水土の再生5
農業者は減少の一途である。平均年齢は65歳を越えてしまった。平成に入ってからでも農家数は半減した。すでに産業としては危険水域である。農業をやるものがいなくなれば、日本という国は滅びる。農業者のいない国になっても、人間は生きてはいるだろうが、日本人とは言い難い人間集団になっているに違いない。つまり、日本という国の存在の危機が、農業の消滅ということに繋がっている。若い失業者が溢れるほど存在するのに、農業分野には入ってこない。「汚い・危険・きつい」その上儲からない仕事をやりたがらないのは、当たり前のことだ。国の農業政策は工業的農業によって国際競争力を高めようとする、建前の方針だけの為、新規就農者はいよいよ減少するだろう。農業の悪印象は農業を知らないがために、持ってしまっている先入観である。農業は身体を使う仕事ではあるが、女性でも十分できる仕事である。実際の労働人口は、女性の比率が相当に高い職場である。久野ではむしろ女性の占める比率の方が高い。身体も使う作業もあるが、むしろ、根気よく繰り返さねければならない作業で女性に向いている仕事である。
農業者の減少の根本要因は、生活が出来そうにないということである。よほどの資産があれば別だが、親として子供にやらせたくない職業になっている。農業法人に就業補助金を出し、雇用を促す政策が昨年度行われた。雇用労働者としては多くの就職希望者が存在することが良く分かった。しかし、農業法人自体が、補助金なしに雇用を継続することは難しい。農業は生産性を上げるとか、品質を上げるとか、経営改善の成果は3年5年かかることは珍しくない仕事だ。競争力を高めて、収益性を高めるためには長期展望でなければならない。就業補償を行うなら、5年間くらいのスパンで見なければならない。そうでないと、緊急援助的な支援になってしまい、農業法人の体質まで変える事にはなりにくい。体質を変える方向が、日本の水土と適合していることが大切である。個々の農業法人から、長期的な運営目標、経営計画を出してもらい、援助するに値する法人を育てる支援して行くのでなければ、問題を混乱させる結果になる。
有意な農業法人を育てるのは、一つの方法だが、個人の就農者がどうすれば増えるかを真剣に検討しなければならない。個人の新規就農にはいくつもの困難が存在する。具体的方策を2であげた。1、農業技術を学ぶ場所を確保する。2、農業者用の住宅を確保する。3、農地の斡旋の仕組みを作る。4、農業機械の貸し出しのシステムを作る。5、自給的生産を行うものに、農地の利用を可能にする。6、基本作物の穀物を作る場合の保証制度を確立する。政策としては、農家の里親制度を作る。農業技術の伝承が切れている。基本的な水土技術が伝えられる仕組みが無い。これは地域の農家間で行うべきことだ。地域の農業は地域の人間が一番知っている。地域に農業者里親制度を作る。里親は新しい農業者を育てる役割を担う。里親会を作り情報交換を緊密に行う。その中で地域社会で暮らしてゆく、すべてを学んでゆく。私の周辺には10軒を超える新規就農者が存在する。私自身はその里親のつもりでいる。本来な、地域の農業者が里親になってくれるのが一番である。
新規就農時の個人的な体験で整理してみると、農地の確保が出来ない事が一番大きかった。農地を貸したり、売ったりしてくれる農家の側に立てば、地域社会を混乱させる、あるいは競争を激化させる可能性がある、新規の同業者を簡単に受け入れがたいというのは当然のことである。農業生産物の販売のシステムを、国全体として別枠に考える必要がある。農産物が他の商品とは、異なる性格があることを、国民的合意を作ることが重要である。お米が取れ過ぎれば価格が下がる。この仕組みでは農業は成立しない。国が目的とする方向の稲作をしてくれたら、それにふさわしい価格を補償する仕組みを作る。自由貿易と言っても食糧は別枠で考えなければならない。日本の国土の維持のために必要は補助は行わなければならない。食糧が国民生活の基盤であることを考える必要がある。
昨日の自給作業:種まき等亀戸大根、ミヤマ小カブ、盛岡山東菜、下仁田ネギ、ソラマメ、エンドウ、三浦大根、など2時間 累計時間:2時間