ノボタンが今咲いている。

   

のぼたん農園のノボタン

のぼたん農園はその名前のように、ノボタンの群生地がある。上下に分かれているが、全体では1ヘクタール近くある。下のノボタンの群生地が3反歩ぐらいでこちらを保全し管理している。今年は特に整備をした。堀口さんというメンバーの方が熱心に世話をしてくれている。

のぼたん農園を始めるときには、奥の方にノボタンの群生地が広がっているとは考えていなかった。放牧地が放棄されて、深い茂みになり草の中に埋もれていたと言うこともあるのだが、花が咲かなければ目立たないと言うこともある。何故放牧地にはノボタンがあるのか考えてみると面白い。

ノボタンの葉は牛が食べない。牛の放牧場だった時代に、草地に自生していてノボタンの株が、牛が食べ残すので、徐々に広がったのではないだろうか。ススキでも牧草でも生えてくると、ノボタンは覆われて枯れてしまう。だから管理の良い放牧地や草地では、ノボタンは残されていない。

石垣島で初めてノボタンの花を見たときにその花の当たり前の姿に惹かれてしまった。派手さもないし、特別ではないのだが、静かに存在感のある花なのだ。石垣島では、様々な熱帯花木が移入されている。これが私にかなりの違和感がある。やはり自生している花木の美しさは別格である。

この花は残そう。農園の名前は『のぼたん農園』にしようとすぐに決めた。それまでは楽観農園という名前にしようと考えていたのだから、全く馬鹿馬鹿しくなる。ノボタンは繁殖力の強い植物と言われている。しかしその強さは里の近縁にある場合のようだ。畑や道路の縁には広がりやすい。

山の中に広がると言うことはないらしい。石垣島で群生地を他に探しているのだが、まだ見つからない。どうも除草剤には弱いのかもしれない。北部の伊原間や平久保の牧草地には残っているという話を、県の能研センターの大野さんと、青木さんから同時に伺うことになった。すぐ行ってみることにした。

 

昔はどこの畑の隅にもあったらしい。それが気がついたときにはほとんど失われてしまい、道路の側面の崖などにたまに見るぐらいになっている。山の中の植物は手つかずだから、むしろ変化がないが、人里の植物は人間の暮らしに合わせて大いに変わってゆく。

ノボタンは山の中を捜せばあるというような植物ではない。樹木の下の日陰では育たない木だ。街中ではあまりに普通の植物だから、庭で大切にされるというようなこともない。石垣島ですら、南米から来た遠来の紫紺のボタンの方がおなじみである。山にはヤエヤマノボタンという、近縁種があると言うが、これはよほど捜さなければ見れない。

小田原から箱根にかけて、三つ葉ツツジの群生地がある。群生地は特別な場所として保全されている場所である。今では山ではなかなか見られなくなっている。しかし家の庭にはかなりある。山のツツジが庭の取り込まれたのだろう。ヒメシャラも同様で、ポーラ美術館が出来るときに庭の中に群生地の保全がされた。

ツツジの中でも特に美しい三つ葉ツツジが好きだ。花も悪くはないのだが、この3つの葉の美しさが格別なものだ。三つ葉ツツジの苗木を育てる畑を作り、山に戻す活動をしたのだが、植えるそばから引き抜かれてしまい、何百本も山に戻したのに、一本も残っていない。これが悲しい現実である。

平久保で一番ノボタンがあったところ。

石垣のノボタンがどういう所に残っているのか、探しに行ってみた。その自生地を参考にして、のぼたん農園のノボタンも保全して行きたいと思っている。ノボタンは条件さえ合えば、どんどん増えて行くことは確かである。田んぼや溜め池の縁に自然に生えてきている。

写真は平久保の元牧場の跡地で、ノボタンが一番多かった場所である。ノボタンは放棄された牧草地には広がってくる。しかし、ススキやつる性の牧草が優勢になってくると、ノボタンは覆われてしまい、日陰になり枯れてしまう。畑の周りなどにノボタンは残るが、それも今は完全に失われた。

残っているノボタンものぼたん農園にあるように大きくはない。せいぜい1mである。2mにはなる植物のようだ。のぼたん農園では、放牧地になり、しかも自然に任せた元畑に、牛を放した。整地した放牧地ではなくなっていた。牛が食べないので、ノボタンだけ大きくなったのだろう。

山の中に自生する植物ではない。明るい草地に自生する。しかし他の強い雑草には勝てない。そのために石垣島では急速に消えたのだろう。昔はどこの畑の周りにもあったのだろう。しかし、今ある程度あるのは、平久保の元放牧地の中に、残っているだけになっている。北部一帯を捜したが、結局多良間田んぼ周辺だけに残っていた。

田んぼの畦のノボタンは良い物だ。溜め池のノボタンも風情の良い物だ。ノボタンの増殖を行い、苗木の販売の販売を行いたいと思っている。石垣島のどこの庭にもノボタンがあるようになればと思う。ノボタンはどうも移植には弱い。道を作るときに、やむを得ず移植したが、根付いた株は少なかった。種を蒔いてみたが、これも意外に芽を出してくれない。何か工夫が必要なようだ。

鳥が実を食べて糞に種が混じり、芽を出すのではないかと思われる。こう言うタイプの植物は種から育てるのは案外に難しい。やはり挿し木がいいだろう。今度小田原から戻ったら、挿し木を行い。まず育苗トレーに挿し木をして、根付いたら、苗木畑に植え付ける。

挿し木法なら100本ぐらいすぐに増やせるはずだ。花が咲くくらいまで、育てて鉢上げをする。根付けば丈夫な植物なのだから、増殖法を確立する必要がある。あのノボタンの群生地を見れば、ノボタンの魅力が誰にでも伝わるはずである。野生種の魅力は交配し作出した品種よりも魅力的なものだ。

平久保のノボタンは草に覆われ始めている。放棄された放牧地であれば、牛が草を食べると言うこともない。だんだんに草に覆われて、枯れて行くことだろう。やはりノボタンは人との関わりの中で残って行く植物のようだ。のぼたん農園のノボタンを大切に保全して行きたいと思う。

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