農場レストラン

   

久野にもあればと言う、一番の施設が「農場・農家レストラン」である。以前秋田で農家レストランをやられている、内山さんと言う女性の話を10数年前に聞かせていただいた。まわりの人達が「まさか、こんな田舎でレストランが出来るはずないだろう。」と言うような辺鄙な所に、お客さんが沢山着てくれる。農家のしっかりした料理を出せば、どんな所でも人は食べにきてくれる。そう言われていたことが忘れられない。足柄平野のどこかに、農家らしいレストランが出来たらいいな。そんなことをずーと思っている。ブルーベリーの摘み取り園をやっている、農の会の仲間の小宮さんはファーマーズカフェ「山海亭」をやっている。この地域のさきがけのようなもので、試行錯誤しながら毎年少しずつ形を変えている。この地域にはこの地域らしい形があるらしいな、などと思いながら見ているのだが。やはり運営する哲学が作り出すものらしい。

白秋町にある「農場レストラン鼓腹亭」思い描いてきた完成形といえるようなものだった。4月に出来たまだ新しい施設だ。7ヘクタールの農場があり、その一角にレストランがある。エネルギーは全て自然エネルギーという、コンセプトが先ずしっかりしている。料理はマクロのものである。お客さんが来てくれるかと言うより、こんなものを食べてもらいたい。こう言う哲学で作られている。私はマクロに興味があるわけではないが、マクロの料理だというのを、何度かは食べさせていただいた。身体にいい感じはするし、なかなかの味はしている。だが、これはうまいと言うような料理は今回始めてである。キクイモの煮たものがでた。あの身体にはいいが食べにくいイヌリンのキクイモだな。おそるおそる食べてみると、なんとも癖がない。ああこれがキクイモの食べ方だ。これなら食べれる、マクロ料理恐るべし。甘さが又格別、クドクない。

自然循環の「五雨十風農場」がまず前提としてある。一つのなだらかな南傾斜の谷間7ヘクタールが農場だ。一角には羊とヤギが放牧されている。広く田んぼが取られている。畑にしないで、田んぼにしている所がすばらしい。レストランではお米が売られていたが、天日干しのお米がなんと5キロ3000円で売られていた。全てに考え方がくっきりしている。水は大切にされていて、上手く山の絞り水が、田んぼを巡るようになっていた。トイレの水は5つのタンクで貯められた天水だそうだ。使用する水は井戸水。レストランをやるにしても、そこで生れるエネルギーを越えないように全体が運営されている。薪は周辺の薪山から切り出す。トラックターがあったが、てんぷら油の再生。ソーラー発電で全てをまかなっている。本来休業の水曜日の昼間に行ったのだが、3組のお客さんが見えてた。20代の背の高い2人の若者が働いていたが、二人の表情の明るさが素晴しかった。

このゆったりした空気感だ。この哲学が人に伝わる。利益とか、経営とか、そういう物では絶対に生れない。「こういうものがやりたい」という明確な哲学が、生みだす空気感。これでなければ人に思いは伝わらない。次の時代を意味する、すごい宝がある。大きな太い木で作られた建物だが、これは全てここに育った木だ。大きな一枚板のテーブルはタモだといわれていた。製材のノコメが見える範囲で残して、素朴に作られていた。燃えている暖炉の薪の暖かさが、身体に染みた。こうやってやってゆけば、過不足がない。夜のディナーは完全予約制だそうだ。1月2月は休みといわれていたから、春になったら、ぜひ食べさせてもらいに行きたい。

 - 里地里山