合成甘味料

   

砂糖中毒というものはない。ないのだけれど砂糖の甘さに依存してしまうという事はある。甘さは味覚の王で強力な吸引力がある。それは甘いという味の中に、幸せを感じる何かが備わっているからではないだろうか。どんな食べ物でも偏って食べることが良くない。肉ばかり食べていれば身体を壊すだろう。お米ばかり食べるというのも、良くない。食べ物で大切なことはまんべんなく食べる事だと思っている。菜食主義だから肉は食べないというのも、砂糖を敵視する事に近い考えだろう。どちらも食べ物としてあまりに美味しいから制限が必要になる。現代はいくらでも砂糖を食べれる。これは食糧が工業生産とかみ合ったからだ。さらにさまざまな甘味料が登場し、化学合成で甘さというものが作られ、カロリーがなく甘いというものが登場している。昔は糖尿病患者が使う甘味料のようなものだったが、今はあらゆる食品の添加物に登場している。

合成甘味料である。サッカリンというものが砂糖不足の戦後出回ったが、いまは米食品医薬品局(FDA)が認可している人工甘味料は、アセスルファムK(acesulfame-K)、アスパルテーム(aspartame)、アドヴァンテーム(advantame)、サッカリン(saccharin)、スクラロース(sucralose)、ステビア(stevia)の計6種。飲料水の表示には、アスパルテームが多いい。サッカリンも禁止されたこともあるし、また復活した。いずれも多くの人が体にいいはずはないと思いながらも、砂糖のカロリーの高さを思い、ステビアなら植物由来だしなどと考えて、味はともかくノンカロリーの方を選択するのだと思う。甘さに対しては混乱も不安もある。砂糖業界系の研究では合成甘味料の方が肥満に繋がるという科学データーが出される事になり、合成甘味料系の研究では発がん性もないし、肥満の可能性は砂糖よりはるかに少ないという事になる。そして甘さに憧れる者は、中毒に陥るこらえ性のない人間とされ、混乱することになる。

では、現実的にどう対応すべきかという事になるが、何でも偏りが良くないという事に戻る。ダイエットコーラーを毎日2リットル飲み続けたら、良くないに決まっている。たまに、ペプシ0を350cc飲んでも体に害はない。毎日、清涼飲料水を飲むという習慣そのものが、問題であろう。それは食生活全体に影響がある。味覚を壊してゆく。美味しいという感覚は作られるもので、偏食によって美味しいがゆがんでゆく。食べ物を自給して食べていれば、そのものの味を深く味わえるようになる。然し、工業製品と言える食品を食べ続けていると、食品添加物の味においしいが惹きつけられてゆく。味の素を漬物に必ずかける人を見たことがある。徐々に半端じゃない量になった。おいしいがより濃厚なものに変わってゆく。自給であればグルタミンがおいしいであったとしても、それだけを山ほど食べるようなことは不可能だ。しかし、工業生産可能な食品は、どれほどの偏食も可能にする。そして味覚を崩壊させ、偏食をさらに加速させる悪循環を導く。

合成甘味料が悪という訳でもない。砂糖が悪い訳でもない。ハチミツだって、ネープルシロップだって、甘さというものが悪い訳ではない。甘さというものは自給生活では極めて貴重なもので、それを食べた時の幸せ感は暮らし全体を反映していたのだ。その為に、砂糖が廉価に手に入るようになった時に、大量に使う食生活に動いた。そして、一時の幸せを手に入れたのだ。それ自体は決して悪いことではない。江戸時代の自給生活においては、甘さを手に入れるという事は困難なことだった。干し柿を甘味料にした。麦芽糖や甘酒のような発酵技術から甘さを得た。わずかな甘さを味わうという食文化である。わずかな甘さの中に幸せ感が満ちていた。その記憶が甘いものを食べることで、ドーパミンのようなホルモンが出るようになるのかもしれない。

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