努力したことはあったのだが国が求める設備とか、規模とかいうもので挫折した。それだけに、ドコモの取り組みには何か打たれるものがある。企業というものを刮目してみなければならない。反省。

これだけの仕事をしながら田んぼをやり続けるというのもすごいことだ。これこそ家庭イネ作りではないだろうか。この素晴らしい生き方に、協力できるのはうれしい。趣味の息抜きというようなものではない。バリバリに働きながら、自給の田んぼをやっている。こんな事例が日本に増えてきたら、日本が面白い社会に生まれ変わるような気がする。岡本さんは先駆者としての大変さもあるが、大いにやってもらいたいものだ。実は農の会にはこうした企業に勤務しながら、自給の稲作をやってみたいという人が何人も集まっている。岡本さんは特殊な事例ではなく、むし普通である。奥さんがキャリアウーマンで旦那さんが新規就農者という女性活躍の家族もある。そういう暮らし方が選択できる社会こそ面白いのではないか。そんな農業が都市近郊の耕作放棄地に広がってゆく。それを可能にする制度を国は作る必要がある。農地法の壁など早く取り払う事だ。日本らしい新しい、瑞穂の国がそこにはあるはずだ。安倍昭恵さんが見せかけだけでなく、本気の稲作をしていたらまた違ったのにな。

岡本さんが特例子会社の仕事を模索できたのは、田んぼをやりながらだったからこそではないだろうか。私はこの本を読みながらそういう事を思った。田んぼをやることを通して、プラスハーティーという事になったのだろう。田んぼをやることで、心が温かくなったのではないか。暖かい人だから田んぼをやったのか。それにしてもこの本で語っている岡本さんは、実に雄弁で見違える。私が絵が少しはまともな方に向いたのは、私が、自給の暮らしを続けたからだぞー。そう言えるくらいに絵がなればいいのだが。今のところ、まだまだである。一昨日も遅くまで、岡本さんは田植えをしていた。奥さんはいつものように、口ではこぼしながらも笑顔が明るかった。私は遠巻きに近づかないように見ていた。農の会の距離感である。そしてそういうすべてが絵になると思って見ていた。

 

 

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