太極拳 準備運動としての「すわいしょう」

   



 太極拳やゆる体操を始める準備運動として「すわいしょう」と言うものがある。これも3000年も前から中国では行われたと言う体操らしい。本当に中国人は健康体操が好きである。スワイショウは準備運動として優れている。スワイショウだけを1000回やるというような意見もあるが、スワイショウはあくまで準備運動として優れていると感じている。

 スワイショウは中国語で「?手」と書く。手を投げ出すという意味らしい。?(スワイ、捨てる)、手。私は自己流である。スワイショウは10年ぐらいはやっている。ゆる体操を習っていた頃からではないだろうか。ゆる体操も動きに加えている。

 毎日やりながら、自分にとって具合が良いという所を探っている。人に良いからと言って、自分に必ず良いなどと言うことはないと考えている。スワイショウというと気功術ということで、様々な尾ひれを語る人がいるが、あくまで体操だ。それ以上の意味はいらない。

 世間では体操の指導を生計にしている人がいる。そういう人の説明が広がっているのだが、そうした人の説明はどうしても何か目に見えないものを加える傾向がある。そして一般論を語る。体操は一般論より、自分個人のものが必要なのだ。腰が悪い人と、首に弱点がある人では体操は違う。自分を知らなければ体操は危うくなる。だから、体操指導者の一般論は無難なものになり、何かありげなものになる。

 太極拳を行うとき大切なことは気持ちの入れ方である。気持ちを太極拳の中に集中してゆくためには、どんな順番でやると良いのかがある。導入部としてスワイショウをやるのはとても良い。

 スワイショウのやり方は腕を身体の周りで投げ出すように振ることを繰り返す。これを50回やる。腕振り体操と言うことで、前後にだけ振り子のように動かすスワイショウ体操もある。私のやり方は身体を中心にして、腕を振り回して、身体の下半身をひねる運動が良いようだ。50回ぐらい繰り返すと自然、太極拳の気持ちに入る準備ができる。

 ただ腕を振り回せばいいようなものであるが、できればと言うことで、工夫もしている。3つある。ひとつは腕を遠くに投げ出すように回すと言うことである。身体からできるだけ遠くに手が通るようにする。すると遠心力が強くなる。腕が回される遠心力で身体のひねりも大きくなる。

 二つは膝を落とすこと。身体はまっすぐに立てて前屈みにならない。背筋を伸ばして膝を落とす。背骨が棒のように立った感覚。最初は別に立ち膝で良い。徐々に膝を下げてみる。重心を下げると腿に負担が強くなる。自分にとって適度な重心の下げ方で行う。

 三つめは腰を回すのではなく、もう少し下の下半身を回す。腰でだけ回すと腰を痛めそうである。足首、膝、股関節、股の付け根で身体を回すようにする。充分回せるようになったら、顔も回すようにする。この練習は片足で身体を回してみると腰より下で回す感覚がつかめる。

 私の場合はすべてを目をつむったまま行う。スワイショウの目的は太極拳に向けて、気持ちを入れるためである。目を空いている方がやりやすいが、慣れれば閉じていても大丈夫である。それで50回を数えながら行う。往復で一回である。

 何故これで気持ちが集中して行けるかというと、頭を振るからだと思っている。頭がぐるぐる目が回るような状態になり、ある種の酩酊が起こる。この陶酔して行く状態が集中する気持ちにつながる。アフリカではぐるぐる回り続ける宗教行事がある。

 スワイショウが太極拳八段錦を行う準備体操になる。八段錦もそのまま目を閉じて行う。最後のつま先立ちの8段目は目を閉じたまま行うのは難しいが、難しいのもいいかと思っている。これを目をつぶって行うと、その日の身体の状態が分かる。

 8段錦が終われば、24式に入るが、これは目を開けて行う。覚えていないから、見ていないとできないからである。そのうち見ないでもできるようになれば、目をつぶってやろうかとも思う。果たして覚えられるだろうか。そこまで根気よくやれるかどうかである。子供の頃から覚えが何しろ悪いのである。

 覚えの悪い70歳の手習いである。新しいことを何か学んでいると言うことはとてもいい。人間はいつでも何にもできない初心者である。歳をとったら新しいことの努力すると言うことが必要である。年季を積んだできることだけやって、先生などと言われているというのは衰退そのものである。

 24式は覚えていないので、まだまだ動きにとらわれている。無意識で動かなければ、気持ちどころではない。そして24式が終わるとしばらく立禅を行う。頭の中を清流で洗い流すような感じがする。こちらはの方は55年と長い。

 24式が終わり立禅も終わると、今度は肝機能を改善する足上げ体操である。NHKテレビを見て始めた。30回を三本。一日3回である。その1回目を行う。3回を達成できた日は酒を飲んでもいいことにしている。達成できないのに飲んでしまうこともある。達成したのに飲まない日もあるのでオアイコデある。

 そして最後に整理体操としてのスワイショウである。今度はゆっくりと10回ほど行い終わる。気持ちを戻す体操である。

 一連の体操を終わるとおおよそ40分ぐらいである。朝課のつもりである。このくらい気持ちを集中させると一日が違う。絵が良くなる、かもしれない。この欲が良くないか。石垣にいるときはやるので1年近くになるのだろう。
  最後に書き忘れていたことがある。もし、独房のようなところにいるとしても、24式を除いて、スワイショウ、八段錦、立禅、腿上げ体操、スワイショウと、を日に3回行えば大丈夫である。心身の健康を維持できる。




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