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笹村 出-自給農業の記録-

米価格の展望

   

米価格はどうなって行くのか。新米が出回っているのに、一向に米価格は下がらない。すでに、米騒動は終わったかのように、米価格の高止まりが話題から遠ざかっているが、米高値の根本原因である生産性が低すぎる問題は、少しも手が着いていない。

総理大臣が高市氏に替わり、農水大臣が小泉進次郎氏から、農水生え抜きの鈴木氏になった為だ。また農協温存の現状維持に戻ってしまった。今まで通りに生産性の低い小さな兼業農家の温存である。既得権を守ることが、安倍政治を受け次いだ高市政治なのだろう。

長年の自民党と農協の腐れ縁である。農協に関わることを動かせば既得権に傷を付けるから、何もやらないのが農水相の実態である。また減反政策に戻り、米は不足し、高止まりする。さらに米の消費は下がる。そして、日本の米農家は消えてゆく。

日本でも大きな農業法人では、生産性は高く、世界水準なのだ。むしろアメリカのお米よりも安く出来るという話さえある。ここには円安のからくりもある。アメリカが15%関税を上げても、円がすでに10%近く安くなっている。輸出企業もしのげる水準なのだ。農家は生産性が10%良くなったことになる。

小さな農家をどうするかは確かに地方再生と連動している難しい問題ではあるが、生産性が低すぎるのだから、何とかしなければならないことだけは確かなことだ。私も小さな小さな農家であるが、補助金など貰ったことはない。それでもここまで生き抜いてきた。

小さな米農家の補助金依存体質は何とかしなければならないと考えて居る。減反政策の結果、適当にやる兼業米農家が一番生き残ったのだ。片手間で稲作は良いと言うことになった。何しろ、第2種兼業の米農家の友人が、田植と稲刈りしか田んぼに行かないと。毎日田んぼに行くお前は馬鹿だと言った位なのだ。

米価格が高止まりである原因は高市政権と鈴木農水大臣の策謀の結果のためと考える必要がある。備蓄米は出回らなくなった。10月31日に農林水産省が公表したデータによると、全国のスーパー約1千店で販売された米5キロの平均価格は4208円、銘柄米に至っては4523円という高値となっている。

この先下がらないならば、倉庫にしまっておこうと言うことになる。そして減反奨励金を出して、お米不足をまた起こす。これで農協は安泰。高市氏は全く農業のことが理解できていない。鈴木氏は確かに理解はしている。理解して、既得権益を守る農協を、どうやって残すかを考えて居るのだ。

高市首相は所信表明で、『食料自給率100%を目指す』と掲げた。相変わらずの根拠なき建前論である。それにしても100%はさすがに無知から出た荒唐無稽である。どうせ出来ないことなら、でかく言おうということなのだろう。自給率を上げると言いながら、農水大臣が生産調整を主張するのでは矛盾そのものだ。

小さな兼業農家を何とか生き延びさせたとしても、結局は後継者はいないのだ。このようにして老齢農家が消えて行くのを待てば良いというのか。石破政権時に『米が足りない』と認めて増産方針を出したのに、また生産抑制に戻そうとしている。これが自民党政治の既得権死守の実態である。パー兼裏金政治である。

「お米の値段は市場に任せるべきだ。」と鈴木農水大臣は一見正論で主張している。政府が価格には関わらないとしている。これも正論である。やることは備蓄米を放出して、米価格を下げないと言うことだ。農協の願っているとおりの政策である。農協は米不足を歓迎し、米価格の高騰を、実は願っている。商売だから当たり前だろう。

米価格に関わるようなことはもうやらないと明言している。にもかかわらず、減反政策には戻る。つまり米価格は高い方向への操作ダケはします。と言うことだろう。米騒動はどこに行ったのか。高市総理大臣、鈴木農水大臣、全農、かくJA、すべてが先祖帰りをすると言うことのようだ。

お米は高くてかまわないと言い切っている。お米の生産性を向上させないで良いと言うことになる。低所得者にはその分お米券を配るので、何とかしのいで下さい。全く米農家に変化を求めないでおこう。お米券配布は小手先調整のごまかしだ。

根本的問題は日本の稲作農家の生産性の低さにある。ここに踏み込まないでどうする。小さな兼業農家を温存することは、日本の稲作の生産性を下げることだ。それで良いのか。票田だから良いのか。農協の既得権を守れば良いのか。日本の稲作はかつて世界一の生産性の高さだったのだ。やれば出来ることだ。米作りをするものとして、是非ともそうあって欲しい。

結果的に米が高止まりして、輸入米が増え、自給率は下がる。高市政権の本音が米の生産調整であって、自給率100%を目指すは、棚の上に祭り上げた建前論に過ぎない。鈴木農相は先月30日のインタビューで、政府の介入を否定。米価対策を「政府が洋服の値段に介入しないのと同じ」と筋違いに例えた。

政府が米価格に関与しないというなら、自由に作ってもらうことが当たり前だろう。米価格を低く維持し、生産者には財政で支える。財政で支える代わりに、米農家を合理化する。それが自給率を高めて、米の生産費を本来の市場原理の尊重のはずだ。

政府がやるべきことは2つある。まず、稲作の生産性を上げるために、農地の再編成だ。現状大規模農家の農地拡大を小さな農家が阻害している。大規模農家は直売方式で、農協とは商売敵だからだ。小さな農家の生産性が高いなら良いが、大半が第2種兼業で、片手間稲作なのだ。ここをどうにかしなければ、生産性は上がらない。

農地法を変える。農地に大規模化すべき農地と、小規模でもかまわない農地。そして市民が利用できる農地。の3種類に分けて、対象農地の税金を大きく変える。大規模化すべき農地の中にある、小規模な稲作には、罰則課税をする。市民が利用できる農地には補助金を出す。こうして地域を守る態勢を作る。

大規模化する農業者には、大規模化協力金を出し、さらに農地の集積を進めて貰う。小規模な農家には、農地移転のための協力金を出して、中山間地の農地を守って貰う。中山間地の農地の維持には、稲作農家戸別補償を行い、地方社会を守る中核に成って貰う。

もう一つのやるべきことは、稲作農業とそのほかの農業とは分けて考えなければならない。主食は自給率を考える上で、守るべき最上位にすべきだ。それは日本人の暮らしの安定化につながる。桃やリンゴがいくらあっても、お米がなければ生きて行けない。

米作りを日本人の生き方の基本に据えるために、瑞穂の国日本の国作りを見直す。日本の高度成長があったのは、百姓力がまだあったからだ。地道に努力する力が百姓には備わっていた。特別の観察力が農業をやることで培ってきたのだ。兵隊さんで役に立つのは農家出身者だったそうだ。

学校教育では、必ず主食の栽培の作務事業を義務化する。自分たちが何を食べるのかを体験的に知ってもらう。地方の小規模校で、学校田で給食を行う学校には、水田の準備、水田始動の地元農家の指導員制度を作る。炊飯施設を整備支持好調りが出来るようにする。

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