川崎連続殺傷事件から

   

川崎で孤独に引きこもりがちだった51歳の男が、自分の自殺の道連れに20人もの連続殺傷事件を起こした。一人で死ね。という声がありいろいろ言われている。一人で死んだところで、疎外社会から起きている引きこもり問題の解決にはならない。素朴に考えれば原因は競争社会にある。資本主義社会の競争の激化が、疎外社会を深刻化させている。今後引きこもり問題はより深刻になる。中年引きこもりの数は61万人と推定されるそうだ。政府は緊急対策をするというが、どんな対応を考えているのだろうかと思えば、相談できる場所を充実させるという事だ。そんなやり方はごまかしに過ぎない。人間らしく生きるという事と競争という事を考えてみる必要がある。原因を解決しないで、対処の方法だけを考えたところで解決するはずがない。川崎の事件を受けて、どうも農水の事務次官だった人が、引きこもりの息子を殺す事件が起きた。自分の息子が自分に危害を加える。さらに小学校の子供を殺してしまうくらいなら、自分が息子を殺すほかないと思い詰めた。
あってはならないことだが、気持ちは分からないではない。小学校の運動会の音が聞こえてきて、ぶっ殺してやると叫んだらしいから、そんな気になっても不思議なはない。親も子も辛かったことだろう。親が子供をいじめてしまう病のような状態も、競争社会が膿みだしている病だと思われる。社会の中に無理に順応しているように見せかけている疎外。わが子をいじめてしまう心の病と。生涯引きこもってしまう、もったいない人生。社会がさらにおかしくなる兆候と考えるべきだろう。自分を持て余し、他人とのかかわり方を失う人間の増加。自分にわずかでも迷惑があると考えれば、排除する。これが競争社会の実際であろう。そうした自分のことしか見えない人間が競争に勝利する現実。そんな利己主義者が競争に勝ち抜く人間の主流になっている。そうでない有能な人たちもたくさんいることも知ってはいるが。身勝手な生き方をしても、競争をしても勝利すれば評価される社会はおかしい。たちの悪い優秀な人のことを考えるだけでも気持ちが萎えてしまう。
資本主義の競争はこれからますます深刻化してゆくだろう。米中経済戦争は予想した通り、深刻化するばかりである。日本がアメリカベッタリから降りて、中国との関係を見直すべきだ。それが出来ないのは、軍事同盟というよりも、企業の経済的利益に見える。アメリカとの関係の見直しが出来ないで、このまま行けば日本は米中経済戦争に翻弄されることにななるだろう。もし安倍氏がトランプ氏と友人であるなら、「トランプさん自分のことばかりではだめだよ。」と言ってあげなければならない。トランプ氏は下品な商売人のやり方だ。松下幸之助氏は商売の神様と言われたが、お風呂の水をかき寄せても深くはならないと言ったそうだ。相手も潤ってこそ自分も潤うという、商売の中の倫理のようなものを主張した。正しく世界を見れば、中国が豊かになることが、アメリカを豊かにすることである。相手を食い物にすることしか考えない、ハイエナ経済では結局は自分も滅ぶ。ハイエナ経済は疎外社会を産むだけである。普通の家庭が、銃器で武装しなければ安心できないような社会を日本も目指している。
残念ながら、社会全体の方角はより悪い方に進むとしか思えない。若い人が安倍支持層に多いいという事は、競争を良しとしている人が多数派という事なのだろう。自分が勝利できると考えているのだろう。せめて、競争の勝利者のおこぼれにあずかろうというのかもしれない。これからどう生きてゆくかという若い人が、自分のことで精一杯にならざる得ない感触なのだろう。一方に、心優しい若い人たちが沢山いる。私たちの時代とはかなり違う上質な人間である。この心優しい上質さは一歩間違うと、押しつぶされかねない弱さを感じる。押しつぶされる前に、同類の人間を探すべきだ。一人で山の中で自給生活を始めるのも道だが、社会の中で自給生活を見つけることではなかろうか。そうした志を同じくする少数の人間と、どう連携をとるかだと思う。トランプ氏やアベ氏とかかわらないでも生きて行ける。競争ではなく、助け合いながら生きる場を作り出すべきだ。61万人の中年引きこもりを生み出した日本社会の未来を見つめなければならない。

 - Peace Cafe