農水の減反廃止シュミュレーション
農水省では減反を廃止した場合のシュミュレーションを作った。5つのパターンがある。減反を10万ヘクタール強化した場合。キロ306円。現状を続けると、243円。完全に廃止すると、162円。これが農政改革特命チームでの10年後の予測である。減反を廃止した場合の姿をまず、国民に知ってもらう。その上でどれを選ぶかを選択してもらおうと言う事になる。日本全体で生産できるお米の量は、およそ1,400万トン。必要な量が831万トン程度である。実際に生産されるお米の量は、885万トンになっている。もし、キロ100円の価格上乗せをすると。1000万トンで1兆円が必要となる。減反を一切廃止すると。1兆円の価格保障をしないと、農家は稲作を経済行為としては行えなくなる。一方から言うと、食べる人にとっては、1兆円食費が下がると言う事は、ありがたいことであろう。定額給付金のようなものである。
10年後の農家の姿を想像した時、このシュミュレーションには、大きな欠落があることが分かる。10年後の農業就労者数の予測だ。減反を廃止しようがしまいが、2020年には稲作農家数はが半減し100万戸を切る。農業センサスでは予測している。半減した農家が、減反を廃止した時、現時点より60万ヘクタールも稲作地を増加できるのだろうか。到底信じがたい数値である。当然小規模農家の減少数が中心であろうが、その分が大規模農家あるいは法人の面積増加に繋がっていない現状がある。大規模営農が可能な地域は、日本全体では限定されている。東北、北陸、北海道の一部地域。国土全体を考えた時に、稲作をそうした地域に限定し、他地域では継続困難になってしまう事も問題がある。日本の国土保全、安全保障において、稲作がどのような位置づけになるか。ここが重要に成る。
地域の特性を見極める必要がある。稲作を考えるに当り、全体で一つのシュミュレーションではない。各県のシュミュレーションを行うべきだ。さらに各市町村レベルでの、将来像を想定する必要がある。例えば、足柄地域で言えば、学校給食利用を中心に行う。この場合、価格がキロ100円安くなれば、その分給食内容がよくなる。地域の農産物、海産物が利用できるようになる。行政がその100円を買い取り価格に上乗せする。これは教育予算として、国が補填する。一方、減反が廃止され、より大規模に稲作が行えるようになる地域では、コスト削減が可能になる。法人参入もよりスムーズにすすむ。そのような地域ではキロ50円程度の補填で済むかもしれない。各自治体ごとに、将来の地域像に基づき、稲作の姿を想定する必要がある。今のままでは、耕作する人材が居なくなる。農業も技術的な仕事で、親子代々の伝承がなくなった今、人材育成から行わなければ成らない状況にある。
安ければ良い。と言う時代の風潮である。小売業は安売り競争である。生活が苦しい。格差社会が顕著化し、路頭に迷うものが増加する状況では、安売りも仕方が内面もあるが、安売りは消耗戦である。競争の中で食品が劣化して行く。長い目で見れば、悪い事である。食品は適正価格で販売されたほうがいいものである。お米が生産費以下で販売され続けることは、間違いである。大きな崩壊に繋がる。生産過剰分を食糧援助に回す。10年後には、必ず食糧危機時代が来ている。世界の人口増加と、肉食化を考えれば、食糧危機は必ず来る。そのときに備え、日本の水田を維持することは、日本人の使命とも言える。世界には日本の棚田水田以上の、不利条件地の水田がいくらでもある。総合的に見て水田ほど優れた農業はない。当面少し高いかもしれないが、10年後に、農水のシュミュレーションがいかに間違っていたかに気付くのでは遅い。