地場・旬・自給

笹村 出-自給農業の記録-

稲、種まきまで

   

のぼたん農園の1回目の稲の種まきは12月7日に行った。品種は「たちはるか」「にこまる」「ゆがふもち」の3種類である。苗代は2番田んぼに作った。幅1mで長さ30mである。種籾は「にこまる」が1キロで11、2㎡に蒔いた。「たちはるか」が1キロで11㎡に蒔いた。

1キロの種籾を海水で選別して、浮いたものを取り除いた。海水に最初に浸種するのは、海水はすべての総合だと思うので、海水で種籾に目覚めて貰うのが一番だという、祈りのような思いだ。田んぼの水が流れ落ちている海の水で、種籾に目覚める時が来たことを知ってもらう。

海水選の儀式。科学的根拠のないことを稲作に持ち込むなどもってのほかなのだが、稲の種まきだけは別物だ。私にとって唯一行う稲作の儀式。出来ることなら、神さま仏様の気持ちである。海のニライカナイの願いである。「稲の命よ、目覚めるときがきました。」

海水選を終わった種籾は、目の細かな網袋に入れて、湧水の流れ落ちているところに浸しておく。12月2日から6日までの5日間で芽出しをした。6日の夕方から陰干しをして、7日の種まきに備えた。ネズミがでるので、アトリエカーの中に広げておいた。翌朝ある程度乾いた状態で、10等分に小分けした。

12月の苗代は早いように思われるが、平均気温で言えば、小田原の5月よりも石垣の5月の方が気温はかなり高い。昨日などは夜温で23度あった。25度以上の夏日が続く。最低気温で17度くらいだ。稲の生長には収穫期前後の日照時間の変化の方が影響するかもしれないが、緯度が大分違うので、日照時間が長いことと日射量が大きいために、一概には言えないところだ。

100グラム弱に小分けした種籾を牛乳パックで作った小さな箱に入れた。種籾は苗代1、1㎡ごとに100グラムを蒔いた。本当はもう少し疎に蒔きたかったのだが、田んぼの面積と蒔く量から、我慢してこの程度の密度にした。正確に書けば、95gの浸種した種籾を、1、1㎡に蒔いたのだから、㎡あたり86gの播種量となる。

苗代作りについて書いておけば。稲株の残ったままの予定地に、牛糞堆肥を25キロ入れた。そして粗起こし。代掻きを、1ヶ月前に行った。その後湛水をしておき、1週間前にもう一度代掻きをして、はば1mの苗代ベット作りを行った。水位を見ながらできる限り平らにトンボで均した。

そしてまた水没させておき、種まき前日に、水位を下げて、苗代の上部をもう一度平らに均した。苗代の回りは水がたまるように溝を掘り下げながら、その泥を苗代のベットに乗せて高くした。ネズミを防ぐためである。苗代の表面は水がたまらないように、わずかにかまぼこ形にした。

一番重要なことは、苗代の土壌である。苗は2葉期を過ぎるまでは種籾後からで葉を伸ばす。その後は根が土壌に伸びて、養分をどれだけ吸い上げることが出来るかで、苗の善し悪しが決まる。目標は5週育苗で、5,5葉期の両側に分ゲツがでている苗である。

2葉期を過ぎて、葉の色が黄ばんでいるようなら、ここで追肥をするつもりでいるが、今までそういう経験はない。土壌は柔らかく、指が簡単に地中に入るような柔らかなもの。種籾を1mほどの高さから蒔いて、半分潜るぐらいの状態が良い。

全部潜ってしまうようならば、種が窒息する可能性があるので、種はいくらか見えている状態が良い。種籾は5日間の浸種で鳩胸状態よりいくらか芽が伸びている位を狙う。芽が遅れている種でも、鳩胸までは伸ばしたい。芽が出ていれば窒息することがない。その意味では、晩稲の種は中手よりも1日遅れる。

種を蒔いたら、防虫ネットのトンネルで覆う。鳥やネズミを防ぐためである。気温だけを考えれば、ネット入らないが、石垣では直播きは出来ないぐらい、食べられてしまう。穴あきビニールも考えられるが、保温する意味はないので、防虫ネットが良い。中が見にくいことが欠点である。

水管理は種まき1週間は水やり感覚で管理をする。朝一度水位を上げて、水没させ、その後下げる。これを繰り返す。1週間すれば、1㎝ぐらいに芽が伸びるので、そうなったら、ベットが水をかぶるくらいのひたひた状態で管理する。この後は水がないと生育は遅れる。

水は流し水で管理している。排水口の高さを変えて、水位を上下させる。流し水の方が、水が生きているので、停滞水にしない方が良い。石垣の水温は高すぎる位なので、保温の心配がない。1週間してベットが水をかぶるようになれば一安心である。

30mの長いベットが2mm以下の誤差で平らでなければならない。苗代に水を張り、トンボで丁寧に均す。それくらい苗代の水管理は微妙だ。ベットの回りは常に水がなければならない。それはネズミ対策である。ネズミは水を嫌うので、泳いで苗代に入ることはない。

苗代に入り込む可能性があるのは、ジャンボタニシである。全体が隙間なくネットで覆われていなくてはならない。ネットの下をもぐずり込んではいることはないようだ。しかし、石垣島では何があるかは分からないから、毎日観察を怠らず、注意している必要がある。

3日目には、芽は白からわずかに緑色になり始める。これが不完全一葉と言うことになる。苗代の苗には、品種ごとにマーカー稲を数株決めて、マジックで葉に番号を付けて行く。小さい内から番号を付けておけば、5週目の苗取りの時に、何葉期の苗かが確認できる。

その苗はわかりやすい場所に田植えをして、止め葉がでるまで数える。15枚が目標である。つまり、5葉期で田植してから、10週で15枚になれば成功である。葉の出方は徐々にゆっくりになる。石垣島で10種類ほどの稲を栽培したが、15枚まで葉が揃った品種がない。

そこで、今回「あきまさり」「にこまる」「たちはるか」の晩稲品種を栽培してみる。ゆっくり生育で、17枚まで葉のでる可能性のある品種なので、15枚葉が出ることが期待している。気がかりなことは、6月が収穫予定であるが、4,5,月頃の日照変化にどう対応してくれるかである。

苗取りは1月10日になる。そして田植が、1月11日と12日を予定している。それまでに田んぼを仕上げるつもりだ。光合成細菌を培養して、田んぼに流し入れる予定である。先日の石渡さんの勉強会で、藁を減らすか、光合成細菌を入れるか考えたらどうだろうか、という指摘があった。

肥料不足を感じているので、光合成細菌の肥料効果を考えると、今回は実践的にやる気になった。今まで小田原でもやってみたことがある。石垣に来てからも、何度かやってみた。今回はかなり真剣に取り組んでみるつもりだ。何しろ石渡さんのヒントである。

3回も藁を入れるのが多すぎると言うことなのだが、そのほかに畦草なども入れている。石垣ではそれくらいでは腐植が増える感じはしていない。分解が極端に早い。腐植不足を考えると、藁を減らす気にはならないので、光合成細菌を入れることにしようと考えた。現在培養を始めている。

田んぼの脇の入水口付近に200ℓのタンクを置いて、光合成細菌を培養する。タイミングを見ながら、光合成細菌を田んぼに流し込み施肥する。1回目は代掻き前に入れてみたい。土壌の改善が期待できるかもしれない。肥料の追肥効果もあるかもしれない。

今の所湧き水は順調である。7番田んぼまで、水が十分あって田植が出来そうな状態である。いつまで水があるかは分からないが、苗が余るようであれば、マイコス菌を使い、稲作りをしてみる価値があるかもしれない。マイコス菌の実証実験ももう少し試す必要がある。

Related Images:

おすすめ記事

 - 「ちいさな田んぼのイネづくり」, 楽観農園, 稲作, 苗作り