外国人が働く農業
農業分野で不法就労する外国人が急増している。法務省によると、二〇一五年に退去強制手続きを執った不法就労者のうち、農業従事者は千七百四十四人で三年前の約三倍に達した。全体の21・9%を占め、業種別で最多となった。
日本の農業は外国人労働者によって行われる時代がそこまで来ている。この1744人という数が氷山の一角であることは想像できる。日本農業者の平均年齢が70歳を超えているのが現状である。まともな農業経営が行われている場合、中心になって働いていると考える方がおかしい。70歳を超えた農業経営者が、雇用労働力を頼って農業を行っているはずだ。しかし、今の日本人で肉体労働を望む人は少ない。労働力のミスマッチとか言われるが、肉体労働を嫌う傾向は何処の国でも起きていることだ。仕事が無くて最後に肉体労働を選択する。身体と心が肉体労働に耐えられない人間が増加している。今農業現場にいる若い人たちは、農業を志す頼れる少数派である。工事現場の人手不足も、外国人の労働力が補っている。農業でも、漁業でも同じ状況が想像できる。
都市銀行が農業に参入した。政府の意図が働いている。農協に風穴を開ける意図だろう。農業就労者の減少。企業農業を政府は導入する。その時には、外国人労働者が想定される。正規に外国人労働力を日本も受け入れる時代は近い。都合のよい労働力として外国人を受け入れる前提として、日本の社会が受け入れ可能になるのかどうか疑問がある。自分たちに役立つ部分としては外国人を受け入れたいが、外国人が増加しては不安だというジレンマ。社会の成り立ちの根本を議論することなく、考えもなく、ただ現実の労働力不足への対応で、政策が変わってゆく。根本とは日本の食糧をどうしたらいいかである。食糧輸入に頼るのか。それならどの程度の割合まで輸入が良いのか。日本の中山間地の農地が放棄されてゆくが、放棄される農地をこのまま放棄していって良いのか。地方が消滅してゆくことに繋がらないのか。正直、日本の国土維持は国境の島所の状況ではない。
日本に人の住まない地域が広がっている。食糧自給率は一向に上がらない。そして外国人労働力である。外国人労働では食糧の自給とは言えない。日本という国家が、国家として存立してゆく為には、日本人が働いて、自分たちの食べるものを確保するという姿が健全なものだ。畑で働いてみてわかるのは、昔の人の働き方である。ゆっくり働いていなかったはずだ。明治以降富国強兵で、農業現場はまるで強制労働のような厳しい労働環境になった。江戸時代を飢餓の時代のように明治政府は流布したが、それは明治政府の帝国主義政策をごまかすための宣伝である。江戸時代の働き方はもう少しのんびりしていたはずだ。のんびり働いて生きていけるのでなければ、農業をやる人などいなくなる。農業の楽しさは働きすぎる今の農業環境では、見えてこない。サラリーマンと同等に子供を育てようとしたら、やたら自分の身体を酷使して働く以外に道は見えない。これでは若い日本人が農業に入らないのは当たり前すぎる。
農業地域の資産価値はほとんど失われた。美田を子孫に残すために、農地を守るという思想もほぼ崩壊した。このまま行けば日本がどういう状態になるかは、地方で農業をしている人は気づいていると思う。日本全体をどうするかを、世界経済とは切り離して考えてみなければならない時だ。日本が世界企業の価値観に押されて、その活躍がなければ日本は衰退するということで、日本の地方社会は軽視されている。たぶんその日本出身の世界企業は、自分たちの利益の為には日本を見捨てることも辞さないだろう。それがタックスヘブンを行う大企業の姿としてすでに表れ始めている。農業を日本人が継続できるような、状態を作る以外にない。農業を出来る日本人の人間作りである。食糧を日本の国土で、日本人が一定量生産できるという状態を作り出さなくてはならない。そのための具体的政策はまた別書く。