豚コレラはついに埼玉県の養豚場にまで広がった

   

 豚コレラが、埼玉県まで広がってきた。一年で岐阜から埼玉まで感染はひろがるようだ。野生動物のイノシシがこの病気を広げていることはまちがいがない。イノシシの感染への対応を考えない限り、こんごのワクチン接種の判断もできない。ところが、農水省のホームページに掲載された、対策本部の発表ではイノシシへの対応は出ていない。打つ手なしと言うことなのか。

 2018年9月に岐阜県で最初に養豚場での豚コレラが確認された。同時期にイノシシの豚コレラを確認後、今までに2150頭を調査して徐々に感染が岐阜県全体に広がっていることが確認されている。長野県では検査した イノシシ318 頭のうち、109 頭で豚コレラ陽性が確認されている。いったんイノシシに感染が始まれば、感染の拡大は防ぎようが無い。

 関東にまで広がるには一年かかったと言うことだろう。今後この感染の拡大は日本全体に広がると見なければならない。養豚をしている人たちにしてみれば、極めて深刻な状況である。当初、イノシシにワクチンの入った餌を食べさせれば拡大が防げるとした判断がいかに甘いものだったかが分かるであろう。

 イノシシの生態の把握ができていないのだ。イノシシは移動範囲が狭いから他の群れには感染が拡大しないという見解でイノシシにワクチン餌を与えたのだ。残念なことにイノシシに対する基礎研究が不足している。ワクチン抗体のあるイノシシは自然界に対してどういう影響があるのだろうか。
 鳥インフルエンザの時も、渡り鳥に対する基礎研究がいかに不足しているかが痛感された。韓国から日本に渡る鳥に関しての調査は無いに等しかった。たしか、福岡で感染したカササギが見つかり、カササギが飛んでくることが確認された。今回の豚コレラでは、人が感染を広げていると言うことばかりに気をとられていた。これがイノシシへの対応を遅らせたのでは無いか。そして現在は打つ手が無くなった。
 放牧養豚をしている知り合いのところも、感染地域になった。どれほどつらいだろうか。自然の状態で豚を飼っていれば、イノシシと接触が起こることは普通のことになる。豚にとって良い飼育をしている養豚場ほど、つらい結果になる。それは、自然養鶏と鳥インフルエンザも同じ状況に陥った。あのときのつらさが、養鶏を止める日を決めた。

 緊急的問題になっているのが、豚にワクチンを使うかどうかである。使うと日本が清浄国で無くなり、豚肉の輸出ができなくなる。野生のイノシシに感染が広がっている状況で、清浄国などと主張すること自体がすでに馬鹿げているのだ。

 豚にワクチンを打てば、豚への感染は防げる可能性は高まる。しかし、イノシシへの感染が拡大した以上、かなり長期にわたりイノシシ間の感染は続くであろう。どういう拡大をして行くか。また野生イノシシの頭数がどのくらい減少するか。この機会にイノシシの生態調査を徹底してやるべきだろう。

 豚コレラは感染イノシシの致死率は高いらしい。それであるならば、案外に四,五年の時間をかければ治まるかもしれない。それでも何十年の間、感染は残るだろう。そのときのイノシシは豚コレラに耐病性を獲得して、また増加すると言うことになるのかもしれない。野生のイノシシが激減してくれれば、ありがたいと言う側面もある。いずれこの経過観察は、貴重な資料になる。
 狼は狂犬病でいなくなったという説があるが、本当なのかどうかも今回のイノシシで分かるのでは無いだろうか。イノシシがいなくなることはなないはずである。豚コレラに免疫力のある、イノシシが登場してくるはずである。野生動物の生き残るものは何万年の時間の中でそうした力のあるものが生き残ってきたものだと考えられる。イノシシは増えすぎた。これがイノシシの感染拡大につながっている。

 家畜の病気には人間にも感染する恐ろしいものがある。家畜を飼うと言うことはそうした深刻なものなのだ。アフリカ豚コレラは人には感染しないが、ワクチンがないので日本で感染が広がれば、対応方法が無くなる。
 中国ではアフリカ豚コレラが3月に発見されて、忽ちに全土に感染が広がり、中国ではほぼ養豚業自体が壊滅の危機を迎えている。中国の畜産の方法は、極めて危険だと考えていた通りの結果になっている。大規模畜産の限界なのだ。どれほど外界と遮断したところで、鼬ごっこである。
 中国は世界の半分の豚肉を生産している。豚コレラは半生肉ぐらいであれば、数週間菌が生き残る。そして感染を広げる。またダニが感染源になるというから、相当厳しい防疫体制を取らなければならない。日本に豚コレラが入ったのは旅行客が持ち込んだ、肉が疑われている。例えば、骨付き肉を持ち込みその調理カスが、ごみとなりイノシシが食べる。

 こうした不安を畜産は抱えている。それもあって、私は65歳で止めることを決めていた。もしもの事を考えると、年寄りには無理な仕事だと思う。自分の都合で、もしもの事態を引き起こしたら、周辺の養鶏家に申し訳が立たない。
 畜産は小さく分散して行うべきだ。そして肉はそんなに大量に食べるものではない。仏教徒の肉は鶏肉までと考えた選択は間違っていない。現代の飽食の食文化が間違っている。

 よりよい畜産を目指すと言うことが、自然界との接触が増えると言うことになる。自然界に存在する病気がいつ家畜に伝染するか分からない危険度が高い。自然と遮断して消毒を徹底すれば、耐性菌や新しい病原菌の出現に繋がる。良い畜産が食べる人のためだと考えて自然養鶏を実践していたが、余りに手間暇がかかり大変なので、笹村方式は次の社会にしか、受け入れられないようだ。

 一方で自然との遮断度が高い、大規模畜産の家畜の飼い方が、とんでもない形になっている。耐性菌などもこうした大規模畜産から出現していると見られる。病気を消毒で抑えるという形は、病原菌との競争になる。だにで感染するアフリカ豚コレラを防ぐためにはどれだけの消毒が必要になるのだろうか。より強い化学薬品で消毒をすれば、病原菌の変異の可能性が高まる。

 今起きている、豚コレラはもっと怖い畜産由来の病気が起こる事の予兆である。こうした家畜の飼育がされている以上、パンディミックが起こると考えて対応策をいまから準備する必要がある。まず日本では外部からの流入を徹底的に阻止する態勢を作ることが、当面の対策になる。

 水際作戦である。狂犬病の予防注射など止めて、その予算と人員で、防疫体制を水際に集中させる。そうすれば、狂犬病予防にもなるし、また他の病気の流入も防げる。幸いなことに家畜に感染する病気は鳥以外では、飼料や家畜の入国審査に手間暇をかければ、阻止できるものが多いはずだ。

 セアカゴケグモは1995年に日本でも見つかった。その後水際で押さえ込めるかと見られたが、結局の所、日本全国で見つかる状態になってしまった。幸いなことに当初恐れられたほど怖いクモでは無かったので、実被害はない。

 どうやって日本への侵入を防ぐのか。輸入が増える中、検疫態勢が手薄らしい。ここにはかなりの費用と人員をかけてもいいのでは無いだろうか。検疫費用として輸入品に上乗せすればいい。これは日本の特殊事情と言えるのでは無いだろうか。輸入品がその分高くなるが、それは仕方の無いことである。国内のまともな畜産製品の奨励にはなる。

 人員は狂犬病予防注射を止めればいいのではないだろうか。その分余る獣医師によって水際で徹底して防疫する。薬を使う病気への対応は必ず大きな病気を呼ぶことになる。今考えることはどうやって日本への病気の流入を防ぐかである。
 

 - 自然養鶏