日本が1200円で韓国が1700円

最低賃金の過去にない上昇が繰り返されている。素晴らしいことではあるが、それでも収入は物価高騰に追いつかず、目減りしているのが現状だ。何しろ国家公務員の給与が最低賃金に足りていないというのだから、日本の給与所得者はかなり深刻な状況になっていると言うことだ。
最低賃金の値上がりは、労働者の生活を下支えする一方で、人件費がかさむ中小企業にとっては大きな負担となっている。経営基盤の弱い中小企業では、人件費が高騰して労働者を雇えない「人手不足倒産」が増えている。給与が安ければ人が集まらない。労賃を上げれば、利益が出ない。
大企業の労働者であれば、円安の恩恵もあるのだろう。日本人の大半の人が大企業勤務ではないのだから、特に非正規雇用者の生活が苦しくなっている。農業者はかなり厳しい状況である。農業分野でも人手不足倒産が増えている。畜産分野では家族労働では限界がある。
と言って肉体労働の畜産の仕事では、日本人の希望は少ない。そこで外国人労働者の雇用と言うことになるが、これも安い給与ではなかなか人が集まらない状況になっている。継続したくとも辞めざる得ない状況ということが、石垣島でも聞こえてくる。しかし、畜産をやめて農業分野で出来ることはほぼない。
同時に円安が続いて飼料の高騰が起きている。これも畜産農家を追い詰めているのだが、高騰だけでなく、購入競争に勝てないので、輸入できなくなるという現実も始まっている。力のある国が、高値で購入してしまうのだ。日本の農業は非常事態と言えるような状況である。
日本政府の方針ではアジアからの労働者に来て貰い、労働者不足を補う戦略であった。全く甘い計画である。ところが、造船会社がアジアから10人新規採用する予定で居たところ、実際には5名しか来てくれなかった。その原因は5名は韓国の造船会社に引き抜かれてしまったというのだ。
日本の時給が1200円の所、韓国企業では1700円出すという。石垣の畜産農家では、1200円でも厳しいのではないだろうか。それなら縮小するほか無い。あるいは廃業と言うことになる。予測されたことではあるが、岸田政権の食糧自給実行計画があまりに空想的で空しい。
それでも5名が日本に来てくれたのは日本が良い国だからではないか。大切に働いて貰わなければならない。40%給与が違うのなら、私なら高い韓国の方で働く。多分来年にはもう来てくれる人はさらに半減するに違いない。そして遠からず、来て貰うどころか、日本人が海外に働きに出る時代が来る。もう始まっているという話もある。
東アジアの経済の状況はすでに序列的には台湾、韓国、日本なのだ、と言ってもそれぞれに問題を抱えているわけで、何時何が起こるか分らないような状況である。韓国、台湾は徴兵制度があり、臨戦態勢を続けながら、日本経済を凌駕したのだから、その力量差には驚かされる。
日本は新しい国の方角を考えなければ成らないところに来ているのだろう。その意味で、私は岸田さんにはいくらか期待をした。そのことはこのブログにも書いた。しかし、想像以上に何もできない人であった。やったのは田中派つぶしぐらいで、経済政策は目立つものはなく、棚牡丹餅を掲げて、傍観していたに過ぎない。
道徳のある資本主義を標榜したのだから、出来ないまでも何かをぶち上げるべきでは無かったのではないだろうか。少なくともカジノによる経済活性化や、不労所得による富裕層優遇は、何か道徳的に歯止めをかけるべきだったのではないか。私はそれに期待したのだが、バカだったようだ。
外国人労働者は来て欲しくても来てくれなくなる。今のところ、たくさん来てくれているベトナム人が、第二の在日差別に成りそうで不安。日本への移民奨励政策には国民の合意がない。企業が労働者不足で、行き詰まり無理強情に進めたのだ。企業から裏金を貰っている都合上、有無を言わさずやらされているのが自民党。
政府には将来の日本の構想がない。どんな国にしようとしているのか、岸田政権はまるで示したことが無い。確かにあれこれ裏金で追い詰められ、ごまかしの説明に追われて、こんな国にしたいのだというようなことが、口にすることも出来なかったのだろう。
実は岸田政権は1年前には新しい資本主義のグランドデザインと実行計画というものを出している。長いもので読み応えはあるのだが、分析は一応うなずけるのだが、ではどうするのかという実行計画の方が、今ひとつ、嫌全く新鮮さがない。つまり空論である。
何度も読んだが、優秀な官僚の作文で、実際に働く農業者の声が聞こえない。企業が対応する農業と言うことになるのか。中小企業が無視されているのと同じで、普通の農家は端から埒外の存在のようだ。これで本当に地方の中山間地の地域が消滅しないと言えるだろうか。言えないから消滅が続いている。
実行計画という以上、いつまでにどのの段階まで進めるという具体性がなければならないが、これでは文章を作ることが官僚の実行であって、それで終わり。モデル事業として、行政がこんな農業を実践してみる必要がある。日本の農業者が具体化できる計画なのか是非、経営してみてほしい。
私の考える実践計画だ。まず食糧の安全保障があげられているが、具体的に考える必要がある。当然お米が基本になる。お米は自給率が高い。ただ、コメの消費が減少している。小田原の学校給食なども、週2回しか米飯給食がなかった。今は少しは増えたのだろうか。学校給食はすべて米飯給食にすべきだ。
安全保障を考えるのであれば、そこまでやるのが具体的な実行計画である。日本人はお米中心の食に戻すべきだ。日本の気候に合わないパン用小麦の生産はしなくてもよい。もしどうしてもパン食がやりたいのであれば、コメパンである。できれば玄米パンである。
麺類の日を入れたいのであれば、ビーフンを使ったうどんやパスタである。十分できるのだから、日本人の食事を変えなければ、食の安全保障はないという覚悟で、学校給食の米飯化を進める。ただし、学校給食はすべて無償にする。こういう考え方が、実行計画である。
また官公庁の食事はすべて、米飯である。公務員や公立病院関係者はソバなど食べない。パンなどかじらない。おにぎりの外食を世界に普及する。米食の多様性を追求し、食の米飯化を国策として進める。健康な日本の伝統食であるコメ食文化を再度確立する。
これはあくまで食の安全保障の緊急事態対策である。そこまでしなければ中山間地の水田が守れなくなっているのだ。中山間地が守れない原因は水田農業が経営できないからだ。地方を再生することが政府の方針であれば、なんとしても稲作農家が経営できるようにしなければならない。
政府は水田の畑地化を進めると実行計画に書いている。それでは日本は滅びる。全く馬鹿げている。日本は瑞穂の国である。日本の環境は至る所に存在した里地里山の水田が、作り出したものなのだ。沖縄本島が水田がなくなり、どれほど寂しい景色になったことか。環境調整機能を持つ水田をどんなものと考えているのか。
こんな政府なのだから、東アジアでも遅れた国になってきたのも已む得ないことかもしれない。結局政府に期待してもむなしい。自分たちのまわりから確かなものにして行くという以外にない。のぼたん農園と農の会で頑張る以外にない。35年の間に少しは良くなったこともある。