田母神氏610,865 票の意味
雪の夜 10号 ずいぶん雪が降った。40センチあった。ケイトラの荷台が、何か荷物を積んだように盛り上がっていた。雪明りというが、確かに雪の夜は、小さな光が遠くまで届く。
田母神氏610,865 票得票率 12.5% の投票があった。この意味は考えて置く必要がある。軍国主義を支持する人の数ということでいいのだと思う。軍国主義と私が呼んでいるものを、支持者が軍国主義と考えているのかは別であるが。明治時代の日本の目指した世界である。日本帝国を望んでいる人が、12,5%は確実にいる社会ということだ。この12,5%の人は、強い日本、競争に勝ち続ける頼りに成る日本を望んでいるのだろう。当然強い軍隊を持ち、核武装もする軍事大国である日本。今回は、田母神氏が立候補することで、今まで潜在化していて実態の数が見えにくかった、日本帝国をもう一度作りたいとする人の数が明確になった。若い人が多く投票したというのも、気がかりなことである。民主主義国家ということは、自由に考えてよいということだから、軍国主義を嫌いな人もいれば、好きな人もいて当たり前のことだ。洋ランを栽培する仲間に、保険会社の仕事をしていた人がいた。どのような考え方も、必ず統計的に現われるということをいつも言われて、その仕組みを何度も教えてくれた。
同じ洋ラン仲間の窪川さんが有機農業を始めたことで、有機野菜を食べる人の割合について言われた。どんなことにも必ず、支持者というものはいるものだ。だから、日本の社会の方向として、有機農業が正しいとか、間違っているとか考える必要がないというのだ。5%を対象に考えれば、どのようなことも成立する。日本人全体を考えれば、有機野菜が広がることはないが、5%の人でも十分生きていける。それでよしとして生き方を選んだほうがいいと言われていた。それは、5%の仲間だからこそ、とても結びつきが強くなるとも言われていた。以前から、装甲車のようないでたちで街宣活動をしている人はいた。赤尾敏氏のように渋谷の駅頭で毎日、演説している人もいた。源田実氏のように、人気を博した元軍人もいた。しかし、今回の中心に成ったのは、ネット右翼と言われる人らしい。普通の社会人のような顔をして、はっきりと戦前の社会の再現を望む人たちが現われたのは、始めてではないだろうか。今起きていることは、いつも存在する5%が12,5%に膨張したと考えなければならない。あるいは、投票率を加味すれば、5%理論が当てはまるということか。
少し違う傾向が、日本社会に生まれてきているように感じる。経済復興から、経済成長の大きな時代には、過激な国粋主義的な傾向の人たちは、社会の許容範囲の5%の中にあった。日本が経済的停滞に入り、隣国が目立つようになってきた現在、余裕のない、競争心が軍事拡張の意識に繋がっている気がする。経済で圧倒することはできなくなった。むしろ、圧迫されている分野も出てきた。軍事的な不安も生じ始めている。力を持って対応しなければ、日本は押しつぶされるのではないかという不安感が、通奏低音のようにある。そしてそれと比例して、日本頑張れ頑張れという、掛け声が聞こえ始めている。田母神氏が政策として出していたものは、常識的なものであった。経済主義という点でも驚いた。原子力発電を推進することも、中小企業の経済の為というような、組み立てであった。核武装を前面に押し出してということでもなかったのは、何故なのだろう。まさか本気で当選する気があったとも思えない。もしかしたら、当選すると考えている様な政策だった。
石原氏の維新の会は安倍氏との連携を考えているのだろう。安倍氏の言いたくても言えない範囲のことを、露払いとして様子見をしている。橋下慰安婦発言もそうだった。安倍氏を代弁しているつもりの気がする。安倍氏の痛恨の極み部分を代行している。そのために、田母神氏がまさかと思ったが、公共事業を強調したりしていたのだろう。今後経済がどう転ぼうが、格差がさらに広がることだけは確かだ。国内も不安定化する可能性の方が高い。小選挙区という選挙制度では、30%しか支持されない自民党が、創価学会と組んで、圧倒的多数に成る。こうなるとアベノミクスのごまかしが終わる時が怖い。世界の経済競争で、日本が勝つような可能性は、残念ながら低い。12,5%の田母神氏の支持者が今後どのような変化をしてゆくのか。政治的なまとまりを持つようになるのか。いずれにしても、はっきりとした政治的右派が誕生したということだ。