野党がなければ、民主主義は終わる。

ナリヤラン
立憲民主党の代表選挙が終わった。新代表に選ばれたのは47歳の泉健太氏 だった。残念ながら私はこの人のことを知らなかった。立憲民主党を支持していながら、恥ずかしいことだが、今回の代表選挙で初めて知った。京都が選挙区の人という事である。
北海道出身で立命館大学へ行ったというのはどういういきさつだったのだろうか。代表就任あいさつで、わざわざ小沢一郎氏の名前を出したという事が気になる所である。これからの野党共闘をどう進めるのかで、その手腕がわかるだろう。
立憲民主党は選挙で後退して、代表の枝野氏が辞任した。枝野氏の問題では無いのだから、辞めたからと行って解決には成らない。今回の選挙は絶好のチャンスだったのに、すべてにがっかりである。立憲民主党に日本の方向転換を期待していたからだ。
野党が良いか悪いかという前に、政権が変わるような野党がなければ、まともな議会制民主主義は成り立たない。自公政権があまりにひどいことは大方の人は感じている。しかし、それでも今の野党に任せるよりはましというのが、選挙での判断である。
これでは自民党はさらに悪政党になるだろう。汚職をしようが、制作を放棄しようが、国民は自民党を支持するほかないと考えてしまっているのだ。こんなことがどうして刷り込まれてしまったのかわからないが、確かに野党がだらしがないのだろう。原発で、消費税でも明確な政策がない。
結局この敗北はかつての社会党の失敗を思い出すものだった。労働組合という支持母体と政党の関係がどうしようも無いものだ。立憲の意味が護憲になり、憲法を固守するだけで、憲法議論を党内で活発に行い、憲法を国民の身近なものにするという努力が無かった。
選挙をやるためには人のいる、労働組合が重要なことになるなのだろうが、労働組合の利権のような主張が、立憲主義政党としての民主的な政策論争を制限している。それが、社会の期待する自由と民主主義と言うイメージから大きく逸脱しているのだ。それがかつての社会党の停滞を思い出すところだ。
労働組合が自民党よりも保守的なようでは話にならないだろう。日本の労働組は可能性が無い。労働貴族意識が染み込んでいるようだ。非正規労働者を共通の仲間としてみる余裕が無い。資本に対抗する労働者では無く、資本と連携する労働組合。
この労働組合に依存した野党では、一定の票は取れても、とうてい政権を取るような事はできないだろう。具体的に言えば、原発を継続したい電機労連。本来電力会社の解体が必要な状況だ。抜本的改革を労働組合が阻止している。
憲法論議をするという自由すら無い政党。憲法9条を守ればそれでいいと言うことでは無い。憲法の拡大解釈を続け、日本国憲法は憲法学者の90%トの人が憲法が守られていないとしている。先ずは憲法裁判所の設立が無ければ、憲法を変えようが変えまいが、無駄な議論になる。
消費税反対が前提で国の財政再建を明確化できない。日本の財政は破綻の瀬戸際である。コロナでさらにその危機は世界でも一番危険な財政破綻に繋がってきた。財政破綻とは、必要な橋の架け替えがお金が無いから出来ないと言う事態である。必要な病院が閉鎖されるという事態である。地方から生活基盤が失われ始めている。
枝野氏個人の考えは蒙昧では無い。立憲民主党という政党としての思想の曖昧さである。曖昧である結果として何でも反対の野党というくくりに入れられることになる。明確な政党としての思想を押し出す姿勢が感じられない。党内議論が見えないのだから、党としての思想は生まれない。社会主義政党とも見えなかった。
この点では共産党の正しさを見習うべきだ。問題は共産党がいくら正しくとも、政権党になると言うことはどう考えにくい点だ。だから、立憲民主党は共産党と連係して、共産党の正しさを受け売りして、選挙を戦ったわけだ。そうでなければ私も立憲民主党の支持は出来なかった。ところが野党有利とみられた、自民党のていたらくにたいしてすら、選挙で勝てなかったわけだ。
選挙で勝たない限り、どうにもならないのが政治である以上。大きな未来戦略を立てるべきだ。3つの柱はどうだろうか。
1,消費税をふくめての財政再建と日本の福祉政策の方向を定める。
2,憲法論議を憲法裁判所の設立を前提に広く論議する。
3,原発の老朽化廃棄期限通りに廃止して、循環エネルギー国家に変わる。
財政再建も福祉政策もこのままでは行き詰まることははっきりしている。国民にこの財政の厳しさをきちっと示して、甘い見通しは止めることだ。消費税廃止どころではないと考えている。みんなで我慢しなければならない苦しい財政を示し、未来の日本の財政再建計画を立てるべきだ。選挙で甘いことを言えば票が集まるというのでは責任政党では無い。
税金は大企業からとれば良いとか、防衛費をただただ削減しろ。ある意味では正しいのかもしれないが、これではもう国民の支持は得られない。共同富裕である。大企業にも我慢して貰うし、国民も我慢しなければならない。老人福祉よりも、子供の教育に重きを置く。誰もが我慢が必要なら、子供では無く老人である。企業だけが内部利益を増している状況は困る。貧困層の深刻化も困る
学校教育費は無料にするが、老人の医療費はむしろ高いぐらいにする。老人福祉は後退してもいい。老人は可哀想かもしれないが、国の財政が再建されるまでは仕方がない。私は孫子のためなら我慢する。病院に行けないで困るとしても、孫を学校には行かせたい。子供こそ国の宝だ。
防衛費は直接の攻撃的兵器は大幅に削減して、その分を情報防衛や、感染症対策費、食料の安全保障に当てる。防衛費が平和外交のための費用になるように、近隣諸国との連携を重視する。中国との平和外交を精力的に進める。尖閣問題は国際裁判所に提訴する。
これらはあくまで個人の意見だ。立憲民主党内部のそうした政策論議を国民に分かるように、ネットで公開して議論してほしい。代表選での議論は観念的で、具体性を描いた。原発に依存しないという事は誰もが主張したが、どうやって脱原発を進めるかの計画を述べなかった。
結論だけで無く議論の過程を公開して貰いたい。それぞれに違う意見が、どのように民主的に議論され党の政策に集約されるのかを見たい。立憲民主党にはまともな議論が失われてしまったように見える。これでは期待した立憲民主主義では無い。
今回の選挙は自民党が良いから選ばれたわけでは無い。アベ・スガのとんでもない自民党を辞めそうだから、自民党でもう一度様子を見ようと言うことだろう。岸田政権が新しい資本主義で倫理を取り戻すのか。どのくらい分配をするのか。財政再建はどうなるのか。台湾問題にどう対処するのか。様子しだいでは、反動が来てたちまちに支持を失うはずだ。それまでに立憲民主党は出直し的再生をしなければならない。