海外永住者の増加

海外で永住権を取り、日本から離れる人が増加している。「永住者」は20年連続で増加し、10年前と比べても約14万人超増えた。地域別では北米(約27万4千人)、西欧(約9万人)、豪州・オセアニア(約7万6千人)が多い。男女比は女性が約62%と多い。 ーーー朝日新聞
一年に1万人以上が日本を出てゆくという事は、少子化以上に深刻なことではなかろうか。日本を捨ててゆく人が増えているという事だ。少ない子供が大人になって日本を去ってゆく。それほど日本が魅力ない国になったという事なのだろうか。
どういう形で日本を去るのだろうか。明治期以降の棄民政策とは違う。政府は人口減少を食い止めようと、少子化対策に本腰を入れると言っているのだ。いかに少子化対策など無意味なのかという事が現れている。人口増加を政府が望む中、日本から出ていく人が、増えているというのだ。
いよいよ移民受け入れになるのかもしれない。日本が暮らしにくい国になってきたと考えなければならないのだろうから、移民を募集しても、もう日本に来てくれる時代は終わろうとしている。この状況をもう少し考えてみたい。
想像しがたいことだ。確かに政治のひどさや、人心の荒廃はすさましいが、国民がしっかりこの国で暮らす覚悟をすれば、何とか立ち直ることだ。日本列島という水土は素晴らしい地域だと思う。この土地を生かして、自給的に暮らそうとするなら最高の場所だ。
つまり暮らして行くことの未来が暗く感じられるようになったのかもしれない。衰退してゆく過程の日本の姿なのだろう。沈んでゆく船から早く逃れた方がいいとしているのだろうか。あるい外国の方に素晴らしい金儲けの可能性があると考えるのだろうか。
様々な形で現地に根付く元日本人が増加していると言うことなのだろう。女性の方が多いいというのは、その国の人と結婚してその国で暮らし始める女性がかなり居ると言うことのように感じる。私がフランスのナンシーで暮らしていたときも、そういう日本人女性が10人くらいはナンシーにいるとのことだった。
日本人の女性は男性に競べてフランス人には人気があるという感じがする。岸恵子さんとか後藤久美子 さんが著名だ。結婚でなくとも日本人女性で、海外に一人で出て生きているという人は結構いる。ヨーロッパで一座を作り、人気者になった貞奴や花子。花子はロダンのモデルになり、ロダンの家に部屋まであった。48体もの作品を残した。ロダンの作品で、クローデル像と花子像には魂があると思う。
ノーベル賞を受賞した学者が海外の大学で研究しているというようなことはよくある。研究者で海外で活動をしている人はかなり多いはずだ。ナンシーにも数学者でナンシー大学で教えていた先生がいた。そこの数学の教室には日本人の研究者が日本から2人来ていた。
中国には日本の研究者が好待遇で行くと良く言われる。日本ではやりたい研究をやる予算が貰えない状況なのだから、無理もないと思う。お金につながる研究が奨励されている。中国では例えば、ひこばえ農法が研究されていて、その為の品種も作出されているらしい。
日本のイネ研究の状況とは大違いである。中国がイネの研究に力を入れているのは、食糧は自給すべきという、当たり前の思想があるからだ。日本のように食糧を安い国から買えばいいなどというのは、国の安全保障に対して、無責任だからだ。
食糧のなくなる前に、国から抜け出す方がマシだというのも当たり前かもしれない。様々な形で、国の運営を間違っているのだ。間違いを正すよりも自分が出て行けば済むことだと考えるようになっている気がする。変える努力をするより、諦めて日本を捨てるという選択のような気がする。
中国に行った研究者は、中国に行ってみて中国人のすばらしさを感じているはずだ。日本で宣伝されている中国人、観光客としてくるやかましい中国人とは、全く違う素晴らしい能力の中国人がいる。魅力にあふれた信頼できる中国人が沢山いる。
一度中国の庶民の間に入り暮らしてみなければそういう事は分からないはずだ。そのことは、7年間軍人として中国に行かされた父が、いつも言っていたことだ。父は徴兵されたときに民俗学の研究者の眼で中国を見ようと考えていたそうだ。父は柳田国男の弟子のままで、中国に行くと考えたそうだ。
中国語を覚えて、出来る限り中国人の中に入れる仕事をしたらしい。そして戦時中であるにもかかわらず、中国人のなかに、素晴らしい人がいることを知り、人間としての交流を心掛けたそうだ。中国人から学ぶものが沢山あったと言っていた。
その話を聞いていたので、中国へ行く機会があったので、中国の農村部で自然養鶏のことにかかわった。指導するという事で行ったのだが、大したことはできなかったが、中国人のすばらしさを痛感し、日本は忽ちに追い抜かれると確信した。あれから20年経った今その通りの結果である。
こういうやり方があると話すと、次に行けば実践しているのだ。日本の農家の人は自分流が一番だと思い込んでいて、修正が利かない。しかし、中国の農家の人が、良いという事には柔軟で、思い切って変えてゆく。そして成果が出ると実に喜んでくれる。
指導にやりがいもあるという事になる。それでこちらもますます本気になり、真剣に中国で出来るやり方を探した。中国に住んでこちらで指導してもらえないかとも言われたのだが、自分の養鶏場もあり、行けなかった。しかし、中国の貧しい農村の力になるのも、自分の役割かと考えない訳ではなかった。
中国の力になっている日本人に、中国で沢山であった。日本での研究所での仕事を止めて、中国で無農薬の果樹栽培を指導されていた。その方が、中国で本当に尊敬されている事が分かった。その研究者の方は、なんとなくその時、私を避けるような感じがあった。
日本を捨てたという気持ちがあるのかもしれなかった。日本人にどう思われるかを気にしていたのかもしれない。しかし、立派な業績を中国で残していると感銘を受けた。そうした研究者の方は今もたくさんいて、中国で本気で研究されているのだと思う。
それは中国と限らず、世界中のあちこちで、能力の高い日本人が研究や、開発に力を尽くしている。それは素晴らしいことだと思う。その意味で、日本の高い頭脳の方が出てゆくことは、良い日本を世界に知ってもらうことにもなっていて悪いことではない。問題は日本の国内の空洞化の方である。