ロシアは何故歪んでしまったか。

   



 ロシア軍がウクライナの民間人の虐殺を行ったと、キーウからロシア軍が逃げた後、世界の報道機関やウクライナ政府からの緊急報告が始まった。ロシアはそれをフェークニュースだと国家として表明している。ウクライナのロシアを陥れるために死体の演技だと主張している。

 そして大半のロシア国民はその政府の発表を信じているようだ。ロシアだけでは無い。中国も公式にフェースニュースとしている。ごまかしきれるとでも言っているのだろうか。戦争に対して偏見無くまともに想像力を働かせば真実が見えてくる。

 一体何が真実なのだろうかと、疑問に感じる人も居るかもしれない。まさかロシアという一応は国の体裁を整えた大きな国が、虐殺までするはずがない。すぐばれるような嘘をつくはずが無い。これは情報戦争に過ぎないと考える人も居るだろう。

 どうすれば実際に起きたことの真実が見えるかである。人間は常日頃から、その目を養わなければならない。そもそも、ロシアの戦争を止められるのは中国の仲介だけだと、いかにも中国に期待する見解も出した評論家と称する人も居た。

 中国は漁夫の利を得るのだから、ロシアを静止するようなことは間違っても無いとみた。そして、その通りの結果が今でている。中国がどのような価値観で動いてきたかを考えれば、即座に分かることだ。中国は自分の得がどこにあるかで動いて行く。損になるのであれば、ロシアも切り捨てる。情などみじんも無い。

 先を読むためには個々の事象にとらわれず、大きな流れを見ることである。プーチンは長い周到な準備の元に、ウクライナに侵略をした。まさかと思っていたが、今になってみれば考えた末の行動なのだ。ウクライナ周辺にロシア軍を集結したとき、アメリカはロシアがウクライナに侵攻するのは間近だと報道していた。

 その時点ではまだ世界中の大半の人と私は、まさかロシアがこの時代に戦争行為を、根拠無く始めるとまでが思わなかった。たぶん何らかの偽装をして根拠を作ると思えた。ウクライナが攻撃してきたとか。アメリカのように大量破壊兵器を製造しているとか主張をして行うと思った。

 しかし、実際には何の偽装も無いままに、ウクライナに軍事侵攻をした。現状を見ると、すべてが繋がっていることが見えてくる。ロシアが侵略戦争を始めると言うことは、今になればあの時点で分からなければならなかった。ロシア政府は、そしてロシア国民は侵略戦争を自分の正義のために行っていると大義名分を持っているつもりなのだ。この思い込みが恐ろしい。ロシアは滅ぼされると本気で思っていたのだ。北朝鮮と同じだったのだ。

 プーチンが北京オリンピックの開会式に出席して、習近平と会談した。この時に、オリンピックが終わった時点でウクライナ侵攻を始めると言うことを伝えたのだ。ロシアは習近平の支持を取り付けたからこそ、ウクライナ侵攻を開始したのだ。そう考えるほか無い。国家として参加が禁止されたロシアの大統領がオリンピックに顔をなぜ出せたのかを考えれば分かる。

 この時点で、中ロ対西欧諸国の対立軸が固まっていたのだ。日本の政治家でそのことを指摘した人は居なかったと思う。慶応のロシアを専門としている学者がテレビでロシアの侵攻は無いと断言したことが印象的だった。東大のロシア外交の学者は数日でキーウは陥落すると言っていた。日本の専門家と称する人の情報のレベルは低い。これは平和国家として非常にまずい。

 そして、ロシアは予想よりもはるかに弱かった。たちまちに陥落するだろうといわれていたし、そう思えた。ロシア軍はウクライナ軍に押し返された。その時に起きたことが、ウクライナ市民の虐殺である。崩れかかる軍隊に起きた恐怖からの残虐行為である。負け戦の撤退作戦のしんがりほど難しいものはないといわれている。

 全体の流れから考えれば、ロシア軍が虐殺行為をすることはあり得ることなのだ。そういう指令が上層部から出たとまでは言えないだろうが、崩れかけて引き上げを始めた軍隊のなかでは起きるかも知れない事と言える。戦争に敗れて退却するという時の感情はそういうことだろう。

 ここまで考えれば、ロシアがウクライナ市民を虐殺したことはフェークニュースでは無いことが分かる。中国がこの事件が世界の調査でロシアの虐殺であると決定されたときに、ロシアを支持を表明できるかである。

 それでも中国は虐殺行為に目をつぶり、ごまかし、ロシア支持を続けるはずである。それが中国の利益にかなうからだ。それが中国自身がウイグルや香港でやっていることだ。目的のためには手段を選ぶ必要が無い国なのだ。

 中国はロシアと結びつき、新しい枠組みの中心となり、覇権主義を強化するだろう。世界は悪い方向へ一歩前進したとみなければならない。見たわけではない。想像力だけで書いている。いつもそうであるが、予測が外れたほうが良いのだが外れることは無いだろう。

 では台湾併合はどうなるのか。当面は遠のいたとみている。ロシアが侵略戦争に成功すれば、勢いづいて、台湾への軍事攻撃が現実化する可能性が高まった。ところが、世界は一致団結して、ロシアへの経済制裁を強めた。しかし尖閣攻撃の可能性はむし
ろ高まったかも知れない。

 尖閣は国境紛争だからだ。しかも軍事作戦としてはそう難しいことではない。そうなる前に国境画定を中国と行うべきだ領土問題程度で、戦争になっては成らない。人が死ぬくらいならば、尖閣を中国にして貰った方がはるかに良い。

 もし中国が台湾を攻撃すれば、世界はさらに団結を強めて、中国へ経済制裁で当たることになるだろう。中国は欧米や日本がここまで大きな損をしてまでウクライナを支持するとは思えなかったはずだ。そういう感覚が中国人には無いと思われるからだ。

 世界は正義のためにそれぞれの犠牲を払う決意をした。日本も経済的な損益を被るだろうが、さすがにウクライナで行われた侵略戦争を見て見ぬ振りは出来ない。それが民主主義の良さである。日本人の大半の人がそう考えているから、日本政府もそう動くことになる。

 台湾と中国は海を挟んでいる。ウクライナをロシア軍が攻撃を仕掛けるより、はるかに困難な戦争になる。そこに住民がいるからだ。しかも、周辺諸国が中国と連携するような状況でも無い。カンボジアやミャンマーも中国と同調し、台湾攻撃を支援をすることはでききないだろう。

 今回のウクライナの戦争で分かったことは制空権が大きな問題になる。中国空軍が台湾の空爆を行うようなことは今のところ出来ない。先ずはミサイル基地に対するミサイル攻撃と言うことだろう。ミサイル攻撃が始まれば、西側諸国はウクライナで行ったように、最先端の兵器を供与することになるだろう。

 中国としては台湾へ何百万人の軍事侵攻して制圧しない限り、台湾を併合することは出来ない。海を越えてそれほどの軍事侵攻するとなると極めて困難なことになる。これは中国政府もロシアのウクライナ侵略で学んだことになる。それほど成功する可能性の高くない軍事侵攻を中国が行うとは考えられないだろう。

 ウクライナは防衛的武器だけで、キーウを守った。このことも今回の戦争から学んだことだ。すべてが敵という侵略戦争を行うと言うことは、大きな困難が伴うと言うことだ。親ロシア派がいる地域ではウクライナが苦戦している。日本も防衛的武力に限定して装備すれば良いと言うことになる。

 なまじ敵基地攻撃能力を持とうとすれば、先制攻撃を受ける危険がむしろ増す。中途半端な武力しか持てない国日本は、徹底した防衛的装備に限定するべきだ。特に海から上陸してくる軍に対してどう防衛するかを研究し準備すべきだろう。

 - Peace Cafe